GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. 日本国内のデータ利活用に係る昨今の制度検討の状況

日本国内のデータ利活用に係る昨今の制度検討の状況

日本国内のデータ利活用に係る昨今の制度検討の状況

 

dataeconomy_03_top

1.はじめに

現在、世界的にパーソナルデータの利活用が注目を集めている。近年、欧米の動向に追随し、日本でもビッグデータやパーソナルデータの利活用の重要性が注目され、政策面での議論が盛んになっている。

これまで個人データはGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)と呼ばれる新興の巨大デジタル・プラットフォーマーをはじめとする一握りの事業者によって収集され占有されてきた。この状況に危機感を覚えた各国政府は、データを個人に還元して多くの事業者が効果的にデータを活用できる環境(データポータビリティ)を目指し、法制度の整備を進めている。

ここでは、データ利活用の起爆剤として期待されるデータポータビリティの日本における検討状況について整理する。

2.データ利活用を促進する国家戦略

【図1】Society5.0実現に向けたデータ利活用の方向性
dataeconomy_03_1

日本においてデータ利活用は成長戦略の1つとして位置づけられ、実現に向けた取り組みが各省庁で進められており(【図1】)、これらの取り組みをベースとして業種横断的な検討も進められている。

まず、「第5次科学技術基本計画」において提唱されたSociety5.0(超スマート社会)では、データは新しい価値の源泉と位置づけられた。Society5.0の実現に向けた成長戦略「未来投資戦略2017」では、データ利活用基盤の整備、制度整備の目標が掲げられており、これが日本国内でデータ利活用に対する期待が高まる背景となっている。

その他、経済産業省と総務省がデータ利活用について方向性を示している。経済産業省の「新産業構造ビジョン」では、Society5.0、Connected Industriesの実現に向けた横断的な課題の1つとして「ルールの高度化(データ)」を掲げ、2020年までに個人起点のデータ流通の実現を目指している。

また、同ビジョンにおいて情報銀行、PDS(Personal Data Store)等のデータ流通市場の構築については、戦略分野を実現する突破口プロジェクトと位置づけ、先進的なプロジェクトの創出支援やデータの取り扱いに関するルール整備を行うとされている。

パーソナルデータが注目される背景の1つに、IoT機器が増加するにつれて収集可能なデータが増加し続けていることが挙げられ、総務省では、「IoT総合戦略」を策定し、パーソナルデータのコントローラビリティの確保を目指す旨を記載している。

3.環境整備の基盤となる法律の施行

日本におけるデータ利活用の制度検討は直近2年程度で急速に進展している。特にデータの流通環境の基盤を整えるための法制度が相次いで施行されている。

2017年5月には2015年に改正された個人情報保護法が全面施行された。改正個人情報保護法は、個人情報、機微情報といった情報の定義の明確化を図り、データの利活用を促進するため、事前合意なく第三者提供が可能な匿名加工情報を定義した。本改正は、これらの情報を法律によって定義することにより、従来グレーゾーンと呼ばれた情報の領域を明確化し、データ利活用の促進を目指している。

2016年12月には官民の協働によりデータ利活用の環境整備を目指す“攻め”の法律である「官民データ活用推進基本法」が施行された。同法は、「官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し」、「安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現」を目的としている。この「官民データ活用推進基本法」に基づき「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(2017)が定められている。

2018年に更新された同計画では、2018年4月にデータ連携基盤の整備方針が策定され、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(第2期)の一環としてビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術推進委員会が組織され、データ連携基盤の構築が進められている。同委員会では、3年以内に産学官で分散して保有するデータを連携し、活用可能なビッグデータとして提供する分野間連携基盤を整備し、5年以内に本格稼働させ、20以上の実用化例を実現することを目標としている。

このように、日本では、「改正個人情報保護法」によるデータの定義の見直し、「官民データ活用推進基本法」に基づき実行されているデータ連携基盤整備事業により、データ利活用に向けた環境の整備が急速に進展している。

