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Fintech(フィンテック)イベント Finovate Spring 2015参加報告(その1)

~進化を続ける個人向け金融サービスの現在地点~

2015年6月10日(水曜日)

富士通総研では、毎年5月に開かれるFintechに関する世界最大級のイベントであるFinovateに2012年より継続して参加しています。毎年5月にサンノゼで開かれるFinovate Springは、シリコンバレーで起業した多くのスタートアップが自社のサービスを紹介する場として機能していることもあり、これらスタートアップのサービスを確認するため、毎年多くの参加者が世界中から集まります。昨今、日本においてもFintechと呼ばれるキーワードが多くのメディアを賑わせている影響もあり、今回のFinovateでは、会場で多くの日本からの参加者をお見かけすることとなり、同イベントに対する日本からの注目度の高さがうかがえます。本コラムでは、これから数回に分けて今回のFinovateで注目を集めたスタートアップのサービスについてご紹介いたします。

依然として注目度の高い個人顧客向け金融サービス

Finovateでは、決済サービスをはじめとして融資や預金といった様々な分野のスタートアップ企業が登壇し、そのサービスの対象も個人・法人・金融機関向けと多岐にわたります。中でも以前から注目を集めてきた分野の1つに個人顧客における金融行動の改善を促すサービスが挙げられます。同分野は、Webやモバイルチャネルを中心に顧客向けサービスの使い勝手やそのデザインを向上させるとともに、PFM(Personal Financial Management:個人財政管理)と呼ばれるサービスを提供することで、個人単位で複数の口座にまたがる資産の管理や日々の収支を確認し、今後の財政状況を予測できる特徴があります。

さらに進んだ動きとして、Neobankと呼ばれる新たな個人向け金融サービスが注目を集めています。Neobankとは、従来の銀行サービスと異なり、入出金や送金といったサービスが手数料無料で利用でき、かつ利用者の金融行動を改善させることを目指した新たな銀行サービスの形態を指します。Neobankはモバイルチャネルを中心にサービスが提供されることもあり、現在では若年層を中心に一定の支持を得ています。

このように個人顧客向けの金融サービスでは、常に新たなサービスが誕生することで活況を呈しています。今回はこうした個人顧客向けに特化した金融サービスについてご紹介いたします。

個人の金融行動を予測するPFMサービスの登場

PFMサービスでは、同分野のパイオニアYodlee社が発表した新サービス “Sense”が注目を集めていました。Senseは、同社が以前から提供してきたPFMサービスをさらに発展させ、顧客の取引状況から将来のキャッシュフローを予測する機能を備えています。Senseでは、登録された個人の口座情報からそのトランザクションの傾向を分析し、例えば、近いうちに公共料金の支払いが予想されるにもかかわらず、口座に十分な残高がない場合は、利用者に対して残高不足である通知を行います。利用者は通知を確認すると、スマートフォンアプリを起動し、ワンタッチで予め登録している貯蓄口座から決済用口座に必要な金額を振り替えることができます。Yodlee社の新サービスでは、口座情報の集約による利用者の行動捕捉から、より適切な金融行動を促す機能を搭載するなど新たな価値提供を行っています。

図1
【図1】 Yodlee社Senseのサービス画面 (筆者撮影写真より)

PFMサービスの分野ではこのほか、利用者の社会的つながりと金融行動を一体的に管理するサービスが誕生しています。NAMUが提供するPFMサービスでは、口座情報と利用者のアドレス帳といった交友関係に関する情報を融合することで友人や家族など人単位での金銭管理が行えます。例えば、過去1か月間の自身の配偶者や恋人に関する出費を確認したい場合、その配偶者や恋人の名前で検索を行うと関連する費目とその支出額の合計が一覧で表示されます。このほか、イベントごとに良く利用するお店といった単位でその費用が管理できるなど、主に利用者の行動に合わせて金銭管理が行えるのです。

図2
【図2】 NAMUのサービス画面 (筆者撮影写真より)

メールアドレスを活用した口座情報と取引情報の連携

PFMサービスでは、利用者の銀行口座情報を集約することで家計の管理を行いますが、これら口座情報とメールアドレスなどの外部情報を組み合わせることで利用者の口座管理をより高度化するサービスを提供するスタートアップも登場しています。Shoeboxedでは、利用者のGmailを活用し、添付された様々な支払いの領収書データと口座情報を連携させるサービスを提供します。また、メールによる連携機能に加えて、紙の領収書をスマートフォンのカメラで撮影することで口座上の関連する支出項目に連携させることができます。この際、例えば、領収書の支払額と口座上の引落額が異なる場合、不正請求の疑いがあるとして自動的にアラートがあがります。(米国では、クレジットカードの不正請求がよく発生するといわれています。)

