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データ利活用ビジネスの海外事例から見る
日本の進むべき方向性

 

 
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1.データ利活用ビジネスの海外事例の分類

 ここでは、世界各国のデータ利活用ビジネス事例について、日本におけるデータビジネス検討の参考例として、以下の3つの観点から紹介する。

  (1)個人データの取得・管理を行うサービス事例
  (2)本業である自社サービスのデータを活用する事例
  (3)国の制度として銀行間で口座情報の移管を行う事例



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【図1】データ利活用ビジネスの海外事例の観点

2.データ利活用ビジネスの海外事例の分類

 データ利活用ビジネスの検討で最も肝要なのは、データの取得および管理の方法である。ビジネスにあたってはグローバル展開が前提となるため、個人データの取り扱いについては、欧州で個人のデータプライバシー規制であるGDPR(General Data Protection Regulation)が適用されたこともあり、当然、セキュアな取得および管理方法が求められていく。こうした観点から、データの取得方法としてドイツの「Verimi」(注1)、データの管理方法として英国の「Digi.me」(注2)について紹介する。

2.1.GDPRに即したデータの取得:Verimi

サービス名 Verimi
所在地 ドイツ
サービス業者 Verimi
提供開始年 2018年

 ドイツでは、複数企業のサービスへログイン可能な共通ID・パスワードを提供する企業「Verimi」が登場している。生活者は「Verimi」の利用にあたり、ID・パスワードをマスターキーとして設定することで、「Verimi」と提携する企業のサービスにアクセスする際のID・パスワードを共通化し、アクセスに際して「Verimi」ボタンを押すだけでログインすることができるようになる。また、生活者はマスターキーの登録に際して、「Verimi」によるデータの取得や他社提供への同意等を登録する必要がある。「Verimi」はこの生活者の許諾に基づき、欧州におけるデータプライバシー規制であるGDPRに準拠した形で生活者情報を取得し、参加企業へ情報提供を行っている。「Verimi」はこのサービスの提供にあたり、生活者から利用料を得ておらず、提携企業から利用料を徴収している。2018年11月現在、自動車メーカーのダイムラーや保険会社アリアンツ、ドイツ銀行(注3)に加え、航空会社ルフトハンザや通信会社ドイツテレコム、ITセキュリティ会社ブンデスドルクレイ等、ドイツ内の多業種の大手企業10社が提携している。(注4)

2.2.セキュアなデータ管理:Digi.me

サービス名 Digi.me
所在地 英国
サービス業者 Digi.me
提供開始年 2009年

 イギリスで2009年に設立された企業「Digi.me」(https://digi.me/)は、生活者が自分のデバイス・クラウド等でデータを蓄積・管理する分散PDSサービスを提供している。このサービスは、生活者が利用するSNSサービス「Facebook」や財務管理サービス「Yodlee」、スマートウォッチ「Fitbit」等のデータを収集、保存するサービスとなっている。生活者はこのサービスにより、外部企業が所有する自身のデータを一元的に管理、閲覧できるほか、任意で企業に対しデータ共有を行うことができる。データ共有にあたっては、例えば金融に関するデータを共有した場合は、パーソナライズされた金融サービスの提案といった便益を受けることができる。

 また、データ収集にあたっては、すべてアプリ内ないしは一時的に生成するバーチャルクラウド内で実行し、データを「Digi.me」側ではなく、生活者が希望するクラウド(「Google Drive」や「Dropbox」等)に保存し、収集終了次第データをすべて削除する方式となっている。これにより「Digi.me」自体は消費者データの保持・閲覧をせず、セキュアなデータ収集・管理を実現している。

 「Digi.me」が提供する分散PDSサービスは、生活者のプライバシー意識が高く、自身のデータを自身でコントロールするニーズが強い欧州において、安全性を担保したうえで、データを分かりやすく管理・公開することが可能な点を訴求するサービスと言える。

3.本業である自社サービスのデータを活用する事例:Turbo

サービス名 Turbo
所在地 米国
サービス業者 Turbo
提供開始年 2018年

 日本では、個人の所得税については、当該個人を雇用する企業が年末調整を通じて納税するため、確定申告をする必要はない。しかし、米国では、原則として収入のある個人は、自身で確定申告書を作成し、IRS(米国内国歳入庁)および州の税務当局に毎年提出する必要がある。(注5)そのため、個人向け資産管理サービスに対するニーズが日本と比較して強い。こうした背景から、米国の生活者は自身の支出入等の金融・財務データを資産管理サービス等によって管理しており、それらのデータを利用したサービスも登場している。その一例として、米国の大手クラウド会計ソフト会社「Intuit」(https://www.intuit.com/)は、自社の確定申告ツール「TurboTax」のデータと、自社が2009年に買収した「Mint.com」(https://www.mint.com/)のPFM(注6)ツール「Mint」のデータを組み合わせ、個人の信用スコアリング(注7)等を行うサービス「Turbo」を提供している。

 「Turbo」は、個人の同意を得たうえで、納税申告書やクレジットレポート等へアクセスし、財務データを取得し、個人にとって分かりやすい形式に加工して、以下の情報を提供する。

