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【インタビュー】
新しい挑戦が伴うデジタルビジネス創出

本来業務から遠く離れた新規事業を始める会社が増えている。背景には、不確実で、複雑で、あいまいな今の世の中がある。技術革新もどんどん進み、今、新しいものがすぐに古くなる。変化の激しい時代。商品寿命が極端に短くなった上、消費者のニーズも多様化している。デジタルビジネスはこれまでよりも事業立ち上げとピークまでの周期が極めて短く、終わりを迎えることも早い。

旧来型の事業サイクルとデジタルビジネス時代の事業サイクル
図1:デジタルビジネス時代の事業サイクルの特徴

デジタルビジネスにとって領域の異なるセグメントのサービスビジネスにいかにジャンプできるかがポイントであり、そこには凝り固まった成功要因は不要である。「既存組」からの圧力にうまく対処し、従来のやり方からいかにジャンプし、柔軟に変化し続けるかということに尽きる。デジタルビジネスの事業創出に求められるポイントについて語った。

富士通総研 久本 浩太郎の写真

富士通総研 コンサルティング本部 産業グループ
チーフシニアコンサルタント
久本浩太郎

新規事業のビジネスモデル設計、チャネル開拓、M&Aなど企画から事業化に至るコンサルティング業務に従事。マネジメント力(PMO)にも強みを有する。

デジタルビジネスのポイントは「新たな体験」

例えば、出版業界は雑誌が売れなくなって久しい。書籍の市場も縮小が続く。雑誌や書籍をデジタル化してスマホやタブレットで読んでもらったらどうか。そんなデジタルビジネスに取り組む出版社が相次ぐ。用紙が要らず、印刷代も在庫管理費も掛からない。製造原価が下がるので、儲かるかもしれない。そう思ったのだが、やってみると、これが案外難しい。

なぜ、うまくいかないのか?

富士通総研の久本浩太郎チーフシニアコンサルタント(以下、CSC)は「モノを作ろうとするから失敗するのです」と強調する。

日本はモノづくりで経済成長を遂げた国だが、いまや多くの技術がコモディティ化してしまっている。大切なのは新たな体験(サービス)をつくることによる差別化である。

全く新しいニーズを発見する

久本CSCは新規事業を始めるための最も大切な点は、まず「誰も気づいていないニーズを発見すること」と話す。

確かにニーズがなければ使う人も現れず、商売として成り立たない。先ほどの書籍のデジタル化で言えば「そもそもスマホやタブレットで雑誌や書籍を読みたいというニーズがあるのか」「あるとしたら、それはどういう場面か」ということだ。そこを明確にせず「書籍や雑誌のデジタル版」というモノ作りに走っても成功はおぼつかない、ということらしい。

久本CSCは視覚障害者向けのICT(情報通信技術)を利用したプロジェクトに参加したことがあった。その際、「実際に障害者の皆さんに協力してもらって、1日の過ごし方を追跡しました。いつ、どこの、どんな場面でどんな『コト』に困っているのかも徹底的にリサーチしました。本人や介護者、周囲の人々のインタビューや行動観察だけではありません。プロジェクトメンバーが同じ場面を疑似体験する手順さえ加えました。その結果、分かったことがたくさんありました」

そのうちの1つ。視覚障害者がスーパーやコンビニに入店して、欲しいものを買おうとした際、とても困っていることに気づいた。欲しいものがどこにあるのか、分からないのだ。

さらに、障害者は「助けてほしい」と思っている。しかし、その心の内を口に出しては言いづらい。

一方で、手伝いをしたいと思っている店員・一般人が多いことも分かった。ただ、いつ、どんなタイミングで声をかけたらいいのかが分からない。さらにレジ打ちなどの作業があり、ずっと横についていられない事情もあった。困っている「コト」の具体的な姿が浮かび上がってきたのだ。

いきなりモノを作ろうとはせずに、困っている「コト」を探す。そこに顧客のニーズが潜んでいるわけで、久本CSCはそこにこそ「新たなビジネスの種があるのではないか」と語る。

