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キャッシュレスで利用可能な銀行サービスの誕生? ~Movenbankが目指す次世代の銀行サービス~

2012年5月16日(水曜日)

インターネットやスマートフォンでのショッピングが一般化し、店舗での電子マネーによる決済が日常的となるなど、現金を使わずに買い物が行える機会が増えてきています。中には、“おサイフケータイ”機能のある携帯電話やスマートフォンを駆使して、一度もお財布を出さずに一日中買い物ができてしまうような人もいるかもしれません。こうしたネットショッピングの台頭や電子マネーの普及によりもたらされた決済シーンにおける “キャッシュレス化”は、今後の金融サービスにどのような変化をもたらすのでしょうか? 今回はこうした時流を捉え、次世代の銀行サービスを提供しようと試みている米国の金融ベンチャーであるMovenbankをご紹介します。

Movenbankは、2012年中に米国で開業を予定している世界初の“キャッシュレス”で利用可能な銀行サービスです。Movenbankでは、店舗や自前のATMを一切所有しないばかりか、キャッシュカードも発行しません。顧客がMovenbankを利用するには、次世代無線通信規格であるNFC (Near Field Communication) に対応したスマートフォンが必要となります。このスマートフォンがキャッシュカードの代わりとなるのです。Movenbankが想定している利用シーンは、次のようなものです。顧客が口座から現金を引き出したいときには、NFCに対応した提携ATMにスマートフォンをかざして現金を引き出します。また、米国の大都市圏で一般化しつつあるVisaやMasterCardのNFC決済サービスを利用し、店舗での決済も行うことができます。一方、口座への入金については、スマートフォンやPCを用いた他行口座からの振り込みと、スマートフォンで小切手の写真を撮影してスキャンすることで対応する予定です。

キャッシュレスな銀行サービスという他に類を見ない取り組みに加え、Movenbankでは、新たな“クレジットスコア”により与信を行うという野心的な取り組みを始めています。通常、米国の金融機関で住宅ローンを借りるなどの金融取引を行う場合、クレジットカードの利用履歴などから算出されるクレジットスコアが必要となりますが、このスコアは一般的にクレジットカードを利用している人ほど高くなる仕組みとなっています。 したがって、クレジットカードを利用せず、コツコツと貯金をしているような倹約志向の強い人はクレジットスコアが低くなる傾向にあり、住宅ローン金利の優遇が受けられないなどの不便を強いられる恐れがあります。Movenbankでは、借入れが多い人ほど有利となっている現在の状況を覆そうとオリジナルのクレジットスコアである“CRED”を開発しています。CREDは、金融機関との取引状況に加え、ソーシャルネットワーク上での活動やその人のお金に対する考え方までを含めてスコアを算出します。従来のクレジットスコアが低い人であっても、多くの親友に恵まれ、無駄遣いをしない人だということがわかれば、CREDのスコアは高くなり、低金利でまとまったお金を借りることができるといった利用法を目指しています。

Movenbankのこうした取り組みは、従来の銀行サービスとかけ離れており、社会に受け入れられるのか疑問に感じるかもしれません。しかしながら、米国では、Movenbankと同様のサービスを2012年中に立ち上げ予定の金融ベンチャーがもう一つ存在します。“Simple”というサービス名称でMovenbankと同様にリアルなチャネルを一切持たずに取引ができる銀行サービスです。Simpleでは、キャッシュカードとクレジットカード機能が一体となったカードを発行し、全米約40,000箇所の提携ATMにおいて手数料無料で利用できる予定です。また、Twitterの開発者の一人であったAlexPayneをCTOに迎え、シンプルで使いやすいスマートフォン専用の取引画面を開発しました。この他にも、登録した友人にワンタッチで送金が可能となるサービスや自分の予算に合った近所のおすすめのレストランを教えてくれるサービスなどを提供する予定です。

こうした従来の銀行サービスと一線を画すサービスが米国で相次いで登場している背景には、既存の金融機関が提供する金融サービスが利用者のニーズを捉えきれていないことが影響していると考えられます。Movenbankの代表であるBrett King氏は、昨年上梓した著書「Bank 2.0」の中で、スマートフォンやソーシャルメディアの登場により消費者の行動形態が大きく変化しており、伝統的な金融サービスは不要になる、との主張を展開しています。また、Simpleの代表者も従来の銀行サービスのような複雑な手数料体系に煩わされないシンプルで利用者が本当に必要とする銀行サービスを提供することを目指しています。両者が行きついた提供形態が店舗でのサービスを排し、モバイルデバイスによるサービス提供であることは示唆に富むものです。従来の銀行サービスを必要としている人々がいる以上、店舗などのリアルなチャネルを即座に廃止することはできないかもしれませんが、その役割を見直すことで、よりお客様にとって使いやすいサービスを提供できるかもしれません。

(シニアコンサルタント 松原 義明)

参考リンク

Movenbank : http://movenbank.com/

Simple : https://www.simple.com/