このほか、Slice Technologiesでも同様にメールに添付されている領収書データを口座情報と連携させ、その購入内容をモバイルバンキング上で商品写真とともに確認できるサービスを発表しています。ECサイトで物品を購入する利用者は着実に拡大しており、その際の領収書はメールのみというケースも多々あるのではないでしょうか。両社のソリューションでは、こうしたメールアドレスと口座情報を連携させることで利用者の口座管理を高度化する方法を採用しており、一見、シンプルな方法でその利便性を向上させています。

顧客の銀行体験を根底から変えることを目指したNeobankサービス

冒頭で概要をご紹介したNeobankについては今回、2社がそのサービスを発表しています。Neobankサービスの大半は、自社で銀行免許を取得しない代わりに既存の銀行とパートナー契約を交わし、契約した銀行に代わって利用者にとって使いやすいモバイルサービスを提供しています。利用者はNeobankのサービスを利用するものの、その預金はパートナー銀行に預けられます。パートナー銀行は、Neobank利用者から調達した預金を運用に回し、その運用益をNeobankと分け合います。

今回のFinovateでは、こうしたNeobankサービスのパイオニアであるMovenが登壇しました。同社の創業者であるBrett King氏が自社のサービスを紹介しており、その注目度の高さは群を抜いていました。Movenでは、基本的なサービスが無料で提供されるほか、付属のデビットカードで決済を行うと、その支払履歴がスマートフォンに通知され、自動的に日常の金銭管理が行えます。この時、決済した費目が自動的に分類され、支出の多い項目については画面の色がオレンジや赤色に変わって警告を発します。このようにMovenでは、利用者が直感的に財政状況を把握し、その金融行動が改善されることを目指します。Movenのピッチでは、“Financial Health”と呼ばれるキーワードが登場します。これは、利用者の財政状態をより健全なものへと遷移させることを指しており、Neobankを利用するメリットとして多くの若年層に訴求しているものです。

図3
【図3】Movenのサービス画面(筆者撮影写真より)

Neobankには、前述のデジタル世代と呼ばれる若年層に加えてUnbanked/Underbankedと呼ばれる通常の金融サービスにアクセスできない人々を対象としたものも存在します。今回のFinovateに登場したMoney Amigoは、こうした階層の人々を対象に金融サービスを提供することを目的としており、特にスペイン語圏からの移民にとって使いやすいよう、スペイン語でのサービス提供に力を入れています。Money Amigoでは、Moven同様に基本的なサービスを無料で利用できるほか、ほぼすべてのサービスが3クリック、3秒で利用できるとしています。従来の金融サービスは移民やUnbanked/Underbanked層にとっては、しばしば複雑でわかりにくいものであったため、こうした障壁を取り去ることを意識しています。

図4
【図4】Money Amigoのサービス画面(筆者撮影写真より)

個人向け金融サービス進化の方向性

Finovateでは、毎年、多くの個人向け金融サービスが紹介されており、常に注目を集める分野となっています。こうした個人向け金融サービスでは、これまで「預金」という金融機関視点での機能を「生活資金」や「財産」という利用者の視点で捉え直している点が特徴的です。加えて、利用者の口座情報を集約・分析することでその財政状況を把握し、より深い顧客理解へとつなげます。これらスタートアップでは、Financial Healthというキーワードに代表されるように利用者の金融行動を好転させることを目的に利用者から収集した情報を活用します。例えば、利用者が無駄使いを行っている費目を特定することで節約を促し、浮いた金額を貯蓄に回すといった方法です。通常の銀行サービスでは、支出が増加したとしても節約を促すのではなく、代わりにローンの利用を勧めるといった行動に出ることが一般的ではないでしょうか。

こうした顧客にとって利用価値の高いサービスを提供することが、昨今の個人向けFintechスタートアップの特徴であり、しばしば既存金融機関によるサービスの対立軸として語られます。しかし、より深く顧客を理解し、その財政状況を好転させることで長期的な関係性を構築することは、最終的に金融機関の収益を向上させることにつながります。顧客がそのライフイベントとともに成長し、一定の資産を形成することで金融機関としては様々なサポートが可能です。この時、利用者は長年にわたり信頼関係を築いてきた金融機関のサービスを優先的に利用することは十分に考えられます。Fintechスタートアップが提供する個人向け金融サービスは金融機関の本来的な意義とも親和性の高いものであり、そのビジネスを成長させる上で大変意義のあるものであると考えます。

(シニアコンサルタント 松原義明)

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