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Japan

第03回 労働生産性向上のために、労働時間の短縮より重要なこととは【中編】

誰も言わない経営者が持つべき“働き方改革”の視点

株式会社ワイズエッジ
代表取締役  経営コンサルタント  清水 泰志 氏

2017年08月10日 更新

「働き方改革」における労使の認識のズレ

人口減少状況で劇的に労働生産性を上げることを目的として、「働き方」を考えるときに必要な視点は、「同じアウトプットを出すなら短時間で行う」という「効率化」ではありません。それは、「同じアウトップットをできるだけ少ない労働単価で出す」ことを目的として、非正規社員化を促進し、単価が安いことを良いことに長時間労働によってアウトプットを確保していたこれまでの考え方と何ら変わりがありません。重要なことは、アウトプットの質そのものを向上させることです。

しかし、「働き方改革」について経営者側のみならず、従業員側も本質からずれた認識を持っているために、両者の間で何を最重要課題とするかについてすれ違いが生じている事実があります。

日経新聞の調査によると、企業側が重要視している項目として、「長時間労働の是正」「女性の活用」「子育て・介護と仕事の両立支援」が上位を占める一方で、「賃上げ」や「非正規雇用の処遇改善」「終身雇用の見直し」は差し迫った課題とは認識されていません。

また「働き方改革」を実現するにあたり、政府に対する期待をあげてもらった結果、企業側の1位は「社会保障など女性や若者が活躍しやすい環境整備」、「長時間労働の是正」が僅差で続いているので、企業側の意識は一貫しています。

ところが、正社員があげた期待項目は「賃上げ」が4割を超えてダントツの1位でした。2割程度で2位となった「長時間労働の是正」を引き離し、目先の実入りを重視する姿勢がくっきり浮かんでいます。

このように労使の間で意識の違いが生じています。雇用する側は、生産労働人口の減少による人手不足を見越して、少しでも職場環境や労働環境を良くすることで魅力的な就労先であることをアピールしたいが本音がある一方で、働く側は、日本経済は最悪期を脱したと言われながら、一向に上がらない自身の収入を増やしたいことが本音なのです。

つまり、特に正社員の立場では、「長時間労働の是正」が行われるに越したことはないけれど、その結果「給料が横ばいのまま」とか「給料が下がる」ことに繋がるなら、歓迎していないことになります。

働き手にとって必要な真の「働き方改革」とは

「働く以上は、より高い給料を得たい」と望むことは自然なことですが、収入を増やす方法は、大きく分けて2つしかありません。1つは、働く時間を増やすことです。

1日8時間で十分な収入が得られないなら、先ずは残業をして、それでも足りなければ副業でもアルバイトでもするほかありません。しかし、1日は24時間しかないので、収入はいずれ頭打ちになります。 働き手の側から見ると、「時間をお金に換える」というこれまでの働き方が限界を迎えているという認識からスタートする必要があります。

働く時間を増やせないなら、もう1つの方法としては、時間単位の労働価値(時給)を上げるしかありません。

時給を上げるためには、昨日と同じことをしていても不可能です。昨日までとは違うこと、言われた以上のことをやらなければなりません。つまり、スキルアップが必要なのです。ところが、正社員として働いている限り、スキルアップは難しいという現実があります。

会社としては、社員の能力が向上して利益を上げてくれるに越したことはありませんが、ほとんどの場合スキルアップの目的は、会社の望むものと社員が収入を増やすためのものとでは一致しないことが多いのです。

例えば、アパレル販売をしている社員が、スマホアプリの開発の勉強をしたいと申し出たら、会社は喜んで許可するでしょうか。多くの企業が、効率化により労働生産性を上げることで利益創出をする考えに留まっている以上、短期的に利益に結びつかない社員のスキルアップに対して、会社側は時給を上げたがらないでしょう。厳しい競争環境において、人件費をできるだけ抑えたいのが本音ですから。

だからと言って、会社を当てにせず自助努力によってスキルアップのための「勉強」をしたところで、それだけでは使いものにはなりません。スポーツの世界と同じく、実施練習をしながらトライ&エラーを繰り返さなければ、実際の試合で使える本物の能力は身に付きませんが、そのような時間的余裕は正社員にはないからです。

Googleのように勤務時間の2割は、直接の仕事と関係ないことに使うというルールが確立されている会社なら、自分の未来を耕すための時間を容易に確保できるでしょう。しかし、裏を返せば、Googleほどのイノベーティブな企業ですら、ルールを作って促進しなければならないほど、目先の仕事以外のことを始めたり新たな能力を身につけたりすることは難しいことを意味します。

そうなると、ごく普通の会社で正社員として働いている以上、いままで通りの働き方を続けていては、働く時間を増やそうにも限度があり、同時にスキルアップにも限界があるわけです。ですから、「時間をお金に換える」という正社員の働き方は、もはや賢い選択とは言えないと判断し、例えば残業や休日出勤を断固排するような会社にとっては「好ましくない」社員になる覚悟や、あるいはハードルは高いかもしれませんが、高い付加価値を生み出す人材になるために、正社員という立場を思い切って捨てるという決断が、働き方改革の重要なポイントになります。

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