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第07回 電車3分遅れでお詫びアナウンスする国のPDCA呪縛 −PDCAにOODAを組み合わせて余裕を取り戻そう−

その経営企画の仕事は正しいか?〜新時代にふさわしい経営戦略のありかた〜(全10回)

田中公認会計士事務所所長
田中 靖浩 氏

2016年11月01日更新

電車3分遅れのアナウンス

「この電車は3分遅れで運行しております」電車・地下鉄のラッシュ時に、当たり前のように耳にするアナウンスです。
これを当たり前だと思ってはいけません。「3分遅れ」がアナウンスされる国など他にありません。他の国では遅れなどあるのが当然、むしろ電車は「ダイヤ通りに走らないのが普通」なのです。
私は昔、カナダの鉄道で「7時間遅れ」を経験したことがあります。駅近くの線路工事が遅れ、その工事を待つこと7時間。夜は更けるわ、腹が減るわでイライライライラ。やっと出発のそのとき、工事現場を通りすぎる車内の私たちに向かって、作業者たちが手を振ってきます。私は「笑ってる場合かよ」と怒り心頭でしたが、車内のカナダ人たちはみんな笑顔で手を振り返していました。なんとなく「負けた…」と敗北感を覚えた若き日の私・・・・そんなことはどうでもいいのです。
この「3分遅れアナウンス」の背後には「決められた時刻通りに運行せねばならない」という強いプレッシャーがあります。
それだけではありません。もうひとつ言うならば、こうした「決められた通りにやらねばならない」「やらないとお詫びや謝罪の対象になる」空気が、日本のビジネス界でますます強くなっているように思うのです。

「決められた通りにやりなさい」プレッシャー

「決められた通りにやらねばならない」プレッシャーは、ビジネス現場のあちこちに顔を出します。
まずはすべての部門に適用される「予算」。いまや月次の単位で「決められた通りに予算を達成したか」が厳しくチェックされます。また、近年導入が目立つ目標管理のもとでは、「決められた行動を取ったか」が、チェック対象とされます。
どうやって行動するかを予め定めておき、各人はそれに沿って行動する−このような計画−管理体制の根本にPDCA思考があります。
もともとモノづくり現場の品質管理から始まったPDCAは、生真面目で実直な日本人の気質向きだったようで、ビジネスのあらゆる現場に広がってきました。
PDCAは既存製品の品質向上、既存ビジネスの効率化、既存ダイヤの定刻運行など、「あまり環境が変わらない状況における、現場レベルの改善」には極めて大きな効果があります。

先が見えない環境では不向きなPDCA

しかし、PDCAは「この製品を作り続けるべきか」「いまのビジネスから撤退すべきか」「鉄道事業の根本的見直し」といった「先が見えない=経験のない問題」や「答えのない問題」については不向きなのです。
身近なところでは、たとえば「接客」。
どれだけ理想的な接客マニュアルをつくって対応しようと思っても、思わぬ行動をとるお客さまが必ずいます。そんな不慮の事態に「臨機応変に対応できる能力」までPDCAマニュアルでカバーするのは不可能。そこで米軍は「観察・方向付け」から臨機応変に対応するOODAループを用いたというわけです。
敵が明確なこれまでの消耗戦とは異なり、テロ・ゲリラ戦では新たな機動戦で戦うべき。そこではOODAループを用いて臨機応変に行動すべし−−そんな米軍の変化には、私たちも見習うべきところが多そうです。

PDCAとOODAの最適組み合わせを目指そう

たとえば工場で製品を作る製造業は、簡単には「製品の変更」ができません。そこでは綿密で詳細な計画のもとでPDCA的な生産計画・品質改善を行わねばなりません。
しかし人が行うサービス業の場合、相手やその場の状況に対応して、瞬時にサービスの内容を変更することができます。あくまで一般論ですが、製造業はPDCA向き、サービス業はOODA向きといえるでしょう。
また、たくさんの雇用者を誇る大企業では、どうしても規則やマニュアルが多くなりPDCA的に運営せざるをえません。しかし、少人数の中小企業では、社長のツルの一声で方針をOODA的に変えることができます。
PDCAとOODAは「どちらか一方」という対立的なものではありません。いいとこ取りで組み合わせることもできます。
私のクライアントであるレストランでは、接客の最低限をPDCA的なマニュアルで定め、「これだけはやらねばならない」サービスを明確にしています。ただ、それを超えた分、たとえば「どんなとき、どんなふうにお客さんに声を掛けるか」はスタッフのOODAにすべて任せています。
電車が3分遅れただけでお詫びするPDCA大国の日本。
わたしたちはもう少し「余裕」や「遊び」の部分を多くしても良いのではないかと思います。それを「個人の判断」に委ねてみることで、思わぬ発見やビジネスの可能性が見つかるかもしれません。OODAの導入で日本が明るくなればいいな、とはカナダ人に負けた私の希望的観測ではありますが。

著者プロフィール

田中 靖浩 氏

田中公認会計士事務所所長

田中 靖浩 氏

公認会計士、東京都立産業技術大学院大学 客員教授

1963年三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社を経て現職。中小企業向け経営コ ンサルティング、経営・会計セミナー講師、執筆、連載を行う一 方、落語家・講談師とのコラボイベントも手がける。 難解な会計・経営の理論を笑いを交えて解説する「笑いの取れる異色会計士」として活躍中。
主な著書に「良い値決め 悪い値決め」「米軍式 人を動かすマネジメント」「経営がみえる会計」「クイズで学ぶ孫子」(以上、日本 経済新聞出版社)「40歳からの名刺を捨てられる生き方」(講談社) ほか多数。最新刊は「値決めの心理作戦 儲かる一言 損する一言」(日本経済新聞 出版社より2017年3月発行)

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