イノベーションで重要なチームとプロセス 異才をいかに巻き込むか

ここで大切なのがプロジェクトに参加する人の顔ぶれだ。新たな領域に挑戦するには体制もプロセスなども現状からの脱却が求められる。デジタルビジネスの2つのフェーズについて、そのポイントを語った。


図2:イノベーション時のチーミングの推移

  • 企画フェーズ(デザインとテクノロジーの融合)

    久本CSCが提案するのは、チームには必ず技術者とデザイナー、そして事業主体者としてのビジネスプロデューサーを入れるという原則だ。技術者は、サービスが技術的に可能かどうか判断するために必要で、一方、デザイナーはサービスの可視化に必要不可欠だという。ビジネス主体者は全体を束ね事業を起こすために、経営やパートナーなど対内外的に価値を訴求し、投資のための資金調達やパートナーや顧客をプロモーションとともに開拓することである。

    デザイナーの参画により、「コト」が視覚化され、評価点や改良点が見つけやすくなる。デザイナーによる可視化の結果、共感が一気に広がり得る。

    次に必要なのは「コト」を実現する技術である。「技術的に無理」は、よく耳にする言葉だが「モノが無い」からと言って断念していては、デジタルビジネス創出はいつまでたっても実現できない。モノが無いならモノを作る。自分たちでできないならば、パートナーを探す。技術が無いなら、持っている人のところへ行って、その機能を借りてくるか、あるいは活用させてもらう方法もある。今できなくても将来できるかもしれない。技術的にハードルが高くても、技術革新の時代だ。2年後、3年後には可能になっている可能性が高い。

  • 事業化フェーズ 外部パートナーを巧みに巻き込む

    「事業化フェーズ」では、実現可能なビジネスモデルを構築するために、自社内外で検討したアイデアに共感、参画してくれる新たなパートナーの巻き込みと深いエンゲージメントの構築が必要となる。ユーザーを含む関連外部パートナーとともに、これまでアイデアレベルであったサービスやビジネスを具現化し、実証実験や試行錯誤を通してパートナーとの関係性にサービスとマネタイズの循環を描くことが求められる。リアルなエコモデルへと変容させていくフェーズでもある。

    推進マネジメントに立つ者は、既存メンバーのマネジメントに加え、外部パートナーのソーシング、協働でビジネスを起こすためのアライアンス締結、ビジネスのスキーム構築など、役割の範囲拡大や変更に対して柔軟に対応していく必要がある。その上で、自社、パートナーの経営に資するパフォーマンスを発揮しなくてはならない。

イノベーションは一人ではできない

久本CSCが薦めるデジタルビジネス創出の要諦は、誰かが喜ぶ「コト」を見付け、諦めず、一緒にできる才能を集める。良いパートナーがどこかにいることを信じて一歩ずつ。イノベーションは一人ではできないのだ。しかし、時間は有限であり、定量、定性両方の価値を自社の経営、顧客、ユーザーに示し共感を得ながらサービスを構築することが重要である。

富士通総研にできること


図3:富士通総研が実践するデジタルビジネス開発

富士通総研ではお客様の新たな市場創造に向けた事業開発コンサルティングのご支援を実施します。雲を掴むような新たな市場開拓に向けて既成概念に囚われず定量・定性的な価値とそのロジック立てた根拠をもとに意思決定や推進で右往左往する現場の後押しを実施します。

ニーズと先端テクノロジーを掛け合わせて競争力と継続性の高いサービス設計を、デザイナーやエンジニア+αのパートナーを巻き込んで一気通貫で推進・ご支援します。


図4:デジタルビジネス推進プロセスと各要件例

ご支援例

  • デザイナー、技術者を含めた新たなデジタルビジネス市場に向けたビジネス創造支援
  • アジャイル開発によるプロトタイプ構築、実証実験支援
  • 経営、パートナーへの投資上申(ピッチ)支援
  • 市場分析による新規市場探索支援(ホワイトスペース探索)
  • ビジネスモデルの構築支援
  • パートナー開拓、顧客開拓に向けた支援

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