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世界中で広がるリアルタイム決済サービスの現状

~リアルタイム決済サービスを軸に決済ベンチャーに対抗するイギリスの銀行界~

2014年5月12日(月曜日)

2020年に開催される東京五輪を見据え、金融分野でもサービス革新が求められています。こうした中、現在、最も注目を集めているのが、決済システムの刷新です。これまで日本の決済システムは、高品質でありながらその決済処理時間が限定され、小口決済については割高な手数料が課せられるものでした。翻って諸外国の決済システムを見た場合、24時間365日リアルタイムで即時決済が可能であり、且つ小口決済については安価な手数料もしくは無料で利用できるものが主流となりつつあります。こうしたリアルタイム決済はイギリスやスウェーデン、そしてシンガポールなどに導入され、今後アメリカにおいても導入に向けた議論が本格化しようとしています。本コラムでは、2008年よりリアルタイム決済を導入し、更により利便性の高いサービスへと発展させたイギリスを例に、リアルタイム決済サービスの最新状況についてご紹介したいと思います。

イギリスにおけるリアルタイム決済の現状

イギリスのリアルタイム決済サービスは、Faster Paymentsと呼ばれ、2008年よりサービスが開始されました。同サービスは民間の決済プラットフォーム事業者であるVocaLink社によって構築されました。Faster Paymentsの最大の特徴は、個人利用者が無料でリアルタイム決済を利用できる点にあります。個人の利用者は何度送金を行っても手数料が無料であり、代わりにビジネス利用のみ手数料が発生します。

Faster Paymentsは、2008年の利用開始から順調に取扱件数が増加しています。2008年のサービス開始当初は年間8,200万回であった決済取扱件数は、2013年には年間9億7,000万回へと10倍を超えるペースで増加しています。うち約6割以上が個人の利用であり、今やイギリス国内における個人の支払いや送金といった決済の3分の2がFaster Paymentsによって行われています。このように、Faster Paymentsは、イギリスの決済インフラの屋台骨を支えるものであり、その利便性の高さにより、利用者が急拡大しています。

リアルタイム決済基盤上でモバイルウォレット&P2P送金サービスを提供

イギリスの銀行界ではこの決済ネットワークを活用し、更に利便性を向上させたサービスを個人向けに提供しようという動きが出ています。この時、キーワードとなるのがモバイルウォレットサービスとP2P送金サービスです。

イギリスでは2014年夏ごろより、日本のモバイルSuica等に似た仕組みのモバイルウォレットサービスが導入される予定です。同サービスはZappと呼ばれ、HSBC、First Directなどサービス開始予定の大手行に口座を持つ利用者であれば誰でも利用可能です。Zappでは、NFCを活用したモバイル決済のほか、NFC搭載スマートフォンでなくても、決済時に表示されたQRコードをスマートフォンのカメラで読み取ることで決済を可能とします。さらにAmazonやPayPalのようなオンライン決済にも対応し、ECサイト上の決済もワンタッチで完了します。Zappでは、日本の一般的なモバイルウォレットサービスと異なり、銀行口座から即座に現金が引き落とされます。つまり、デビットカード同様に銀行口座にある残高分しか利用できず、チャージといった手間が省けるのも特徴です。

このほか、P2P送金サービスにおいてもFaster Paymentsの基盤を利用したサービスが2014年4月より利用開始となっています。Paymと呼ばれるP2P送金サービスでは、携帯電話番号を指定するだけで個人のユーザー同士が無料で簡単に送金を行うことが出来ます。利用者は、自身のスマートフォンにPaymサービスに参加している銀行の送金アプリをダウンロードし、自身の携帯電話番号と銀行口座を登録することで利用可能です。友人に送金を行う場合、アプリ上に登録してある友人の電話番号と送り先の名前を確認し、金額を入力するだけで送金が完了します。

顧客にとって真に利用しやすいリアルタイム決済サービスとは?

このようにイギリスでは、個人が無料で利用できるリアルタイム決済サービスを基盤として、ZappやPaymと呼ばれるモバイルウォレットやP2P送金サービスといった大変利便性の高い決済サービスを利用できる体制が整っています。それでは、何故このような利便性の高い決済サービスがイギリスでは無料で利用できるのでしょうか。

こうした状況を考える際に重要となるのが、近年の決済環境の急激な変化です。PayPalに代表される決済サービス系ベンチャーが2000年代より世界で急速に普及した関係で、従来の銀行による決済サービスの地位が相対的に低下しています。今やVisa、MasterCardといった国際カードブランド会社までもが独自のモバイルウォレットや送金サービスを展開するなど、PayPalの成功は、非銀行系決済サービスの普及を促進しました。ZappやPaymといった利便性の高い決済サービスの登場は、こうした非銀行系決済サービスへの対抗策であると考えられます。

更に仮想通貨Bitcoinの登場により、決済の世界は今後大きく変化する可能性を秘めています。Bitcoinは、その取引の仕組みから国境を越えた決済を短時間かつ大変安価な手数料で行えるグローバル決済基盤とみなすことが可能です。実際にドイツの新興金融機関であるFidor Bank AGではBitcoinと類似の仮想通貨を用いたグローバル決済サービス業者Rippleとの提携を発表しました。今後はグローバル決済においてもリアルタイムで極めて安価な手数料による決済が一般化するかもしれません。

このように個人の決済サービスをめぐっては、利便性が高く、無料で利用できる決済サービスが世界の主流となっています。日本においても銀行間決済システム「全銀システム」を所管する全国銀行協会においてリアルタイム決済導入に向けた本格的な検討が開始された昨今、品質にこだわるだけでなく、いかに多くの人々に利用してもらえるかといった観点から新たな決済サービスを構築していくことが求められているように思われます。

(シニアコンサルタント 松原義明)

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参考リンク

イギリスのリアルタイム決済サービスFaster Payments : http://www.fasterpayments.org.uk/

モバイルウォレットZapp紹介ページ : http://www.zapp.co.uk/

P2P送金サービスPaym紹介ページ : http://www.paym.co.uk/

Zappによる決済イメージ動画 : https://www.youtube.com/watch?v=IzWcfBrMLhk

Paymによる送金イメージ動画 : https://www.youtube.com/watch?v=v-AomRVj7XI

Fidor Bank AGとRippleとの提携に関するニュース記事 : http://www.finextra.com/news/fullstory.aspx?newsitemid=26033