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  2. 令和元年の災害対応を振り返る(2)「中小企業強靱化法」に対応した事業継続力強化の取り組み

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【シリーズ】令和元年の災害対応を振り返る(2)

「中小企業強靱化法」に対応した事業継続力強化の取り組み

今年7月に中小企業強靱化法が施行されました。この法制度である「事業継続力強化計画」の認定は開始から約4か月で約4000社が認定され、認定数は急速に増加しています。そのような状況を踏まえ、今後の中小企業に求められる事業継続力強化の取り組みの方向性について整理します。

掲載日:2019年12月26日

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1. 中小企業強靱化法の施行(2019年7月16日)

今年の災害は、地震に加え、台風15号、19号等、大規模な自然災害が全国各地で頻発しました。こうした自然災害は、個々の企業の経営だけにとどまらず、地域経済やサプライチェーン全体にも大きな影響を及ぼす恐れがあり、日本企業の国際競争力の低下につながる可能性があります。そのような中、中小企業庁では、中小企業の自然災害に対する事前対策(防災・減災対策)を促進するため、第198回通常国会に「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律(以下、中小企業強靱化法という)」を提出し、今年7月16日に施行されました。

2.「事業継続力強化計画」の認定制度と中小企業庁の施策

この中小企業強靱化法では、防災・減災に取り組む中小企業がその取り組みを「事業継続力強化計画」(注1)としてとりまとめ、国(経済産業大臣)が認定する制度を創設しています。認定を受けた中小企業は、税制優遇や金融支援、補助金の加点などの支援が受けられます。

中小企業庁では、「事業継続力強化計画」の中小企業への普及のため、「事業継続力強化計画策定の手引き」の公開や、「事業継続力強化計画」策定支援事業、中小企業強靱化対策シンポジウム、「事業継続力強化計画」を指導する人材の育成を行っています。法律施行から約4か月で、3906社が認定を受け、爆発的なスピードで認定企業数を増やしています。

【表1】地域別認定件数一覧(令和元年11月末)
【表1】地域別認定件数一覧(令和元年11月末)
※中小企業庁ホームページよりFRI作成

3. 事業を継続する能力を目的とした「事業継続力強化計画」

このように認定企業数が増加する中、この中小企業強靱化法の目的を改めて確認したいと思います。今回認定する「事業継続力強化計画」の目的は、事業継続能力の獲得、つまり、大規模災害等の危機事象が発生した際に迅速に対応可能な組織対応能力の向上にあります。

国や自治体はこれまで事業継続計画(以下BCP)の策定率を災害対応の1指標としてきました。しかし、この指標だけでは、来年も発生するであろう「観測史上初」の危機事象に対応することに限界があります。

「事業継続力強化計画」では、事業継続能力の獲得に必要な以下の4つのポイントを重視しています。従来のBCPの策定プロセスである、重要業務や目標復旧時間、事業継続戦略等は、今回の「事業継続力強化計画」では含まず、初動対応手順や事前対策に着目しているため、短期間で作成することが可能です。中小企業にとっては、税制優遇や金融支援、補助金の加点を容易に得やすい制度と言えるでしょう。

【表2】「事業継続力強化計画」の策定ポイント

(1)ハザードマップ等を活用した自然災害リスクの把握
(2)安否確認や避難の実施方法など、発災時の初動対応手順の明確化
(3)人員確保、建物・設備の保護、資金繰り対策、情報保護に向けた事前対策の具体化
(4)訓練の実施など、事業継続力強化の実効性を確保するためのアクションプランの策定

※中小企業庁ホームページを一部修正

4.予測困難な危機事象に対応した訓練と継続的改善の重要性

しかしながら、この「事業継続力強化計画」の策定だけでは、予測困難な危機事象に対応可能な能力を獲得できるわけではありません。「事業継続力強化計画」に記載する訓練や計画の見直しに関わるアクションプランを計画的に実行する必要があります。

認定企業では、予測困難な様々なレベルの危機事象に対応可能であるか検証するための訓練を定期的に実施することが重要です。初動対応体制や行動プロセス、事業継続に関わる意思決定等において、「できないこと」、「より強化すべき点」を関係者で議論し、課題解決を定期的に実行することが必要です。

