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諸外国におけるFintech推進の取り組み

~“オタクが地球を我が物とするだろう?”-テクノロジーが重視される時代の政府とスタートアップの関わり方~

2015年9月16日(水曜日)

今回は、諸外国におけるFintech推進に向けた取り組みについてご紹介したいと思います。Fintechを推進する主体が、スタートアップ企業へと移り変わったことにより、米国などでは、民間の事業者やベンチャーキャピタリストなどが中心となってこれらスタートアップ企業の育成を支援する取り組みが活発化しています。一方、米国以外の国々を見た場合、Fintechの潮流をうまく捉え、自国における新たな産業発展に結び付けようとする動きが見て取れます。本コラムでは、こうした動きが特に顕著なイギリス、シンガポールの事例をご紹介します。

“Global Fintech Capital”を目指すイギリス

現状、Fintechに対する支援を積極的に推進している国として真っ先に名前が挙がるのがイギリスです。内閣総理大臣であるデビッド・キャメロンが、本年7月の東南アジア歴訪時にFintechに関する取り組みについて触れるなど、まさに国を挙げた取り組みとして推進していることがうかがえます。これに遡ることちょうど1年前の2014年8月には、財務大臣であるジョージ・オズボーンが、イギリスを今後“Global Fintech Capital”として発展させることを宣言しており、こちらの声明も世界的に注目を集めました。

イギリス政府におけるFintech推進の取り組みとして特筆すべきものに、金融行為監督庁(FCA)によるProject Innovateが挙げられます。同プロジェクトでは、イギリス国内において今後、イノベーティブな金融サービスを推進していくにあたり、その推進を妨げるような規制等を調整するとともに、個々のFintechスタートアップが新たなサービスを開始するにあたり、どのような法規制に抵触する可能性があるのか事前に確認する機能を有しています。例えば、現在大いに注目を集めているロボ・アドバイザリー分野における規制に関していち早く調査することを表明するなど、これからもイノベーション推進をサポートするという姿勢を鮮明にしています。

この他、Project Innovate内のFintechスタートアップ向けプログラムとして、Innovation Hubと呼ばれるプログラムが存在します。同プログラムでは、新たなサービスアイデアを持つスタートアップからの申請により、そのサービスがどのような規制に抵触する恐れがあるのかといった観点から調査し、スタートアップ企業に対して個別にアドバイスを行っています。このほか、Fintechスタートアップに向けて現行の規制や今後課題となる点をワークショップ等で広報するなど、「対話」を重視した取り組みとなっていることが特徴です。

このような金融当局の動きに加えて、イギリス政府内ではこの他にもFintechスタートアップを支援する取り組みが同時進行しています。本年7月にはFintech分野における首相直属のスペシャルアドバイザーとしてアメリカ出身のベンチャーキャピタリストを任命し、イギリスの国際的な競争力についてのベンチマークを行うとともにFintech分野における競争力推進と新たな雇用創出に向けた取り組みを推進していくとしています。また、オーストラリアの有力Fintechスタートアップ10社を9月にロンドンに招待することも計画され、これら有力スタートアップが国内に定着することを目指しています。イギリス政府では、世界の有力Fintechスタートアップ招致にもいち早く乗り出しており、名実ともにGlobal Fintech Capitalとなることを目指しています。

“The Geek Shall Inherit the Earth”(オタクが地球を我が物とするだろう)- テクノロジー重視姿勢を鮮明にするシンガポール ―

続いてご紹介するシンガポールでは、金融管理局(MAS)が中心となり、Fintech推進に向けた取り組みが展開されています。MASでは本年7月、Fintechに関する専門組織であるFintech&Innovation Group(FTIG)が設立され、そのトップには、Citibankにおいて12年にわたりテクノロジーやイノベーション部門に在籍した担当者が就任しています。FTIGでは、規制動向に関する調整に加えて、金融サービスにおけるテクノロジー活用に焦点を当てているのが特徴です。

こうしたテクノロジー重視の姿勢は、MASのトップによる発言からも見てとれます。本年6月にシンガポールにおいて開催されたTechnology Law Conferenceと呼ばれるテクノロジー関連法を中心としたカンファレンスにおいて、MASのManaging Directorを務めるMr. Ravi Menonは、“The Geek Shall Inherit the Earth”(オタクが地球を我が物とするだろう)というシリコンバレーにおいて有名となったフレーズを引用し、シンガポール政府として金融サービスにおけるテクノロジーの活用を今後促進していくことを表明しました。

こうしたテクノロジー活用を推進する上でMASが重視しているのが、“Smart Regulation”と呼ばれる概念です。これは、金融機関が新たなサービスを実施するにあたり、自社において投資対効果や導入後のリスク査定といったデューデリジェンスがしっかりと行われていることが証明された場合、MASの承認を必要とせずに新たなサービスを実施することが許可されるものです。また、“Sandbox”と呼ばれる制限された環境下においてサービスのトライアルを行う方法も今後積極的に推進していくとしています。どちらも試行錯誤がつきものの、新たなテクノロジーを開発・適用する上で必要な考え・プロセスであり、MASは規制当局としてだけでなく、テクノロジー開発・活用を積極的にサポートする姿勢を明確にしています。

Fintech推進競争に突入する世界各国

今回ご紹介したイギリス、シンガポールは、これまでグローバルな金融ハブとして多くの資本を集め、雇用を生み出してきた国々です。これらの国々がFintechを積極的に推進する背景には、従来の金融ビジネスの存在感が低下し、自国の存在感も相対的に低下するのではという危機感があると考えられます。現在、Fintechの推進をサポートする国々には、ルクセンブルクやアイルランド、そして韓国といった金融ハブとしての政策を推進してきた国々が挙げられます。ルクセンブルクなどは、イギリスに対抗してユーロ圏でのFintech Capitalとなることを目指すとしています。このように多くの国々が規制緩和や財政的な支援により、イノベーティブな金融サービスが生まれることを目指しています。このような環境整備により、Fintechスタートアップが定着し、多くの試行錯誤が生まれ、遂にはイノベーションが生まれるのでしょう。現在、金融庁を中心にFintechに対する取り組み方が議論されている日本にも、こうした環境整備は多くの示唆を与えるものと考えます。

(シニアコンサルタント 松原義明)

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