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新規事業創造の第一歩―ユーザーが本当に欲しがるものを見つけるために現場で問いかけ解を探る―

AI×レジリエンス

AIの技術要素や活用目的は多岐にわたり、業種・職種を問わず適用が可能である。レジリエンス向上に対するAI活用という観点で活用事例を製造業中心に紹介する。
(シニアコンサルタント 佐藤 文孝)


掲載日:2019年11月11日

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概要

昨今、様々な分野でAIの名を冠したシステムやサービスが多く生まれている。
一口にAIと言っても、その技術要素や活用目的は多岐にわたり、業種・職種を問わず適用が可能である。

本稿では、レジリエンス向上に対するAI活用という観点でサイバーセキュリティ以外の活用事例と導入の際の注意点などを製造業中心に紹介する。

活用事例

昨今のAIの進化は目覚ましく、特定分野においては人間の認識や思考を超える振る舞いを達成している。「人工の知能」とまで呼ばせるその言葉の響きからは、今までのシステムにおける自動化や高速化にとどまらない、ルールベースのコンピュータ処理を超えるもの、つまりは人間の思考、判断を同等の精度で代替し、人間では気づかないような新たな価値を生み出すことが期待されるのではないだろうか。

レジリエンスという観点では、AIが現状のリスクを自ら判断、評価、対応したり、未知のリスクに気づいたりといったことに活用できるのではないかと期待される。

例えば、工場における生産品の品質予測や、生産設備の故障予兆などがわかりやすい取り組みではないだろうか。生産ラインが生み出す大規模な多次元データの処理はAIの得意分野と言えるであろう。シンプルな相関関係では発見できない、複雑に絡まりあった多次元データ間の関係性を学習していき、そこから品質の低下や故障の前兆を発見し、アラートをあげ、実際のトラブルを未然に防止する。現在ではエッジコンピューティングの技術の向上もあり、毎秒生まれるセンシングデータをネットワークに乗せることなく処理することが可能になってきている。

AIの別の強みの1つとして、センシングデータのような数値化されたデータではない言語や画像などの非構造化データに対する処理が挙げられる。画像や言語はそれを受け取った個人によって認識が一定ではなく、ルールベースの処理に組み込むのが難しいデータであったが、昨今のアルゴリズムでは、そのような特徴の定義が難しい非構造化データから最適な特徴量を含めて機械的に学習することが可能になってきている。これにより、画像認識は、単純なパターンマッチングによらない製品の異常検知や作業員の転倒検知などを高精度で実現する。言語データの活用事例で言えば、過去に起こったトラブルとその対処履歴を学習させることにより現在起こっているトラブルに類似した過去の対処事例を高精度に検索、参照することが可能になり、トラブルへの早期対処と対応品質の向上を実現する取り組みが多く行われている(専門分野別意味検索活用事例(注1))。さらにセンシングデータと対応履歴を紐づけることができれば、異常が起きた瞬間に対応策を提示し、機械が自動で適切な運転へと舵を切るということも可能である。

AI活用の課題

実際にAIを使ってリスク対策を行ううえでの注意点を以下に挙げる。

(1)データ品質の不足

コンピュータサイエンスの分野で有名な慣用句に「GIGO(Garbage In, Garbage Out)」という言葉がある。アウトプットの品質はインプットの品質によるという意味で使用されるが、これはAIの構築でもよく使われる。自動車の燃費性能の予測を行うために食べログの口コミデータを使用する必要はないであろうし、口コミデータをいくら分析したところで自動車の燃費予測はできないはずである。工場内の機器からは様々なセンサーデータが取得されるが、それらが何に対して有用なデータなのかを理解することは重要になる。具体例を挙げると、現在取得されているセンサーデータは製造品の品質を知るためのものなのか、製造機器の異常を知るためのものなのか、作業員の安全を知るためのものなのか、機器の稼働状況をモニターするためだけのものなのかなど、その活用目的は様々であり、活用ケースによって最適な情報というのは異なってくる。とりあえず、今取得できているデータがたくさんあるからやってみるという方針では、うまくいかない場合が多いことを認識し、必要に応じて意味のあるデータ取得の方針から検討する必要がある。