今後、「事業継続力強化計画」の認定を受けた企業は、大規模災害を想定した訓練と継続的改善が重要となります。この取り組みの実効性担保としては、外部の認証を取得することが1つの方策となります。例えば、内閣官房国土強靱化推進室が策定した国土強靱化貢献団体の認証に関するガイドラインに基づく「レジリエンス認証」(注2)が代表的でしょう。

【図1】「事業継続力強化計画」とレジリエンス認証の考え方
【図1】「事業継続力強化計画」とレジリエンス認証の考え方

5.「事業継続力強化計画」を、企業の競争力強化につなげる

「事業継続力強化計画」の策定や訓練による改善は、災害時の対応能力を高めることに加え、企業の製品やサービスの競争力を高めることが可能です。

企業には自社の製品やサービスを顧客に提供する「供給責任」があります。この「供給責任」を果たすためには、大規模災害等の脅威や、自社の経営リソース(人的リソース、建屋・設備、資金繰り等)の弱みを克服する必要があります。そのため、大規模災害によって「供給責任」が果たせない場合、自組織にどのような対応オプションがあるのか、改めて議論することが事業継続力の獲得に有効となります。

【表3】供給責任を果たすための対応オプション(例)

(1)自社の代替工場での生産、自社の代替要員による対応
(2)外部リソースの活用(代替工場、要員)
(3)同時被災しない競合他社のリソースの活用
(4)生産量の縮小、サービスレベルの変更
(5)不可抗力宣言(フォースマジュール)

特に中小企業では、自組織の経営リソースだけでは限界がありますので、地域の異業者連携や、同時被災しない同業他社連携等の仕組みの構築も重要です。例えば、取引先や物流企業、同時被災しない競合他社と災害時の対応を議論するなど、有事の備えを議論して、災害時の対応オプションを複数作ることが災害時の対応能力を高めます。また、災害時対応の議論は、新商品開発やコスト削減等の経営効率を高める施策も進めるきっかけになります。

大規模災害で被災することは誰もが目を向けたがりません。しかし、この「事業継続力強化計画」を作り、社内外の関係者と災害時のイメージングや対応オプション等について議論することは、災害時の対応だけでなく、利害関係者との共創環境の構築にもつながります。

災害事象は非常時ではあるものの、特別な対応プロセスではなく、平常時の業務の延長線上として考えるべきです。これらの議論を進めていけば、中小企業の経営課題とされている「事業継承」について、アイデアや考えを実現させることも可能となります。

6. 終わりに

今年は昨年に引き続き「観測史上初」の自然災害が頻発しました。企業は成長戦略を実現する1つの施策として、守りの取り組みも強化すべきですが、平常時の多忙さから後回しにする傾向があり、近年頻発する自然災害への対応が遅れています。

今年から開始した「事業継続力強化計画」の認定制度は、こういった企業の現状を改善するための仕組みであり、企業の成長戦略を確実に実現するための方策といっても過言ではありません。また、これらの取り組みは、企業の安全配慮義務にも対応すると考えます。

来年も発生する可能性の高い災害事象に対し、自社が被災、もしくは、重要な利害関係者が被災したとき、もし迅速な対応ができなければ、自社が長年築き上げた市場価値やブランド力の低下は避けられないでしょう。逆に、同業他社と比べ迅速に対応できたときのインパクトは計り知れないと思います。特に中小企業は、経営リソースが潤沢にあるわけではないので、組織的な能力を高めるためには、利害関係者との連携が重要な鍵になると思います。

そのためには、まず、社長や経営層に対し、事業継続力を高める必要性について理解を深めることが重要です。もし、経営者の意識が高まらない場合は、富士通総研の「事業継続セミナー」を受講することもお勧めします。そして、この「事業継続力強化計画」の認定をきっかけに、事業継続力を高める活動を短時間でもよいので進めていただければ幸いです。

注釈

大谷 茂男

本記事の執筆者

コンサルティング本部 ビジネスレジリエンスグループ
プリンシパルコンサルタント

大谷 茂男(おおたに しげお)

 

1998年富士通株式会社入社。2007年より株式会社富士通総研。主に製造業や流通業を対象にサプライチェーンマネジメントや調達改革等の業務改革コンサルティングに従事。東日本大震災以降は現組織にて事業継続マネジメントやサプライチェーン、中小企業強靱化等のレジリエンス強化のコンサルティング業務に従事。

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