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Japan

第05回 収穫を左右する重要な防カビ対策「傘紙かけ」

IoTを活用したワイン葡萄栽培の1年間を体験リポート ~美味しいワインができるまで~

2016年10月21日更新

IoTを活用したワインブドウ栽培の1年間を体験リポート ~美味しいワインができるまで~

富士通GP2020ワインファーム 活動スケジュール 剪定(せんてい)  誘引(ゆういん) 芽かき(めかき) 副梢(ふくしょう) 収穫(しゅうかく)

2016年7月に行われた「富士通GP2020ワインファーム」5回目の活動は、葡萄の房に雨粒除けの紙をかける作業「傘紙かけ」です。今回も奥野田ワイナリーの中村社長から「傘紙かけ」の目的や方法などの講義がありました。今年の気候の特長と葡萄に及ぼす影響を理解し、「精度が命」である傘紙かけの作業手順の説明を受け、畑に出て作業を行いました。

畑で活躍する納豆菌たち

イメージ 今年は暖冬で、葡萄畑にとって「都合の悪い菌」が多く越冬しました。これらの菌に対し、奥野田ワイナリーでは「化学薬剤」による防除をできるだけ少なくするために、納豆菌の一種を畑に生息させています。これは、納豆菌が持つ「納豆菌以外の菌を寄せ付けない」性質を活かした「生物農薬」です。微生物の研究は、中村社長の専門でもあります。

奥野田ワイナリーでは、富士通と共同開発したセンシングシステムの導入効果により、スタッフ一人ひとりが畑の今の状態やこれからの状態を、予測、イメージできるようになり、先手先手の対応が打てるようになりました。微生物が元気になるには、温度や湿度などに条件があります。畑にとって都合のよい菌、つまり納豆菌たちを最大限活躍させるタイミング、化学薬剤を撒くべきタイミングなどもわかるようになってきました。

梅雨明けを迎えるまでの畑の完成度で、今年のワインの善し悪しを占うことができるそうです。奥野田ワイナリーの畑は、葡萄が熟したり光合成をさせたりするために必要な葉の枚数が適切に確保され、心配された病気もなく健康な状態とのことです。化学系の農薬散布量を減らしても畑は健全で、「収穫が楽しみな生育状況です」と嬉しい報告がありました。

奥野田ワイナリーの挑戦

「傘紙かけ」は何のため?

イメージ 続いて、「傘紙かけ」の作業について説明がありました。傘紙かけは、雨粒に含まれるカビの胞子から葡萄を守るための作業です。雨粒があたって、その後その水分が蒸発すると、カビの胞子が葡萄の房の中に残って、秋雨前線の頃になると発芽します。つまり、カビが発生することで葡萄の品質を大きく損ねてしまうのです。これを避け、熟成して健全な果実を収穫することができるように、葡萄同士が重ならないように配慮しながら、1房1房に注意深く傘紙をかけていきます。

それにしても、雨よけならなぜ梅雨のもっと早い時期に行わないのか? という疑問がわいてきます。中村社長は、梅雨時に傘紙かけをしない理由として、傘紙は雨粒をよけることができるものの、葡萄の房周りの風通しを悪くしてしまうことを挙げました。湿度が高まれば病気の確率が高まるため、これを避ける必要があります。また、5~6月には化学薬剤による防除が効果的ですが、傘紙を早くにかけてしまうと効果が上がらなくなることも理由の一つだそうです。

なお、すべての葡萄に傘紙をかけるわけではありません。秋が深まってから収穫する、カベルネ・ソーヴィニヨンのみに行います。シャルドネやメルローの品種は収穫時期が早く、秋雨前線によるリスクを受けにくいからです。カベルネ・ソーヴィニヨンも傘紙かけするのは三分の二だけです。三分の一に傘紙かけをしないのは、不測の気候変化により、傘がない方が有利な場合も考えられるからです。

「傘紙かけ」は精度が重要!

「剪定」、「誘引」、「芽かき」と、ここまでの作業は難しい技術を要するもので、実際はスタッフの手を借りる場面も少なくありませんでした。一方、「傘紙かけ」は、作業自体はそれほど難しくありませんが、高い精度が求められます。うまくかけないと、房周りの湿度が上昇し、さらに雨粒もうまく除けられないなど、せっかくの傘紙が悪い方に作用しかねません。

傘紙をかけない場合は、化学防除の助けを借りてカビの発生を防ぎますが、できれば化学防除に頼らない方が、畑全体の状態を健全に保てます。「生物農薬」として活躍させている納豆菌は化学防除に弱く、都合の悪い菌を退治するために化学防除をすれば、畑を守る納豆菌にもダメージを与えてしまいます。傘紙をかけた畑では、納豆菌の健康状態を守れるように化学防除を減らすか、ほとんどなくします。中村社長の「傘紙かけの精度が収穫に大きく影響するため、手順をしっかり理解して慎重に作業を進めてほしい。」との言葉に、参加者の表情が引き締まりました。

「傘紙かけ」の手順とポイント

1. 傘紙を確認し、手元に置く

イメージ 傘紙は片面に蝋(ロウ)が塗られた約10cm四方の紙で、中央に切れ込みがあります。蝋が塗られたツルツルの面が葡萄の方、ザラザラの面が外を向くようにかけます。蝋が塗られた方を葡萄側にする理由は葡萄に傷を付けずに品質を保つこととのことです。紙は、ツルツルした面を上に向けて手元に置きます。

2. 切れ目を房の軸にかける

イメージ 上に伸びている葡萄の枝=新梢(しんしょう)から最初に出ている房の軸の部分に、紙の切れ目をかけます。ここでのポイントは、隙間から雨が入らないよう、切れ込みの奥までしっかりと軸を通すことです。

2房ある場合は、下の方の房からかけます。上からかけると、下が見えにくくなるからです。傘紙の数で房の数をカウントしているので、1房に2枚の紙をかけてしまうなど、間違ったかけ方にならないように注意します。

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3. 巻き付けてホチキスで留める

茎を通し中央まで引き込んだら、くるっと葡萄の房に傘をかけるように巻きつけ、上側の辺をホチキスで一箇所だけ留めます。ホチキス留めをする際、葡萄をぎゅっと押さえないように注意します。傘紙を少し上に持ち上げれば葡萄を押さなくて済みます。

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黙々と作業

イメージ いよいよ作業スタートです。
最初は1房1房、ゆっくり慎重に紙をかけていきます。要領がわかると次第に作業速度が上がってきました。変わりやすい山の天気を気にしながら、根気のいる作業は黙々と進み、13時頃にはその日に予定していた目標数をほぼクリアしました。
見事に傘紙がかかった葡萄畑を目にし、参加者の誰もが達成感に包まれ満面の笑みです。心地良い空腹感の中、お楽しみの試飲会&食事会へと移動し、美味しいワインとお料理に舌鼓を打ちました。
7月の暑い中、中腰での傘紙かけ作業は非常に辛く、来年は折り畳みの椅子を持参することをひっそりと思うのでした。

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9月にはいよいよお待ちかねの収穫です!
どんな葡萄に成長しているか今から楽しみです。

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