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  4. フォーカス「次の100年を見据えたイノベーションマネジメント―ライオンイノベーションラボの取り組みから―」(後)

フォーカス「今後のデータ利活用ビジネスの展望」

フォーカス「次の100年を見据えたイノベーションマネジメント―ライオンイノベーションラボの取り組みから―」(後)

2018年にイノベーションラボを設立し、新規事業創造に向けてユニークな活動を推進されているライオン株式会社様。
前編では、目指す方向性や自社の事業領域を拡げるためのマネジメントのあり方について伺う。後編では、外部企業との連携ポイントや事業開発の意思決定、さらには新規事業そのものに取り組む原動力について焦点を当てる。

2019年9月9日

InnovationManagement-top

ライオン株式会社様は2018年にイノベーションラボを設立し、新規事業創造に向けた活動を推進されています。表情筋にアプローチする新美容機器VISOURIREOpen a new windowはクラウドファンディングで392%を達成し、口臭リスクを判定するアプリ「RePEROOpen a new window」はビジネス分野向けの新サービスとしてローンチするなど成果を上げられています。

これらの取り組みについて、イノベーションマネジメントという視点から、イノベーションラボ宇野所長、藤村副主席研究員にお話を伺いました。対談は、2019年7月にオープンし、ライオン様も運営に携わるpoint 0 marunouchiOpen a new window注1)で行われました。進行は、富士通総研(以下、FRI)の黒木チーフシニアコンサルタントです。

4. 外部連携の鍵は目標の共有と、Give&takeを続けること

【黒木】
外部企業との連携も多いようにお見受けします。オープンイノベーションや共創という言葉こそ浸透してきたように思いますが、文化や考え方の違いもあったり、要件を決めて発注する経験しかなかったりするので、思ったようにうまくいかないということがあると思います。その点で何かお感じになることはありますか?

【宇野】
一昨年の末にシリコンバレーに行きました。そのとき日本企業の失敗やダメなところ、現地のベンチャーからどう見られているかを聞かされて、いま言われたような受発注の関係ばかりでカッコ悪いと思いました。ただ、それを避けるために具体的にどうやればいいのかというのは、そのときはわからなかったのです。しかし、まずはチームを作って一緒に進めていくと、同じ目標を共有できるかどうかが大事だと気がつきました。そこは社外でも社内の他部署でも同じです。自分のチームになれれば面倒があっても乗り越えられると思っています。

【黒木】
同じ時間と空間を過ごしていく中で、会社の枠を越えて「これは自分のチームだ!」と思えることは素敵なことですね。

【藤村】
Possiのケースでは、京セラさんがソニーさんのSSAP(Sony Startup Acceleration Program)を使って「嫌がる子どもの歯磨きを変える歯ブラシ」というアイデアが生まれました。それに対して我々が技術提供だけでなく、子供の歯磨きシーンのペインポイント明確化やコミュニケーションデザインにも入ったので、京セラさん、我々の事業、ソニーさんの取り組み、各々Winになりました。こういうケースが今後求められると思います。結局のところ、経験して繰り返していくしかないと思っています。

Possiメイン

京セラとライオンは、ソニーが展開するスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラム「Sony Startup Acceleration Program」を通じて、子ども向け仕上げ磨き専用ハブラシ「Possi(ポッシ)」Open a new windowを開発。クラウドファンディングサイト「First Flight」にて、事業化に向けた支援募集を行っている。

【黒木】
頭では大事だと思っていても、実際にやってみないことには本当の意味では理解できないものがあるということですね。

【藤村】
はい、Giveを繰り返してTakeできる真の意味でのオープンイノベーションは、続けなければわからないことがあります。例えば、自分たちがサポートに回るケースもやってみるべきだと考えています。Curio Schoolさんが主催するMono-Coto Innovationという中高生向けの取り組みがあります。中高生が考えたアイデアを、企業が一緒になって実現を目指すのですが、若い社員にとってはUX(User Experience)の考え方を教えながら身につける場になります。加えて、ここでの狙いは中高生のテーマを受ける側に立ったときの経験を積むこともあります。彼らの想いを企業としてどうサポートするかは、プレーヤーがスタートアップや大学生や企業に変わっても活かされると思っています。

