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国内金融機関はFintechにどう立ち向かうべきか?
~「失敗」と「オープン」を前提としたサービス革新を日本で根付かせるには?~

2015年4月17日(金曜日)

金融とICTサービスの融合を意味する「Fintech」というキーワードが耳目を集めています。昨今では、国内金融機関においても対応が進み、営業店舗での接客にロボットを活用したり、コールセンターでの顧客対応に人工知能を活用したりする金融機関も現れました。こうした動きを後押しするように金融庁では、「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」において、金融グループを巡る制度のあり方についての見直しを行うことを表明しています。このように制度面でも後押しが進む中、国内金融機関はFintechに対してどのような方針で臨めば良いのでしょうか? 今回は、Fintechへの対応を積極的に推進している海外金融機関の事例を参考に、その方策について探ってみたいと思います。

金融グループ規制改革の概要

現在、金融庁の金融審議会「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」において議論がなされている「金融グループ規制改革」とはどのようなものでしょうか? 同スタディ・グループは諸外国における決済サービスの高度化を意識し、決済や関連する金融業務のあり方についての検討を行うものとして2014年10月より開始されています。検討においては、決済サービスを巡る現状分析に対して多くの時間が割かれ、特に、ICTの発展に伴いリテール決済分野を中心に多くのスタートアップが革新的なサービスを次々と誕生させていることへの危機感が表明されると共に、現行の法規制では、これらの動きに対応できない点が問題視されました。そして2015年に入ってからは、諸外国における金融サービスを巡る法規制のあり方や金融機関に対する業務範囲規制に関しても議論がなされ、これを受けた2015年3月の金融審議会総会では、国内金融機関における金融グループ規制を巡るあり方について、さらなる検討を行うためのワーキング・グループの設置が正式に決定します。今後は、同ワーキング・グループにおいて金融とICTを組み合わせ、様々に利便性の高い金融サービスを展開するスタートアップへの戦略的な投資についても、その枠組みが提示されることが予想されます。

国内金融機関と同様の危機意識を持つ海外金融機関

このように、今回の金融グループ規制改革を巡る一連の議論は、グローバルに拡大する新たな決済サービス企業がその存在感を拡大させ、既存の金融機関のビジネス領域をある意味「侵食」したことに対する危機感から生じていることがうかがえます。このような危機意識は海外の金融機関においても共有されており、近年では同様の議論の下、Fintechへの取り組みが加速している側面があります。例えば、2013年に開催された決済とコマースに関する世界最大規模のカンファレンスであるMoney 2020では、金融機関とイノベーションの関係についてのアンケートが実施され、その内容は多くの金融機関関係者に衝撃を与えるものとなりました。同アンケートでの設問に、「金融業界における今後のイノベーションは誰を勝者とし、逆に、誰を敗者とするのか?」といったものがあり、これに対して実に29%もの人が敗者として「銀行などの伝統的な金融機関」を挙げたのです。

また、スペインの大手金融機関BBVAのトップは、2015年のMobile World Congress(通信業界における世界最大級の見本市)において、GoogleやApple、そしてAmazonなどが金融サービスへと積極的に進出していること、これら企業の金融サービスが多くの人々の支持を集めることに対する危機感から、「BBVAは将来的にソフトウェア会社となるだろう」と発言しました。事実、BBVAは、これら新興企業を自らの競合として捉え、革新的なサービスを生み出すことを目指し、積極的な投資を行っています。

BBVAにおけるスタートアップを活用したイノベーション戦略

それでは、BBVAではどのような戦略に基づき、革新的なサービスを生み出そうとしているのでしょうか? 同行における取り組みとして最も有名なものに、2011年に設立されたBBVA Venturesと呼ばれるベンチャーキャピタルでの取り組みが挙げられます。BBVA Venturesは、これまでに多くのFintechスタートアップとの接触を図ってきており、これらスタートアップと提携することでBBVAにおける新たなサービスの創出に貢献してきました。BBVAでの取り組みからは、スタートアップとの関わりからサービスを生み出す上で重要となる2つの視点が浮かび上がります。

1つは、「オープン」であることを意識したスタートアップへのアクセスです。BBVA Venturesでは、複数のベンチャーキャピタルと有望な投資先に対する情報を連携しており、有望なスタートアップを提携先に紹介したり、またその逆にこれらベンチャーキャピタルから紹介してもらったりしています。さらに、投資先が展開するサービスが自行で提供予定のサービスと競合する場合、その投資を見送るのではなく、自行サービスと積極的に競争させることを目指します。自行のサービスとスタートアップのサービスを比較し、より良いサービスへの投資を優先し、時には自行サービスの展開を取りやめることもあります。

もう1つは、「失敗」することを前提としたサービス創出プロセスの設定です。BBVA Venturesでは、スタートアップへの投資によって得られたノウハウを活用して新たなサービスを生み出すために、独自のサービス創出プロセスを設定しています。同プロセスでは、初期段階において多くのFinTechサービスに接触を図ることで有望なサービスを見つけ出し、ビジネストレンドの抽出、市場価値の測定、プロトタイプ作成、サービス展開へと至ります。この際、同プロセスの途上において多くのサービスが「失敗」することとなりますが、BBVAでは、同プロセスにおいて失敗が蓄積されることが新たなサービスを生み出す基盤になると捉えています。

BBVAでは、これら取り組みにより、相次いで新サービスの提供に成功しています。例えば、Webサービスの利用促進のためにゲーム要素を取り入れたコンテンツであるBBVA Gameでは、投資先のスタートアップのノウハウが活用され、オルタナティブ・レンディング事業者OnDeckやP2P決済サービス事業社Dwollaとの提携では、数多くのスタートアップとの接触実績が活かされています。

「失敗」と「オープン」を前提としたサービス革新を日本で根付かせるには?

BBVAに限らず、海外の大手金融機関からは、こうした「失敗」と「オープン」を前提として新たなサービスを生み出そうという姿勢が伝わります。しかしながら、金融機関は本来、そのビジネスの社会的意義の大きさから失敗を極力排除することが重視される傾向にあります。また、取り扱う情報の機密性の高さから自ずとクローズな体制で業務に臨まなくてはなりません。これは決済分野を中心に拡大している新興企業における企業文化とは対極のものであり、金融機関がこれら新興企業を真似て、その企業文化を変革するには大きな困難が伴うものと想定されます。重要となるのは、金融機関が培ってきたこうした企業文化を理解し、かつ新たなサービスを生み出すサポートが行える体制を作り上げることであると考えます。富士通総研ならびに富士通では現在、金融機関と有望なFintechスタートアップをつなぐ「場」の提供を目指しています。多くのFintechスタートアップの中から特に将来的に有望なサービスを見つけ出す「目利き」を行い、金融機関とつなげる活動により、その失敗にかかるコストを最小限に抑えることが可能になると考えます。こうした「場」の提供より、金融ビジネスの進化に少しでもお役に立てればと考えております。

(シニアコンサルタント 松原義明)

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