4.データ利活用の促進に向けた調査、検討

データ利活用の基盤となる環境整備と並行して、データの流通を促進するために事業者やデータ流通市場を規定する法制度の検討が進められている。

内閣府総合IT戦略室では、パーソナルデータの安全な流通、産業データの流通促進のため、2016年9月から「データ流通環境整備検討会」を開催し、同検討会に「AI・IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループ」を設置した。同ワーキンググループでは、PDS(Personal Data Store)、情報銀行(情報利用信用銀行)、データ取引市場という新たなデータ流通の仕組みについて集中的に検討が行われ、データ取引市場の定義が行われた。

内閣官房の検討結果を受け、2017年2月に総務省情報通信審議会情報通信政策部会IoT政策委員会基本戦略ワーキンググループの下に「データ取引市場等サブワーキンググループ(SWG)」が設置された。同SWGでは、情報信託機能(情報銀行が個人との契約に基づき、データ保有者に代わり第三者提供の可否を判断し提供まで行う)の実現に向けて一定の基準を満たした事業者を認定する制度を構築することが望ましいと結論づけた。

この結論に基づき、2017年11月より経済産業省と総務省では、「情報信託機能の認定スキームの在り方に関する検討会」が開催された。同検討会の検討結果に基づき2018年6月に情報信託の機能を担う事業者の認定基準の指針が発表されている。

さらに、情報銀行等を通じたデータの流通を拡大するため、2017年に経済産業省と総務省が「データポータビリティに関する調査検討会」を開催し、各国の制度やユースケースに関する調査を実施し、欧州等をモデルケースとした制度の検討を進めている。

2018年には、内閣官房が経済産業省、総務省等が実施してきた検討内容を取りまとめる「官民データ活用推進基本計画実行委員会(データ流通・活用ワーキンググループ)」を設置し、民間企業や各省庁による検討状況が共有されている。

このように、日本では、国家戦略の実現に向け、具体的な異業者の認証制度やデータ流通を促進するための制度検討が内閣府をはじめ各省庁で進められている状況にある。

5.業種別の制度検討

業種をまたぐ戦略検討、データ基盤の構築が進められている一方、各業種の単位でもデータ利活用による新たなビジネス機会を模索する動きが始まっている。

例えば、昨今、情報銀行、データ利活用に関する個別企業の活動が活発化している金融業界では、金融庁が所管する金融審議会金融制度スタディグループにおいて、データ利活用に関する検討が行われている。

金融業は従来から顧客の情報を分析し、信用を供与する等、情報の収集や加工を生業としてきた。国内では三菱UFJ信託銀行やみずほ銀行が情報銀行の取り組みを発表する等、データ利活用の実現に向けた取り組みが活発化している。2018年7月には全国銀行協会の会長が購買データ等を預かり民間企業に提供する情報銀行について業界横断的に取り組むべきとの発言を行った。

このような業界内の動向を受け、2018年9月25日に開催された金融審議会では、銀行や新興のネット企業の取り組みが紹介されたほか、事業者ヒアリングを行い、機能別、横断的な金融規制体系を目指すことが確認された。

6.おわりに

現在国内のデータ利活用に向けた制度検討は、データ利活用による産業育成を国家戦略と位置づけ、業種横断的な法制度の調査研究やデータ基盤整備事業が進められている。業種横断の制度検討では、一定の方向性が定められ、数年後を目指してシステム基盤の整備が行われる予定である。加えて昨今では、各企業のデータ利活用、情報銀行ビジネスの実現に向けた取り組みの活発化を受け、業種別の制度検討が開始されている。こうした戦略起点の業種横断の戦略・制度の検討、業種別の制度検討は、欧米の先進的な事例や制度検討の状況から大きな影響を受けている。欧米だけでなく、アジアでもデータ利活用に向けた法制度を整備する動きが拡大している状況から、今後、日本でも制度検討や各業種・業界における取り組みも、より一層加速することが見込まれる。

富士通総研では、諸外国の制度や他社動向等に関する調査・研究を行いつつ、経済産業省や総務省の検討を支援しており、今後もパーソナルデータの利活用の促進に向けた調査・研究、コンサルティングを実施していく。

石山大晃

本記事の執筆者

金融グループ シニアコンサルタント

石山 大晃(いしやま ひろあき)

 

2013年富士通総研入社。入社以来、金融商品・サービスの顧客動向調査に基づくチャネル、セールス、IT戦略に関するコンサルティングに従事。

コンサルティングのご相談・ご依頼はこちら

当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。

お客様総合窓口

入力フォーム

当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。