薄膜LN素子のオンボード実装技術を開発

お知らせ

2025年3月10日
富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社

薄膜LN素子のオンボード実装技術を開発
~高性能かつ小型低コストな光コンポーネントの実現に向けて~

富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社(以下「当社」)は、高性能かつ小型低コストな次世代光コンポーネントの実現に向けたプラットフォーム技術として、高性能な薄膜LN変調器素子をPCB基板上に直接実装するオンボード実装技術を開発しました。本技術を800Gbps世代やそれ以降の光トランシーバや光デバイスに適用することで、これらの製品の低コスト化、低電力化、大容量化という3つの要件を同時に満足することが可能となります。

オンボード実装技術_図1

光素子のオンボード実装技術


【背景と概要】

生成AIやストリーミングサービスなどの普及によるインターネットトラフィックの増大を背景に、光ネットワークの広帯域化への要求は継続的に拡大しています。このようなネットワークに用いられる光トランシーバに対しては、大容量化と同時に小型低コスト化、低電力化が求められています。当社では、従来のバルクLN変調器に比べて高速・高効率動作を可能とする高性能な薄膜LN変調器素子の開発を進めてきました。今回、このような薄膜LN素子を光トランシーバなどに用いられるPCB基板上に直接実装するオンボード実装を開発し、量産技術として確立しました。本技術を適用することで、800Gbps世代の性能要求を満たし、かつ、小型低コストな光トランシーバや光デバイスが実現できます。

【本技術の特徴】

当社は、変調レート128Gbaudに対応した広帯域かつ低損失な薄膜LN(Thin Film LiNbO₃)変調器を世界に先駆けて開発しました。従来、このような光素子は、セラミックやステンレスなどの素材を用いて気密封止パッケージングをした上で光トランシーバに格納することが一般的でした(図1右)。このような実装形態は、光トランシーバの小型低コスト化や高速性能を実現する上での制約となっていました。

これに対して、今回当社は、このような高性能な薄膜LN光変調器を、光トランシーバ内部で一般的に用いられるPCB基板上に直接実装するオンボード実装技術を開発しました(図1左)。図に示すように、薄膜LN変調器素子に加え、受信側で用いるSiフォトニクス素子においては、温度制御素子(TEC)が不要であり、気密封止を用いない本オンボード実装技術を適用することが可能です。

今回開発した技術により、以下の効果が得られます。

1) 低コスト化:開発した技術を用いることで、コストアップの要因となる気密封止パッケージなどを用いずに、低コストなPCB基板上に直接実装することが可能となります。

2) 低電力化:化合物半導体の光素子では消費電力の大きいTECが必要であるのに対し、本技術を適用することでTECフリー化し、低電力化を可能としました。

3) 大容量化:さらに、光素子のパッケージ、及び、サイズが大きいTECを省くことで、ドライバやトランスインピーダンス増幅(TIA)素子、および信号処理のためのDSPなどの電子回路と光素子の間の高速な電気信号入出力において、BGA(Ball Grid Array)端子やフレキシブルケーブルなどを介さずに、PCB基板や高速伝送に適したパッケージ基板上での近接接合が可能となります。これにより、回路素子間の電気信号損失を従来の半分程度(130GHzにて5dB)に小さく抑えることができ、本技術を800Gbpsの次のより高速な1.6Tbps世代にも展開することが可能となります。

【商標について】

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

【関連リンク】

【当社のSDGsへの貢献について】

2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。

本件が貢献を目指す主なSDGs

SDGS_9  SDGS_12