5.行動量と判断の質を高める、議論と評価の場のデザイン

【黒木】
どうにもこうにも上手くいかなくなったらやめると、口で言うのは簡単なのですが、いざプロジェクトを止めるべきかどうかとなったときに、現場のメンバーが決断しきれずにズルズルと続けてしまい、結果プロジェクトがゾンビ化するケースがあります。勇気をもってプロジェクトを止め、その経験を学びに変えるということが必要になると思いますが、何か工夫はありますか?

【宇野】
これはもう本当に難しいです。進めば進むほどやめられなくなります。どういう仕組みでやめるかについては、まだ確立できてはいません。始まったばかりだと、メンバーの熱量が下がり自然消滅ということもありますが、ある程度進んだときには難しいので、期限を切って何らかの成果や次のステージに進める材料を評価して次に移ろうというのを試行している段階です。

【黒木】
期限を明確に区切るのは1つの手ですね。評価とはどのようなものでしょうか?

【宇野】
先月、書籍「スタートアップウェイ」に書かれている「成長委員会」を作りました。リソースの変更が必要になったときにエントリーして、このテーマはここまで進んだから、予算をつけてプロトタイプを作りたいとか、調査をしたいとか、人数を増やしたいといった判断をする仕組みで、メンバーと合意が得られない場合はやり直し、それがダメで次の段階に行けなければやめる、というのを取り組んでいます。

【藤村】
今までにない技術を使ったアイデアだと、モノづくりを先にやりたいという場合もあるのでケースバイケースですが、ビジネスの検証のために必要と判断できるならOK、そうでないならNGというのが成長委員会のジャッジポイントです。例えば、プロトタイピングはビジネス検証のために実施するのだから、1年後に1件でもお客様のご支持をいただくこと、できなければテーマ自体を見直すというルールがあってもいいと議論しています。現状は3~4か月ペースで見直しをかけていますが、サイクルを早くして1か月を1週間に、1週間を1日に、10倍のスピードで見直しをする必要性を感じています。

【黒木】
行動の量、判断の質をいかに上げていくかが重要になりますね。決断する場ということですが、検討をより深める場というのは設けられていますか?

【宇野】
以前は月1回、1か月何をやったかプレゼンして、質問するという「報告会」をやっていましたが、テーマが多いと1つにかけられる時間が少なかったため、「相談会」という名前にして、皆から意見を聞きたい、議論したいという案件に絞って月1回出してもらうやり方に変えました。

【藤村】
相談会には「困っているので助けて」と来るので、こちらも前のめりで聞いて、失敗も成功も含めて事例を提示してあげて、何をやるかは彼らに選ばせるという、報告ではなく推進のための会議にしようとしています。事業会社でウォーターフォール的にやると、会議で約束したことは次の会議で前提を変えられませんが、報告した翌日に別の意見が出て変えたと言える状態にした方が健全なので、テーマオーナーが自由に進められる環境を用意するのがポイントです。

lion co-working

ライオンも参画するpoint 0は、新しいオープンイノベーションの形を生み出すこと、空間とそこにいる人によって形成される様々な「場」を再定義する起点となることを目指している。

【黒木】
議論する場と、判断・評価する場を分けるわけですね。うまくいかなかったものを組織の学びに変えるという点ではどうでしょうか?

