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顧客セグメントにフォーカスした金融サービスの新潮流(1/3)

2012年4月26日(木曜日)

はじめに

近年、人々のライフスタイルや価値観が大きく変化しています。特に、18歳~34歳くらいまでのいわゆる若年層と呼ばれる世代は、スマートフォンを駆使し、ソーシャルメディアで積極的に情報発信を行うなど、これまでとは異なる新たな行動様式を確立しています。

こうした人々のライフスタイルや価値観の変化に合わせて、流通業や製造業では若年層といった特定の顧客セグメントにフォーカスして商品やサービスを提供する事例が数多く見られます。従来、全ての顧客セグメントに均質なサービスを提供することを基本としてきた金融機関の中にもこうした動きを取り入れ、特定の顧客セグメントにフォーカスしてサービスを提供するところが出始めています。

本稿では、海外金融機関において、一般消費者のライフスタイルや価値観をより深く反映し、特定の顧客セグメントにフォーカスして金融サービスを提供している事例を複数ご紹介し、金融サービスの新潮流を論じたいと考えます。

1.生活に密着した金融サービスの実現を掲げるCommonwealth Bank
(オーストラリア)

1.1 Vision for 2013 ‐ 生活に密着した近未来の金融サービス

オーストラリアの大手金融機関であるCommonwealth Bankでは、一人ひとりの生活に密着した新たな金融サービスの実現を目指しています。同行では、彼らが目指す将来の銀行サービスを“Vision for 2013”として2010年にYouTubeに動画を公開しており、反響を呼んでいます。<出典>

出典:Commonwealth Bank YouTube公式サイトより
https://www.youtube.com/watch?v=pTv2tMenhxA

YouTube上の動画をご覧いただくと、2013年という時代設定ながら、遠い将来の出来事をイメージしているように感じられます。しかしながら、Commonwealth Bankでは、こうした新たな銀行サービスの実現に向けた取り組みを既に行っており、一部は最新デバイスを用いた顧客本位のアプリケーションとして実用化されています。また、こうした取り組みを支えるために、利用者参加型の企画検討プロセスを立ち上げています。

1.2 Property Guide & Kaching ‐ 顧客本位の新アプリケーション

Commonwealth Bankが提供する顧客本位のアプリケーションに、“Property Guide”があります。このiPhoneアプリケーションでは、現地で売出し中の不動産をiPhoneのカメラ機能により画面に表示させると、その売り出し価格と詳細情報を表示し、不動産価格を基にその場で住宅ローンの返済シミュレーションが行えます。

これは、現実環境にコンピュータによる情報を付加するAR(Argumented Reality:拡張現実)と呼ばれる技術を用いたもので、GPS機能で不動産の位置を特定して該当する価格情報を呼び出し、iPhoneの画面上に表示させています。価格情報は、不動産情報会社から提供され、オーストラリア全土の実に95%の不動産が対象となっています。<図1>

PropertyGuide

<図1> Property Guide
出典:Commonwealth Bank Webサイトより
http://www.commbank.com.au/personal/home-loans/i-phone-app/

このほか、同行が提供するもう一つの特徴的なアプリケーションに、“Kaching”があります。同アプリケーションは、日常のあらゆる決済シーンでCommonwealth Bankを活用してもらうことを目的に2011年より提供されています。Kachingでは、顧客がCommonwealth Bankで利用している全ての口座情報が一覧で確認できるほか、Facebook上の友達に対して送金する機能を備えています。加えて、国際標準の無線通信規格であるNFCにも対応し、iPhoneをNFCに対応させる専用機器を装着することで、日本のおサイフケータイのようにiPhoneをお店の読み取り端末にかざすだけで決済が可能になります。<図2>

Kaching

<図2> Kaching
出典:Commonwealth Bank Webサイトより
http://www.commbank.com.au/mobile/commbank-kaching/

1.3 IdeaBank & My NetBank Lab ‐ 新たな金融サービスに向けた企画プロセス

このように、Commonwealth Bankのアプリケーションは利用者が日常的に金融サービスを利用することを意識して開発されていることがわかります。こうした利用者に密着した金融サービスを生み出す上で、強力な基盤となるのが利用者参加型の企画検討プロセスです。

Commonwealth Bankでは、商品やサービスの企画・開発プロセスにおいて、利用者の声を存分に反映する仕組みを構築しており、具体的には、利用者からの“声”を“IdeaBank”と呼ばれるオンラインフォーラムで収集し、更に立ち上げ前の商品やサービスを“My NetBank Lab”と呼ばれるβサービス試行サイトに公開して再び利用者の声を収集しています。

次世代の銀行サービスに対するアイデアを募るIdeaBankは、同行に口座を有している・いないに関わらず、広く一般の人々に開かれたオンラインフォーラムであり、2011年12月に開設されました。開設当初には、未来の銀行サービスに対する優れたアイデアを募集するコンテストが開催され、利用者からの投票や銀行の企画チームの意見により本年の3月には最優秀アイデアが選出されました。現在、Commonwealth Bankの企画チームでは、このアイデアを基にした新たな金融サービスの検討を行っています。<図3>

IdeaBank

<図3> IdeaBank
出典: IdeaBank Webサイトより
http://ideas.commbank.com.au

IdeaBankのように、オンラインで一般の利用者からサービスに対する要望を募集し、それを今後の企画・開発へとつなげる取り組みとしては、Dellの事例が有名です。世界的なPCメーカーであるDellは、Idea Stormと呼ばれるオンラインフォーラムを立ち上げ、Dellの製品に対して改善してほしい点や、今後、実装してほしい新機能などのアイデアを募集しています。こうした手法は、金融機関にとっては珍しい手法ですが、Commonwealth Bankの取組みの成否によっては、今後採用する金融機関が増えてくるかもしれません。

こうした企画・開発プロセスでの取り組みに加え、Commonwealth Bankではサービス立ち上げ前の検証段階においても利用者の意見を取り入れています。同行が開設するMy NetBank Labには、正式立ち上げ前の商品やサービスが公開されており、今後は、IdeaBankのアイデアより企画化されたものも公開される予定です。My NetBank Labでは、一部のインターネットバンキング会員がテスターとなり、それらサービスを利用します。Commonwealth Bankでは、テスターにより得られたフィードバックを基にサービスを改良し、新サービスの正式立ち上げへとつなげます。同行では、企画と企画の検証段階で利用者の意見を取り入れ、PDCAサイクルをまわすことで生活に密着した新金融サービスを生み出しています。

(つづく)
(マネジングコンサルタント 隈本 正寛)
(シニアコンサルタント 松原 義明)

関連リンク

顧客セグメントにフォーカスした金融サービスの新潮流(2/3)

顧客セグメントにフォーカスした金融サービスの新潮流(3/3)