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2020年、銀行が“負け組”となる日

~次世代金融カンファレンスMoney 2020参加報告(その1)~

2013年11月5日(火曜日)

2020年、東京オリンピックが開催されるこの年に、日本や世界はどのような姿になっているでしょうか? 近年、あらゆる事業領域でビジネス・イノベーションが起こっています。金融もその例外ではありません。今年5月に日本にも進出を果たしたSquareは、スマートフォンでのクレジットカード決済を可能とし、個人事業主や中小事業者にクレジットカード決済の機会を提供することで、現金中心のリアル決済の世界を大きく変革しています。この他、電子マネーによるオンライン決済サービスの爆発的な普及や仮想通貨の登場など、金融業界を取り巻くイノベーションのスピードは、他分野に勝るとも劣りません。

この10月、Money 2020という、その名が示すとおり2020年という近未来の金融・決済サービスに焦点を当てたカンファレンスが、米国ラスベガスで開催されました。富士通総研では、次世代の金融・決済サービスに関する動向を探るため、本カンファレンスに参加しましたので、その内容をご報告致します。

次世代の金融イノベーションが銀行を“負け組”にする? 

今回のMoney 2020では、初日に大変興味深い取り組みが行われました。オープニングスピーカーであるマッキンゼーのコンサルタントKausik Rajgopal氏が、スマートフォンアプリを活用し、参加者にその場で今後の金融・決済サービスの方向性についてアンケートを行ったのです。930の回答が寄せられたこのアンケートでは、金融分野のイノベーションに関する質問も多く設定され、金融関係者のイノベーションに対する関心の高さが窺えます。

設問では、金融分野で今後注目すべきイノベーション分野について問うものがあり、27%がデータ分析を、22%がリテールでのモバイル決済を、19%がオムニチャネル決済サービスという新たな決済サービスコンセプトを挙げています。また、こうした金融分野のイノベーターとしては、GoogleやPayPal、そしてSquareなど他業態の金融サービス提供者や決済ベンチャーの名を挙げています。

また、このアンケートでは、「金融業界における今後のイノベーションは誰を勝者とし、逆に、誰を敗者とするのか?」という大変興味深い問いかけが行われました。回答者の多くは、小売事業者(39%)や、Google、PayPalといった非伝統的な金融サービス提供者(37%)を“勝ち組”と回答する一方、29%の人が銀行や伝統的な金融機関を“負け組”と回答ました。 伝統的な金融機関のビジネスが2020年までに失われることは考えづらいかもしれませんが、同カンファレンスでは既存の金融ビジネスを大きく変革する可能性を秘めた様々なトピックが発表されました。

オムニチャネル決済サービスの実現による顧客経験の改善

多くの人々が次のイノベーション分野として挙げる決済の分野では、様々な決済サービス事業者が登壇し、自社の次世代サービスを発表していました。中でも注目を集めたのがPayPalによる発表です。同社は、Bluetooth通信により顧客が店舗に立ち寄っただけで決済が完了する新サービスPayPal Beaconを発表しました。同サービスが一般化すると、顧客はレジに並んで商品の支払いを行う必要が無くなり、日常における決済という経験が大きく改善されることになります。

こうした顧客の日常における経験を大きく改善させる上で重要となる考え方が、前述のオムニチャネルというコンセプトです。オムニチャネルとは、統合的なチャネル提供を意味する新語であり、顧客の状況に応じて、顧客の望むタイミングで様々な金融サービスが提供されることを表します。これまで伝統的な金融機関は、様々なチャネルで多様な金融サービスを提供することに注力してきましたが、これらサービスの提供される状況にはあまり注意が払ってこなかったように思われます。今後は、サービス提供に着目し、顧客の経験を改善することを目指した事業者が利用者の支持を集めるかもしれません。

データ分析により、顧客をより良く知ることが価値の源泉

オムニチャネルによるサービス提供を実現するには、顧客がどのような考えや好みを持ち、どのようなサービスを必要とするのか、顧客一人ひとりを詳しく知ることが必要です。この時重要となるのが、今後のイノベーション分野として予想されるデータ分析の分野です。英大手スーパーTesco社向けにデータ分析を行うDunnhumbyによるセッションでは、独自のデータ収集・分析手法により、スーパーの購買情報といった内部データと、顧客のSNS上での発言や顧客の属性といった外部データをうまく組み合わせることで、顧客をより良く知ることを可能とした事例が紹介されました。

同社では、データ分析で得られた知見をTesco社傘下の金融機関Tesco Bankのマーケティングに活用し、顧客一人ひとりに特化したプロモーションを実現しました。Tesco Bankでは3年連続で増収増益を達成するなど一定の成果を挙げています。金融機関は、顧客のお金を取り扱う関係上、多くの顧客情報を入手することとなります。今後は、入手した情報をどう活用していくのか、その活用度合いにより、ビジネスに差がつく時代となっていくのかもしれません。

多様な主体が連携したエコシステムの構築が勝ち組、負け組の分かれ目

ここまで見てきたように、データ分析に基づき、顧客一人ひとりの好みや考え方を把握し、顧客の状況に応じてサービス提供を行うオムニチャネルによる金融サービスの提供が、今後の金融ビジネスを大きく変革させます。こうしたサービス提供を実現できる事業者こそ“勝ち組”として顧客から支持を得ると考えます。

この時、カギとなるのは、顧客を中心として様々なサービスを連携させることで情報やお金の流れが顧客と事業者間で循環するエコシステムを構築することにあります。オムニチャネルのような顧客接点、サービス提供、データ分析など多岐に亘る変革を単独の事業者が行うには、多大なコストとエネルギーが伴います。より効果的な方法は、分野ごとに最適なサービスを有する事業者が連携することでエコシステムを構築し、顧客に向けてより良いサービスを提供することです。冒頭で多くの人が“負け組”となることを予想した金融機関ですが、高度な与信管理能力や幅広い顧客とのつながりなど他業種にはない強みを多く有します。金融機関は、こうした強みを背景に業種や規模の大小を問わず、有力なサービス提供事業者と連携し、顧客に最適なサービスを提供することが、今後、“勝ち組”として生き残るために必要ではないでしょうか。

(マネジングコンサルタント 隈本正寛)
(シニアコンサルタント 松原義明)

※当コラムでは、3回にわたり、次世代の金融・決済サービスに関する議論の一端をご紹介したいと思います。
  (1) 2020年、銀行が“負け組”となる日
  (2) オムニチャネル決済時代における勝者は誰か(仮)
  (3) データ分析がもたらすビジネス・イノベーションの可能性(仮)

※弊社では、Facebookページも開設しております。当記事に関するご感想・ご意見は以下のリンク先までお願いいたします。

富士通総研 金融・地域ページ: https://www.facebook.com/Fujitsufrikc/

参考リンク

Money 2020 公式サイト: http://money2020.com/

PayPal Beacon 紹介サイト: https://www.paypal.com/webapps/mpp/beacon

Dunnhumby 社公式サイト: http://www.dunnhumby.com/