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【インタビュー】
ワークスタイル変革で新たなイノベーションを

ICT(情報通信技術)の活用や人事制度の見直しによる働き方改革を進める会社が増えている。

業界を越えた参入や人材獲得競争で経営環境が厳しくなり、働いた時間ではなく質の高さで評価される働き方が求められるようになった。さらに社内外のコミュニケーション・コラボレーションを活性化し、新たな視点で事業を創造し、多様かつ柔軟な働き方ができる職場が必要とされるようになった。「同質」ではなく、「個別」で「多様」なプロジェクトに対応しなくてはならない時代になったことが背景にある。

富士通総研の根本高広シニアマネジングコンサルタント(以下、SMC)によると、社会や自社の業態の変化とともにワークスタイルも変わるという。

例えば、プロジェクトが立ち上がると、その都度、社内から適した人材を集めて仕事をする会社がある。こういう会社では、人とは違う能力を持つ社員や、個性が際立つ人材が必要とされる。

こういったワークスタイル変革や求められる人材の変化は、元々はホワイトカラーの生産性向上やコミュニケーションツールなどのICT活用といった分野で始まった。

ICTの活用で社内のコミュニケーションをスムーズにする。会議の代わりにグループウェアを活用して無駄を省く。離れた場所とはネットを使って会議し、生産性を上げる。確かにこれも大切な視点だが、それだけではない。

富士通総研 コンサルティング本部 産業グループ シニアマネジングコンサルタント 根本 高広の写真

富士通総研 コンサルティング本部 産業グループ
シニアマネジングコンサルタント
根本高広
企業のICTガバナンスやコミュニケーション改革のコンサルティングに従事した後、デザインアプローチによるワークスタイル変革を中心にお客様の経営課題の解決を支援。

富士通社員約16万人の働き方改革実践

実は、日本での「ワークスタイル変革」は、いち早く富士通グループ全体約500社で、社員約16万人を対象にした大規模な取り組みが行われていた。

まず、多様な働き方ができるようにするため、コミュニケーション基盤を整備した。仮想デスクトップ環境を整え、社外にいても、デバイスが変わっても、セキュアに仕事が続けられる環境を構築した。もちろんワークスタイル変革に伴う制度・ルール(在宅勤務制度、人事評価など)も変更、同時に社員の意識改革にも取り組んだ。

社内SNSにも力を入れ、社員同士、あるいは上司と部下が簡単に情報を共有できる仕組みを作り上げた。オフラインでは決して繋がらなかった社員が、この仕組みによって国や地域、業種や組織を超えて連絡を取り合うようになった。情報の共有だけでなく、ICTによるコミュニケーションが、新たな発想を生むきっかけになる可能性があるのだ。

富士通総研はその時の経験から詳細なリファレンスを作成。このナレッジを基に各企業の働き方改革のコンサルティングを行っている。既にいくつもの企業がチャレンジし、成果を上げている。

政府による「働き方改革」

政府は働き方改革という取り組みを始めた。安倍首相は「一億総活躍社会」というスローガンを掲げ、2016年9月、内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設置した。

「一億総活躍社会」というと、なんとなく元気な感じがするが、背景は深刻だ。簡潔に説明すると「日本は人口減少社会。労働人口も激減する。今の国力を低下させないためには、働き手の確保が命題になる。今は働いていない女性や高齢者にも働いてもらいたい。2人で行っていた仕事を1人でできるようにし、労働生産性を高める必要がある」という考えだ。

未来の日本の労働力がどのくらい減るかというと、例えば総務省の調査では、団塊ジュニアが労働力として加わった頃の1997年、生産年齢人口(15〜64歳)は8699万人だった。その後下がり続け2016年は7665万人になった。19年で実に1034万人も減ったことになる。

さらに恐ろしい推計もある。

国立社会保障・人口問題研究所によると生産年齢人口は2040年には5978万人、2060年には4793万人になるという(長期の合計特殊出生率が1.44の場合)。この推計を信用すると、近い将来、働く人がこれまでのほぼ半分になる時代がやってくる。確かに、このままでは国力は低下するばかり。今のような社会を維持していけるのか不安にならざるを得ない。「一億総活躍社会」のような、労働力が低下しないモデルを考える必要がある。しかも可及的速やかに……。

企業が改革を進める理由

政府だけではない。それぞれの会社にも働き方改革を今進めなければならない深刻な理由がある。

1つ目は労働環境の改善。長時間労働は生産性を低下させる。

さらに、長時間労働が常態化している会社は将来、働き場所として選ばれなくなる可能性が高い。ただでさえ生産年齢人口が減少する社会だ。長時間労働の会社は新卒の採用が困難になり、下手をすると人材倒産ということも考えられる。