「Turbo」が提供する情報

True Financial Profile クレジットスコアや返済負担率等を表示。また、それらの数値の原因や重要なポイント、同様の状況にある他者比較を表示。
Customized Advice and Insights 返済負担率やクレジットスコア改善に向けたアドバイスを提供。
Benchmarking 同様の状況にある他者とのベンチマークを提供。
24/7 Credit Monitoring 個人のクレジットレポートに変化や不審な動きがあった場合のアラート機能。

 また、「Mint」は、生活者が利用する銀行やカード、保険といった金融に関するデータを財務管理サービス「Yodlee」と連携することで収集、支出入の管理・分析といったPFM機能を提供している。加えて、「Mint」利用者である生活者個人から、データの外部事業者への提供が認可された場合に限り、金融商品の提案を実施するサービスも提供している。 生活者が持つ自身の金融・財務データの管理や、データ共有を通じた外部企業からの金融商品の提案、信用スコアリングといった付加価値を提供する「Intuit」(注8)は、米国特有の税制を背景としたサービスと言える。日本においても、税制上の相違はあるものの、消費者によるPFMサービス等の利用がより一般化した際には、同様のサービスが普及する可能性が考えられる。

4.国の制度として銀行間で口座情報の移管を行う事例:CASS

サービス名 CASS
所在地 英国
サービス業者 Bacs Payment Schemes
提供開始年 2013年

 英国では決済ネットワークを運営するBacs Payment Schemesが、銀行間で当座預金や Cash ISA(注9)の残高等を無料で移管するサービス「CASS(Current Account Switching Service)」を2013年より提供している(注10)。本サービスは、個人や小規模事業者が口座を移管する日を指定し、新たに利用を開始する銀行に申請することで、口座残高や定期的な入出金の情報等の口座情報を移管するというもの。当座預金の移管にあたっては、新口座の銀行は、顧客の「CASS」申請の承認後3営業日以内に、引落しや給与振込といった入出金情報の開示を旧口座の銀行に依頼する。また、旧口座から自動引き落としを行っていた企業に対する口座切替の連絡も、新口座の銀行が行う。ISAの移管にあたっては、旧口座の銀行は、新口座の銀行に対し、預金を電子振替するか、残高分の小切手を新口座の銀行に送金する。

 当該サービスは2013年のサービス開始以降、すでに400万人以上が利用しており、イギリスの生活者の約8割がサービスを認知、利用者アンケートでは9割以上がサービス内容に満足している等、普及・浸透している。また、イギリスでは、銀行口座の比較サイト(Money Advice Serviceやmoneysupermarket.com等)が存在するほか、デジタルバンキングに特化し、利便性を訴求するチャレンジャーバンク(Starling bankやMonzo、Revolut等)が登場しており、個人はより良いサービス、より良い条件の銀行へと移管するインセンティブが強いものと考えられる。「CASS」は生活者のニーズに対し、PFMのようなデータポータビリティだけでなく、口座自体を移管する「口座ポータビリティ」として訴求するサービスと考えられる。

5.海外事例を踏まえた考察

 海外におけるデータ利活用事例として、「Verimi」、「Digi.me」、「Turbo」、「CASS」を紹介した。これらの事例を踏まえると、日本では個人データの取得段階の方法論として「Verimi」のようなモデルが参考になる。日本の生活者はSNS等のアプリやインターネットブラウザーで提供されるサービス等、様々なサービスをオンラインで利用しているが、多くの場合、ログインID・パスワードが異なっている。そのため、これらのログインID・パスワードを共通化するサービスは、生活者の利便性という観点から訴求する価値がある。また、口座ポータビリティ「CASS」のようなサービスに対するニーズも考えられる。例えば、給与口座の指定や住宅ローンの借入時等に、銀行口座を新設する機会があるが、銀行口座の新設や旧口座の解約といった手続きが消費者にとって負担となる可能性があり、「CASS」のようなサービスがあれば、生活者は自身の口座情報の移管を快適に実行できる。また、将来的に日本で銀行サービスの差別化が進展した際には、「CASS」のような口座の移管に流動性を持たせるサービスの存在が不可欠となる。

 一方で、「Turbo」のようなサービスについては、税制の違いから日本では「Turbo」そのものは普及し難いと考えられる。前述したように、日本では生活者を雇用する企業が年末調整を通じて納税を行うため、被雇用者である消費者自身が確定申告を行う必要がない。したがって、税関連の資産管理サービスに対するニーズは米国と比較して低い。また、税関連以外の資産管理サービスに対するニーズについても、家計簿アプリの利用経験がある生活者は全体の1割程度(注11)に過ぎず、日本の消費者は金融・財務のデータをアプリ等で管理するインセンティブが低いと考えられる。

 こうしたことから、日本では、米国や欧州のように、データ管理や金融資産管理といったデータ利活用を直接の目的としたサービスは訴求しづらいと考えられる。そのため、例えば、生活者が利用する各社サービスのID・パスワードの共通化と、それに付随して企業による個人データ取得を行う「Verimi」のように、生活者の利便性を向上するサービスを主として提供し、そのプラスアルファとしてデータの利活用を行う仕組みであれば、日本でも訴求し得る可能性があると考える。

注釈

魚住直人

本記事の執筆者

金融グループ コンサルタント

魚住 直紀(うおずみ なおき)

 

2016年株式会社富士通総研入社。これまで、金融機関における技術活用をテーマに、国内外金融機関やFintech企業の動向調査、金融機関の事務効率化に向けた調査に従事。

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