【藤村】
そもそもやめる議論をしていること自体が健全だと思っています。学びに変えるという点では、やめたものを失敗事例として共有しても、聞いている側からすると自分はそうならないと思いがちです。その意味では、自分事になったとき初めて失敗ケースが役に立ちます。そのため、「我々が覚えている中では、以前のケースでこういう結論を出してこうなった」といった感じで、当事者を連れてきてチームで議論していけば失敗ケースが役に立つと思っています。

6. イノベーションへの駆動力は個人のユニークな原体験

【黒木】
私の印象なのですが、お二人からはライオン愛をすごく感じるんですよね。

【藤村】
(笑)それよく言われます。なんでなんだろう、醸し出しているんですかね?

【黒木】
よく言われておられるのですね!最後にお聞きしたいことがあります。会社の上層部からイノベーションの部署を作って、それはこんなビジョン、ミッションがある、ということも大事だと思うのですが、会社の業務指示だけでは成し遂げられないような気がしています。それだけではなくて、メンバー一人ひとりが一個人として本当にやりたいことは何なのかを自問自答し、向き合うことも大事ではないかなと思っています。お二方からは「自分がやらねばならぬ」というオーラを感じています。一個人として今回の取り組みの駆動力ともいうべき原体験は何かありますでしょうか?

【藤村】
私は小学生からバレーボールをやっていて、当時はライオンがスポンサーをしていたライオンカップという大会を目指していました。その頃の刷り込みもあって、就職するときも自然とこの会社に来た感じです。イノベーションラボを立ち上げる前には改めて社史を読んで、創業者はいくつも事業を失敗して場所とテーマを変えて今の会社の礎を作ったという内容から、まさにイノベーターだと実感しました。今では、先人たちはこう考えて会社を作ったのだから、今の事業ドメインを広げても構わないじゃないかと、創造期のストーリーをなずらえて考えています。ライオンの創業200年になる、今から72年後でも皆から「いいね」と言われる会社になるにはどうすべきかを考えて、今から種を植えておこうと。その実現は曾孫くらいに託すことになるので、どんな時代になるかわからないですが、その可能性を広げるための仕事をしています。

【宇野】
私は新しいことをするのが大好きなんです。バックグラウンドで大きいのはラグビーですね。子供の頃から皆がやっているものはやりたくなくて、中高一貫の高校の先輩がラグビー部を作ったとき、中学でもラグビー部を作ることになり、そこに携わりました。新しいものを作ろうと思えば作れる、というのが原体験としてあります。入社してからはモノづくりがしたくて製品開発をする研究員になって、歯磨き剤を作る研究所で、そこでも新しいものを作ることを20年しました。さすがに20年やるとまた新しいものに飢えてきて…(笑)そしてまた、なぜか今までのキャリアの中では、新しいポジションを作るというときに僕がアサインされることが多くて、クリニカという商品があるのですが、会社で初めてブランドマネージャーというのが出来たときに初代のブランドマネージャーになる機会をいただきました。そういうことが3回くらいあって、結構そういう巡り合わせが多いと感じています。ここは新しいことしかやらないところなので、楽しくてしようがないです。

【黒木】
お二方ともまさに自分の生き方と今の活動がつながっていますね。

【藤村】
そういうのを自分に課して「やるんだ、やるんだ」と思い込んでいるだけかもしれませんけどね。

【宇野】
そう、本当はこれがやりたかったと意味づけしているだけかもしれません(笑)。

【黒木】
そういう思い込みも大事かもしれませんね。いずれにせよ、お二方なりのユニークな原体験があってのことだと感じました。本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

集合トリミング

対談者(敬称略、右から):

ライオン株式会社 研究開発本部 イノベーションラボ 副主席研究員 藤村 昌平
ライオン株式会社 研究開発本部 イノベーションラボ 所長 宇野 大介
株式会社富士通総研 コンサルティング本部 ビジネスデザイングループ 黒木 昭博

対談日:2019年7月17日
対談場所:point 0 marunouchi

注釈

  • (注1)
    point 0 marunouchi : 会員型コワーキングスペース『point 0 marunouchi(ポイントゼロ マルノウチ)。未来のオフィス空間づくりに向けた実証実験を2019年7月16日より開始。

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