(2)異常系教師データの不足

特異な異常事態に対する予測では異常系教師データ不足が問題になる。現状のAIモデルで大きな成果を上げているモデルのほとんどは、「教師あり学習」という手法を用いている。この手法は、インプットデータと実際に予測や分類をしてほしい正解ラベルのペアを学習用データとして準備し、アウトプットをできるだけ正解ラベルに近づけていくという方法で学習を行っていく。この手法では教師データの量が非常に重要になる。

日々の品質変化のデータなどは様々なパターンが十分な量で蓄積されていることが多いが、大型製造装置の思わぬ故障停止などの重篤な事故は頻発するわけではないため、学習用の事例数として不十分であることが多い。しかし、そのような重篤なレアケースこそ、未然に防ぐ価値が高いというジレンマが存在する。

(3)説明可能性のトレードオフ

近年大きな話題になっているDeep Learningに代表されるように、そのアルゴリズムが複雑になればなるほど難しい問題に対応できる一方、アウトプットの説明可能性が失われていくという問題が存在する。十分な学習データが存在し、複雑なアルゴリズムを選択すれば、昨今のAIはおそらく高精度の予測を行ってくれるであろう。しかし、ある日突然、品質予測AIが製造品の品質劣化の予測アラートを出してきたとしても、なぜそうなったか、どう対処したらいいかを教えてくれなければ、作業者は混乱するだけである。予測問題だけ高精度に解けるようになったとしても、そこからどのように行動を起こすべきかについてはまた別の問題設定にするか、業務モデルで吸収することが必要になってくる。

解決策

適切で効果的なAI活用のためには、今ある環境の一部にAIを入れるというような考え方ではなく、そのパフォーマンスを最大限に発揮するためのデータ設計から業務モデルまでをトータルで設計することが必要である。

予測や予兆のために必要となる物理的に意味のあるデータは存在しているのか、そのようなデータが無いのであれば、どのように取得し、運用していくのかを検討する。現状で取得できているデータでトライしてみるのも1つの方針としては悪くはないが、最善の結果が得られるわけではないということは認識しておくべきである。

教師データに不足がある場合の解決策としては、様々な方針が考えられる。可能な問題設定は限られるが、教師データを人工的に増やす水増しや、データが豊富に存在する類似領域での学習結果を流用する転移学習、一部の教師データに教師無しデータを紐づける半教師あり学習などがあるが、どれも必ず効果を上げられるとは限らない。教師データが不足するケースでの異常検知系の処理方針は正常系の振る舞いを学習し、その正常パターンと外れたものを異常系として検出する(異常系を教師として使用しない)ものが現実的な運用方針となっていることが多い。

AIのアウトプットの説明可能性の問題はAI関連研究では古くから存在し、説明可能AI(XAI : Explainable AI)の開発は大きな研究テーマの1つである。現状、一部の限られた領域においては有効性が示されているものも存在するが(注2)、汎用的なものは存在せず、業務モデルとともに検討・設計する必要がある。説明可能性が失われると述べてきたが、AIのアルゴリズムの中にも変数の重要度等を評価できるものは存在するため、そのようなロジックを活用するか、あるいは、予測問題と要因分析問題を完全に分けて運用し、AIのアウトプットはあくまでも検査のトリガーとして使用し、外れることを見越した業務設計を行うことが必要になる。

おわりに

本稿では簡単ではあるが、製造現場を例にAI活用事例を紹介してきた。今話題のAIはデータが豊富に存在する限られた問題設定においては強力にその力を発揮するが、現実世界は必ずしもそのような環境にあるとは言えない場合が多い。今後の研究の発展による解決も期待されるが、現状は、まだ、人がAIに寄り添って共に助け合うことで課題を解決していく必要がある。これまで述べてきたように、それはデータサイエンティストのようにAIのアルゴリズムを知っているだけでなく、物理的対象に対する知識や業務、ビジネスへの理解も必要不可欠であり、全体を俯瞰した課題解決モデルの設計が肝要である。

富士通総研 佐藤 文孝の写真

執筆者プロフィール

株式会社富士通総研 ビジネスサイエンスグループ
シニアコンサルタント

佐藤 文孝(さとう ふみたか)

 

データサイエンティストの視点により、様々な課題をデータ分析で解決に導くAI活用のコンサルタント。

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