2つ目は有能な人材の確保。子育てをしながら働くワーキングマザーが増加したことで、働き方も多様化した。既にフレックス制やテレワーク勤務などを取り入れて人材を確保している会社もある。「仕事も家庭も」を実現するためには、ワークスタイルの変革は避けて通れない道だ。

政府と企業、共に待ったなしのワークスタイルの変革。ところが、実態はというと「やってみたものの効果が見えない、実感できない」という会社は少なくないようだ。

なぜなのか?

根本SMCは「働き方改革を動かす原動力は、会社側の力と社員側の力の2つがある」と話す。これまで見てきた背景は政府や会社の事情で、社員が考えている改革とは必ずしもマッチングしていないのではないか、とも。

これまでに40社以上の企業の変革を支援した経験では「会社目線と社員目線の2つの変革があり、その2つを上手く融合し合意形成する手順を探るのに苦労した」と根本SMC。業界他社の事例や経営層の考えも取り込みつつ、現場起点で発想した将来像を経営層に承認してもらうことが鍵となる。経験した者の強みである。

特に重要なのが社員の目線だ。

実際に社員を集めて自由討論をすると「会議が多い」や「人手が足りなく、残業が多い」「職場での情報の共有が難しい」など、日頃の不満を述べる会になりがちだ。もちろん、その不満の原因を1つ1つ取り除いて職場を改善し、改革を進める方法もないではない。しかし、ワークスタイルの変革は未来の職場の創造でもある。

まずビジョンを作り、効果の見える化を

「ワークスタイルの変革を進めるためには、実現可能性を踏まえつつ、共通の未来を描くことが大切」と根本SMC。具体的には、会社を良くしたいと考える、職種・年齢・性別が異なる社員を集め「自分が働く上での価値観は何か、自分が働きたいと思える職場はどんな場所か」を目標に、ありたい働き方を考えるワークショップを開く。ここで特に大切な点は、違う部門の人たちとのコミュニケーションを大切にすること、働きやすい職場を目に見える形でデザインすることの2点だ。

富士通総研が提唱するワークショップでは、お客様との共創で真の課題やありたい姿を形にしていく。集まった社員が、理想とする職場の様子を写真や絵で持ち寄り、そこから例えば「セキュアなモバイルワーク」「オープンコミュニケーション」「効率的な会議」などのキーワードを抽出する。このキーワードから理想とする職場を作り上げていく。「セキュアなモバイルワーク」なら仮想デスクトップ環境、「オープンコミュニケーション」なら社内SNSの活用など、キーワードを基に1つ1つ具体化していく。

ビジョン策定で大切なもう1点はデザイン思考。目に見える形で自分たちが働きたい職場を提示することだ。会社には少なからず懐疑派がいる。ワークショップから導かれたビジョンを、全ての社員に共有・共感してもらわないと改革は進まない。特に、経営層にコミットしてもらわないと改革自体が止まってしまう。

その時、重要なポイントが「改革効果の見える化」だ。根本SMCは「富士通総研では、ビジョンを実現するための施策を実行することで何がどう良くなるのかを詳細化し、その想定効果を定量的に提示することに力点を置いているので、当然、施策実行後のモニタリングも必要です」と語る。

改革の力は社員側と会社側の2つがある、と先に述べた。社員側には働きやすさという視点が、会社側には生産性の向上という視点がある。そのため、描いたビジョンがうまく噛み合わないことがある。特に、実行計画を作成し、予算化する段階で実現できないことがあるかもしれない。

しかしワークスタイル変革は目先の生産性を向上させるだけのチャレンジではない。子供を育てながら、あるいは介護の親を抱えながらテレワークで働ける職場。端末の機種を選ばず、いつでも、世界中のどこからでもシステムに接続でき仕事ができる環境。社内SNSで他の職場の社員や外国にいる社員とも議論し、そのおかげで新しいビジネスモデルができたと笑顔で言える会社を作るためのチャレンジでもある。

根本SMCは「ワークスタイル変革は、新しいイノベーションを起こす組織づくり、人づくりの活動です。具体的なプランが不透明でも、まずはご相談ください」と話す。

関連リンク

デザイン思考を活用したワークスタイル変革ビジョン策定 (618KB)

ワークスタイル変革ルール策定 (273KB)