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次世代決済サービスにおける勝者は誰か?

~次世代金融カンファレンスMoney 2020参加報告(その2)~

2013年12月2日(月曜日)

前回の当コラムでは、2020年において銀行が“負け組”となるかもしれない2つのビジネス・イノベーションについて取り上げました。今回は、そのうちの1つである決済分野に焦点を当てていきます。今や、決済分野は、GoogleやAmazonといったグローバルにサービスを展開するネット系企業、StarbucksやWalmartといった流通系企業、さらにはPayPalやSquareといったスタートアップから急速に発展した企業が入り乱れる最も変化の激しい業界であるといえます。

次世代決済サービスのキーワード: “オムニチャネル”

果たして、こうした変化の激しい決済分野において勝者となるのは、一体、どのような事業者でしょうか。このとき、勝負を左右する重要なキーワードとなるのが、前回ご紹介したオムニチャネルという概念です。オムニチャネルについては、既に様々な定義付けが行われていますが、富士通総研では、全てのチャネルが統合された状態を示し、利用者がいつでも、どこでも利用したいサービスを即座に、簡単に利用できる状態と位置づけています。オムニチャネルによる次世代決済サービスでは、場所や時間に関係なく、利用者が商品やサービスの購入を決断したタイミングで、手持ちのデバイスを活用してその場で決済が完了します。現金やカードといった決済手段を確認する必要がなく、また、決済にあたってレジに並ぶ、更にはお店で決済を行う必要もないなど、時間や場所に制約されずに決済が行える環境が実現します。決済分野においては、各事業者がこうしたオムニチャネルによる決済を実現するプラットフォームを構築して顧客を囲い込むことを目的に様々なサービス提供が行われています。以下では、新たな決済プラットフォーム構築を目指すカードブランド会社ならびに決済ベンダーの動きを中心に見ていきたいと思います。

ワンプラットフォームであらゆる決済を可能とするMasterCard

大手国際カードブランドの一角、MasterCardでは、オムニチャネルによる決済サービスを実現するプラットフォーム、MasterPassを2013年2月に発表しました。MasterPassでは、次世代の非接触決済規格であるNFCによるリアルタイム決済から、ネットワーク上でのオンライン決済まで利用者にまつわる全ての決済が1つのプラットフォームで実現されます。MasterPassが決済インフラとなった社会では、例えば、TVの画面上にお気に入りの商品が表示されたとき、同時に表示された特定のコードをスマートフォンで撮影するだけで決済が完了する、お店のショーウィンドウに飾られている現実世界の商品をGoogle Glassで表示させると、その場で即座に決済が完了するなど、利用者が商品を購入したいと思ったその瞬間に決済が完了する仕組みが提供されます。同社ではまた、決済分野で主流のデバイスであるスマートフォンに敢えてこだわらず、スマートフォンですら「多くの決済デバイスの1つ」として捉え、ありとあらゆるデバイスで決済を可能とする世界を作り上げようとしている点も特徴的です。

利用者、小売店双方を取り込んだ決済サービスを提供するPayPal

一方、オンライン決済分野で今や圧倒的なプレゼンスを誇るPayPalは、リアルな決済シーンでもオンライン同様もしくはそれ以上に簡潔な決済の仕組みを構築することを目指します。前回お伝えしたようにPayPalでは、PayPal Beaconと呼ばれる新たな決済サービスを発表しており、利用者が財布を持たずに決済ができる世界を目指しています。PayPal Beaconとは、Bluetoothによる近距離無線通信を可能とする機器であり、店舗に設置することでスマートフォンと通信することを可能にします。PayPalによる決済アプリをスマートフォンにインストールした利用者は、アプリ上で予めお気に入りの店舗や商品を選択しておくことで、その店舗に立ち寄った瞬間に無線通信が行われ、決済が完了します。これにより、利用者がふらっと立ち寄った店舗で「いつものください」と声をかけるだけで商品が購入できるような関係性をICTの活用で簡単に実現することができます。同社の決済サービスでは、オンライン/リアル双方の決済が同一のプラットフォームで利用できるだけでなく、利用者と加盟店双方にとってメリットのある仕組みが内包されています。

さらにPayPalでは、自社の決済プラットフォームから得られる莫大なデータを活用した新たな商品開発にも取り組んでいます。同社は、2013年9月より、PayPalアカウントを持つ米国の小売事業者限定でスモールビジネスローンを提供しています。PayPalの提携銀行より提供される同社のローンでは、申込み時の審査にPayPalの決済データが活用され、PayPal決済の利用頻度が多い加盟店ほど有利な条件でローンを利用することができます。PayPalはオンライン決済サービスのスタートアップとして誕生し、今や、中小事業者向けの融資を手がける企業へと成長しました。つまり、PayPalアカウントと呼ばれる「預金口座」を顧客に提供し、「決済」や「融資」といったサービスを行う新たな「銀行」として、その存在感を強めています。今や、大量のクレジットを保有するPayPalアカウントがあれば、日常生活を問題なく送ることも可能です。PayPalは利用者から小売店までを巻き込んだ強大なエコシステムを構築しているのです。

次世代決済サービスにおける勝者の条件

ここまで見てきたように、次世代決済サービスにおける勝者の条件とは、いつでも、どこでも簡単に利用できる決済サービスを導入することで、利用者を自社のプラットフォームに取り込み、継続的に利用してもらう環境を構築することにあります。このとき重要となるのは、単に便利なサービスを提供するだけでなく、決済において生じたデータを分析し、自社サービスの新規開発・改善に役立てる環境を作り上げることです。前述のようにPayPalでは、自社の決済データを活用して加盟店向けにスモールビジネスローンを提供するなど、サービスを利用すれば利用するほど、加盟店自身のビジネスを拡大することができるプロセスをプラットフォーム内に構築しています。つまり、プラットフォームの提供者だけでなく、利用者、加盟店双方がプラットフォームを利用することで恩恵を受けられるエコシステムを構築することが重要なのです。今後は、こうしたエコシステムを構築したプラットフォーム提供事業者が次世代決済サービスにおける勝者としてますます繁栄していくのでしょう。

(シニアコンサルタント 松原義明)

※当コラムでは、3回にわたり、次世代の金融・決済サービスに関する議論の一端をご紹介したいと思います。
  (1) 2020年、銀行が“負け組”となる日
  (2) 次世代決済サービスにおける勝者は誰か?
  (3) データ分析がもたらすビジネス・イノベーションの可能性(仮)

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富士通総研 金融・地域ページ: https://www.facebook.com/Fujitsufrikc/

参考リンク

Money 2020 公式サイト: http://money2020.com/

PayPal Beacon 紹介サイト: https://www.paypal.com/webapps/mpp/beacon

MasterPass 紹介サイト: https://masterpass.com/