GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. イノベーションの創出に向けた取り組みを加速する海外金融機関

イノベーションの創出に向けた取り組みを加速する海外金融機関 ~異分野との協業が生み出す新たな金融サービス~

2014年8月12日(火曜日)

近年、金融機関を取り巻く環境が大きく変化しつつあります。PayPalなどのスタートアップから急成長した企業やGoogleやAmazonといった他分野で成功したネット系企業が金融分野に続々と進出しています。加えて、Google Glassやその他スマートウォッチの登場に見られるように顧客とのコミュニケーションデバイスは日進月歩で変貌しつつあり、更にはサービス提供の源泉となるデータ分析の分野も急速な進化を遂げています。このように金融機関を取り巻く環境は、数年前とは比較にならない勢いで変化を遂げましたが、肝心の金融機関自身のビジネスやそのサービスについては変化に乏しいように見受けられます。しかしながら、海外の金融機関ではこうした変化に対応し、自身で新たなサービスを作り出すことを目的に、自社内にイノベーションに関する研究機関を設け、金融系スタートアップ企業と提携するなどの取り組みが行われています。

スタートアップへの投資を通じて新サービス開発を志向する:BBVA

スペインの大手金融機関であるBanco Bilbao Vizcaya Argentaria(以下、BBVA)は、2014年2月に銀行代理店サービスを行うスタートアップSimpleを約1億1,700万ドルで買収するなど、スタートアップとの結びつきの強さで知られています。同行は、BBVA Venturesと呼ばれるベンチャーファンドをシリコンバレーの近くであるサンフランシスコに設立し、積極的にスタートアップ企業に出資を行うと共に、出資先のサービスを自行のデジタルサービスに反映させるなど、イノベーティブなサービスを取り込むことを目指しています。

BBVA Venturesでは、SaveUpと呼ばれる金融サービスとゲーミフィケーションを融合させたサービスを提供するスタートアップ企業に対して出資を行っています。SaveUpへのコンタクトを通じて得られたノウハウは、BBVAが2012年に提供を開始したデジタルサービスであるBBVA Gameにうまく反映されています。BBVA Gameは、若年層の獲得とリレーションの強化、そして顧客に対して金融教育を実施することを目的に2012年より提供されているWeb上のゲームサービスであり、同行では、BBVA Gameの立ち上げにより、同行顧客のオンラインサービスへのアクセス数はそれまでの16倍に拡大しており、これに伴い同行の金融サービスに対してうまく誘導することができたとしています。

同行では、かつて新サービスを導入するにあたって、金融スタートアップそのものを買収していましたが、こうした手法に限界を感じ、スタートアップへの出資による提携関係を築き上げる方向へと変化させました。金融機関とスタートアップ企業がそれぞれ独立した関係を維持することで、スタートアップ企業はベンチャー精神を失うことなく、新サービスの創出に取り組むことができます。BBVAでは金融系スタートアップへの出資を通じて自らのサービスを発展させているのです。

新サービスのベータテストを実施する:Wells Fargo

アメリカの大手金融機関Wells Fargoでは、新サービスの提供に当たり、自行で開発された正式提供前のサービスを一部のユーザーにベータ版として提供し、ユーザーより得られたフィードバックからサービスを改善するという開発プロセスを導入しています。ベータ版サービスは、Wells Fargo Labsと呼ばれるWebサイト上で提供されており、これまで、モバイルバンキングアプリや新型の決済サービス、更にはGoogle Glass上で提供される新たな金融サービスなど多岐にわたる新サービスがテストされています。

Wells Fargoにおける新サービス提供プロセスとしては、まず、Wells Fargo内部のテクノロジーチームが世の中のトレンドなどを分析し、新たなサービスのコンセプトを創り上げ、それに基づきベータ版サービスを開発します。開発されたサービスは、Wells Fargo内部のテスターチームによってテストされます。その後、利用者向けのテスターサイトであるWells Fargo Labsにおいて公開され、一般の人々によるテストが行われます。テスト期間終了後、利用者からのフィードバックを基に、今後のサービス提供の方向性が検討されます。このベータテストにおいて評判の悪いサービスは、その開発が中断もしくは中止となることもあります。Wells Fargoのベータテストを用いた新サービス導入の取り組みは、従来の開発プロセスと異なり、顧客との共同作業で新たなサービスを生み出すものであると言えます。

顧客のアイデアが次世代の新金融サービス生み出す:Commonwealth Bank&Royal Bank of Scotland

近年、海外の金融機関を中心にサービスの企画段階において、利用者の声を取り入れる取り組みが広まりつつあります。オーストラリアの大手金融機関であるCommonwealth Bankは、2011年より、"IdeaBank”と呼ばれるコミュニティサイトを立ち上げ、Commonwealth Bankに採用して欲しい新たな銀行サービスのアイデアについて広く募集しています。また、同サイトの訪問者は、気に入ったアイデアを見つけた場合、Facebookの「いいね!」ボタンと同様の仕組みでアイデアを評価できます。同サイトに投稿された有望なアイデアは同行の商品企画部門が採用し、サービス化に向けて本格的に検討されます。

こうした利用者の声を反映させる取り組みは、他行にも広がっています。イギリスの大手金融機関Royal Bank of Scotland(以下、RBS)では、“RBS Ideas Bank”と呼ばれる利用者の意見を聞くためのコミュニティサイトを開設しています。同サイトにおいても、RBSの顧客であるなしに関係なく、RBSで改善して欲しいサービスについての意見を広く募集しています。

異業種と既存業界のせめぎ合いが新サービスを生み出す

今回ご紹介した事例以外にも多くの金融機関がイノベーション創出に向けた取組みを実施しています。例えば、Bank of Americaでは、スタートアップ企業が自社で開発したサービスを競うコンテストにスポンサーとして参加しており、優れたサービスをいち早く見つけることを目指しています。このように、多くの金融機関が近年、イノベーション創出に向けた取組みを加速させているのは何故でしょうか。こうした背景には、金融業界もデジタルエコノミーの到来により、他業態から押し寄せてくる新たなサービス提供の動きに抗えなくなってきたことが影響しています。このような既存の制度や仕組みを大きく変革させるようなイノベーションを近年、“Disruptive Innovation(破壊的なイノベーション)”と表現することが多くなっています。例えば、他業界の事例ですが、スマートフォンでハイヤーを呼び出すサービスUberが既存のタクシー業界に打撃を与えるといった動きがこれにあたります。スタートアップ企業による新たなサービス提供の取り組みはまさに既存業界の制度や仕組みを“Disrupt(破壊する)”するものです。今回ご紹介した海外金融機関における取り組みは、金融系スタートアップや他業態からの新たなサービス提供の動きに既存の業界として対抗するものであると考えます。こうした新サービスの提供者と既存業界のせめぎ合いこそが利用者にとってより良いサービスが提供される素地となっているのかもしれません。

(シニアコンサルタント 松原義明)

※弊社では、Facebookページも開設しております。当記事に関するご感想・ご意見は以下のリンク先までお願いいたします。

富士通総研 金融・地域ページ: https://www.facebook.com/Fujitsufrikc/

参考リンク

BBVA Games Webサイト : https://www.ligabbvagame.com/

Wells Fargo Labs Webサイト: https://labs.wellsfargo.com/

IdeaBank Webサイト : http://ideas.commbank.com.au/

RBS Ideas Bank : https://www.rbs-communities.co.uk/t5/Ideas-Bank/idb-p/idea