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競争激化のモバイルPOS業界が投げかける金融サービスの新たな方向性

2014年9月10日(水曜日)

2014年8月、AmazonがモバイルPOSサービスに参入することを発表しました。モバイルPOSサービスとは、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末にクレジットカードを読み取る専用装置を装着することで、これらモバイル端末をPOS端末として利用可能とするサービスです。同サービスは、2010年にTwitterの共同創業者であるJack Dorsey氏が新たに創業したSquare社によって始められ、その後、PayPalなどの大手決済サービス企業が参入し、全世界で競争が激化しています。こうした競争は金融業界にどのような変化をもたらすのでしょうか。今回は、Amazon参入により競争が激化するモバイルPOS業界の動向と同分野のパイオニアであるSquareの最新のサービス提供動向からこれからの金融サービスの方向性を占ってみたいと思います。

Amazon参入で更なる競争激化が予想されるモバイルPOS業界

Amazon参入により、俄然注目を集めるモバイルPOS業界ですが、同分野は、現在多数のサービス事業者が、ほぼ同じビジネスモデル且つ横並びの手数料率でサービスを提供するなど “価格競争”が激化している状態にあります。こうした中、Amazonも他のサービス事業者と同様のサービスを提供していますが(クレジットカードリーダーと決済用アプリの提供)、他社よりも更に低い加盟店手数料率となっています。Amazonでは、期間限定で1.75%と他社よりも1%以上安い決済手数料率を提示し、業界におけるシェアを一気に高めることを目指しています。これは、Amazonが新規にサービス参入を果たす際の常套手段とも言え、例えば、クラウドサービスのAmazon Web Services (AWS) についても同様の手法で後発企業ながら業界最大手のサービスへと成長させました。

<表1> モバイルPOSサービスを提供する主な事業者
(各社公式サイトの情報より筆者作成)

主なモバイルPOSサービス事業者

苦境に立つモバイルPOSサービスのパイオニア

このように価格競争が激化する中、同業界のパイオニアであるSquareの行く末を案ずる報道がメディアを賑わせています。ここまで順調に成長してきたかのように思われるSquareですが、2014年4月、突如としてWall Street Journalより、身売りに関する報道がなされました。同紙によるとSquareは2013年だけでも年間で1億円あまりの損失を計上しており、Googleと事業売却を巡って交渉を行っているというものでした。Squareは即座にこうした報道について否定しましたが、WSJでは、こうした多額の損失が生じた背景として、現在のモバイルPOS事業が思うように収益を上げていないのではと指摘しています。(*1)

しかしながら、こうしたネガティブな報道がなされる一方、Squareは2014年に入り、積極的に新たなサービスを展開しています。2014年5月には、サービス提供を取りやめたSquare Walletに代わり、利用者向けの注文アプリSquare Orderを発表、その後すぐに加盟店が顧客からのフィードバックを受け取れるSquare Feedbackを発表しました。また、Squareを利用している加盟店の売上データを分析し、最適な金利で運転資金を提供するSquare Capitalというサービスも2014年6月に開始しています。これら続々と提供されたサービスは、本業の決済サービスとの関連が薄いものも多く、Squareがなりふり構わず新たな収益源を模索しているのではとの声も聞かれます。

<表2> Square が提供するサービス一覧
(Square公式サイト、各種報道資料より筆者作成)

Squareの主なサービス

Squareが目指すビジネスの方向性とは

それでは、最近のSquareによる多方面への事業拡大は、なりふり構わない収益源の模索なのでしょうか。ここで重要となるのが、Squareが創業時より掲げているミッションです。Squareのミッションとは“Making Commerce Easy”(誰にとってもその商売を簡単にする)であり、このミッションを実現するためにSquareは加盟店と共にそのビジネスをスタート(Start)し、継続させ(Running)、そして共に成長していく(Grow)ことを重視しています。Squareがこれまでに提供を開始したサービスは、このミッションに沿って展開されていることが窺えます。

例えば、Squareでは、ビジネスを始めたばかりの事業者に対して、簡単な売上管理や在庫管理が行えるSquare Registerを提供しており、これに加えてオンラインでの請求書管理・送付ツール、前述の顧客からのフィードバック機能、そして、現在のビジネスの状態を簡単に分析できるAnalyticsなど顧客のビジネス拡大に応じて必要なサービスが連携して提供されています。更に事前注文アプリSquare Orderやオンライン予約管理ツールなどは、顧客との関係性強化を目的としたサービスであるといえます。その上、企業の事業継続において必須となる運転資金についてもSquare Capitalにより、一般的な金融機関よりも簡単な手続きで調達することが可能です。このようにSquareが展開するサービスは、その加盟店が創業の時点から必要となるサービスが全て提供されているものであり、加盟店は、その事業の成長度合いに応じてSquareから必要なサービスを提供してもらい、更に事業を拡大させていくことができるのです。

決済サービスを超えた新たな価値提供を目指すモバイルPOS業界

Squareのビジネスモデルは、創業間もない事業者を加盟店として取り込み、その事業継続を助け、更に事業を発展させていくことでSquare自らのビジネスも拡大していくことを目指しているものと考えられます。加盟店を自社のエコサイクルに取り組むこうしたビジネスモデルは、SquareのライバルであるPayPalやAmazonでも同様に取り入れられています。Squareが今後ともビジネスを順調に拡大できるかは今のところ未知数ですが、“薄利多売”の決済ビジネスの世界だけではなく、そこに付随した多様なサービスの提供により、その加盟店の成長を促すことで収益拡大を目指すビジネスモデルは注目に値します。金融機関の重要な役割のひとつとして将来有望な企業に対して、決済手段の提供や資金調達を含むさまざまな支援を行い、そのビジネスを拡大させることが挙げられます。Squareは、こうした金融機関の持つ本質的な価値をうまく進化させたビジネスであり、既存の金融機関にとっても示唆に富むものではないでしょうか。

(シニアコンサルタント 松原義明)

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参考リンク

(*1)Wall Street Journal” Mobile-Payments Startup Square Discusses Possible Sale”
(2014年4月21日)より: http://online.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303825604579513882989476424

Amazon Local Register : https://payments.amazon.com/localregister

Square Webサイト: https://squareup.com/