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次世代スマートフォンバンキングの潮流 ~スマートフォンを軸とした新たなチャネル構築に迫る~ (2/2)

2013年4月10日(水曜日)

※こちらの記事は、月刊金融ジャーナル2013年3月号(第54巻 第3号 通巻第678号)(金融ジャーナル社)に掲載されたものです。2回に分けて掲載いたします。

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スマートフォンで広がる家計管理サービス

米国の多くの金融機関では、自行のインターネットバンキングやモバイルバンキングにおいて利用者の家計管理を行えるサービスが提供されている。このサービスはPFMサービスと呼ばれており、同種のサービスで成功例として取り上げられるものにPNC銀行が提供する「Virtual Wallet」がある。

Virtual Walletは、2008年よりサービスを開始した若年層向けのネット専用口座であり、PCやスマートフォンでの利用に特化した点が特徴となっている。Virtual Walletでは、利用者の口座間の資金移動をスマートフォンの画面をタッチするだけで行える。また、今後の決済予定金額を自動的に集計し、現在どの程度の金額を自由に使えるのかを画面に表示する。

この他、Virtual Walletでは、親子間で口座情報を共有できるなど、若年層、特に学生に支持されるサービスが提供されており、わずか3年余りで100万人の新規顧客獲得につながった。(*4)

こうした家計管理サービスを提供する動きは、PNC銀行のような比較的大規模な金融機関から米国版信用金庫ともいうべきCredit Unionにまで広がっている。

PFMを提供する米国のベンチャー企業MoneyDesktopは、2010年の設立からわずか2年余りで300以上の金融機関に採用されている。(*5) 顧客の多くは、Credit Unionであり、比較的小規模でIT投資余力の無い金融機関に対して、シンプルで安価なPFMを提供している点に強みがある。

金融機関がこうしたPFMサービスを提供することによって、利用者は自身の銀行口座と連動した使いやすいサービスを享受することができる。また、金融機関にとっても利用者のお金の使い方を詳細に把握でき、より精度の高いマーケティングが可能となる。

音声認識を用いた次世代の金融サービス

iPhoneでは、2012年よりSiriと呼ばれる音声認識アプリケーションが搭載され、大変な注目を集めた。わが国でも、NTTドコモからAndroid端末向けに同様のアプリケーションが提供されている。こうしたアプリケーションが注目を集める背景には、音声で認識することのハイテク感や斬新さに加え、従来の入力方法と比較して簡潔に自分の行いたい操作が行える点にあるといえよう。例えば、Siriでは、「7時に起こして」とiPhoneに向かって話すだけでアラーム機能が起動するなど、利用したい機能やサービスを音声による指示で起動する。

こうした入力操作の簡潔性は、金融取引のような複雑な取引の場面においてこそ真価を発揮する。既に欧米の金融機関では、このような音声入力の可能性に目をつけ、スマートフォンに話しかけるだけで取引が行えるサービスを導入する動きが出ている。

米国の軍人とその家族を主な顧客とする USAAは、音声入力で金融取引が行えるアプリケーションを試験導入中である。同行では、かねてより世界各地で勤務する米国軍人のためにPCやモバイルといったセルフでの取引を充実させてきた。このアプリケーションもこうしたセルフ取引の拡充といった延長線上に位置づけられるものである。

「Nina」と名付けられたこのアプリケーションでは、例えば「今月のクレジットカードの請求額は?」といった質問をスマートフォンに話しかけると、音声と画面で請求額を答える機能が搭載されている。この際、予め登録された利用者の声を認識して利用者が本人であることを確認している。USAAは、残高照会や口座からの送金といった一般的なモバイルバンキングの取引メニューが音声による指示だけで完結できることを目指している。

この他、スペインの大手金融機関BBVAにおいても同様のサービス導入が検討されている。同行では、単に利用者の指示を忠実に実行するだけでなく、利用者に対してより良いサービスを提案するといった双方向型のサービスとなることを目指している。音声認識サービスの導入は、スマートフォンを利用者の金融アドバイザーといった位置に高める可能性を秘めている。(表2)

<表2>金融アドバイザー型のスマートフォンサービス
出典:各行プレスリリースならびにニュースサイト記事よりFRI作成

金融アドバイザー型のスマートフォンサービス

おわりに

日本国内のスマートフォンの急速な普及に伴い、わが国の金融機関でも、スマートフォンへの対応が相次いでいる。ただし、その対応は単にホームページ上の情報提供やインターネットバンキングの機能をスマートフォンに最適化して、提供するものにとどまるのが一般的である。

一方、海外の先進事例においては、スマートフォンを金融機関と顧客をつなぐ、最も身近なメディアとして捉え、金融サービスそのものを大きく革新しているのが特長である。本稿で示した、決済やPFMといった生活に密着したサービス、音声認識技術を活用した双方向型のサービスは、いずれも、単に従来の金融サービスをスマートフォンに対応させるのではなく、その機能や特長をフル活用し、顧客がより便利に金融サービスにアクセスできるような工夫が凝らされている。

わが国金融機関においても、顧客経験価値向上という観点から、従来の金融サービスにとどまらない、スマートフォンならではの革新的なサービスを提供することが望まれる。

(おわり)

(マネジングコンサルタント 隈本正寛)

(シニアコンサルタント 松原義明)

出典

*4 PNC銀行プレスリリースより(2012年6月12日) : http://pnc.mediaroom.com/index.php?s=3473

*5 MoneyDesktopプレスリリースより(2012年8月2日) : http://moneydesktop.com/company/news/moneydesktop-acquires-moneyreef

関連リンク

次世代スマートフォンバンキングの潮流(1/2)