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Japan

第09回 経営目標の立て方

儲かる仕組みを作り上げる―企業経営に求められる継続的収益力の創造―

マネジメントテクノロジーズ、LLC
代表 尾田 友志 氏

2013年06月12日更新

皆さまの会社の経営目標は、「目標売上高・目標利益」などの数値目標が主でしょうか?それとも定性目標も掲げられていますでしょうか?経営目標の立て方で、会社の体質が変わることが判っています。経営目標の立て方のポイントをみていきましょう。

業績と経営目標の間には、関係があった

以前、日本は日本経済新聞社、米国はニューズウィークが共同で行った調査があります。それは、業績と経営目標の間に関係があるか否かというものです。調査の方法は、日米の企業経営者にアンケートを送付し、経営目標が(1)定性目標と定量目標、(2)定量目標のみ、(3)定性目標のみかを調べました。一方で、各社の公表されている業績で、アンケート結果をグルーピングしました。結果は次の通りです。

  • 業績の良い企業→定性目標と定量目標の両方が設定されていることが多い
  • 業績の芳しくない企業→定量目標のみ
  • (定性目標のみの会社はない)

この関係は一方通行のもので、逆に定量目標のみ設定している会社は業績が悪いというものではありません。

定量目標とは到達水準を表すモノサシである

経営目標とは、本来は「将来実現したい自社の姿」です。しかし、言葉だけで語られていては、毎年の企業活動の結果、どこまで到達したかを社員全員あるいは社外の利害関係者が理解することはできません。言葉だけでは主観の入り込む余地が大きすぎて、人によっての印象が異なるからです。

また、会社は適正利益を生みだすなどの財務結果を出すことで生き残り、外部からも評価されます。売上高・利益・ROEなどの財務指標を示すことで、誤解のないコミュニケーションを図ることができます。

ただし、数値目標は絶対的な基準には、なりえません。
例えば、今年の売上目標を前年度対比3%増として100億円に設定していたとします。ところが、景気が浮揚したり、特需が発生して市場規模が大きくなっているのでしたら、100億円という売上目標は相対的に過小な数値になってしまいます。会社の現場では、当初考えていたよりも楽に目標が達成できるでしょうが、本来であれば獲得していたであろう顧客を逃しているのかもしれません。
売上目標=市場規模×目標シェアと考えるのならば、市場規模が大きくなりながらも売上目標を変えていなければ、自社の市場シェアは小さくなり、市場におけるポジションが落ちてしまいます。定量目標は絶対的な基準ではなく、到達水準を示すものということができます。

定性目標の立て方

定性目標とは、自社のなりたい姿を表現したものです。ただし自分勝手な希望や目標ではいけません。周囲の人たちの協力を得ることで、自社の成長発展を実現する必要があるからです。
図1にあるように、定性目標は1. 自社、2. 社員、3. 顧客、4. 仕入れ先、5. 株主という5つの視点に立って設定します。それぞれ、2~3行の箇条書きでかまいません。

図1:定性目標設定の5つの視点

1.自社のなりたい姿
経営者の夢や目標がベースとなります。5年後、10年後に自社がどのような姿になりたいのか、日本あるいは世界でどのような位置づけになりたいかを書いていきます。
社内のプロジェクトチームで検討する場合には、現在の業界がどのような顧客を対象としているのか、業界内の生き方にはどのようなものがあるのか、業界は将来どのように変遷していくかなどの分析を重ねながら、自社の位置づけや目標となる姿を設定していきます。

ある著名な彫刻家が、「自分は木や石を使って自分の彫りたいものを彫るのではない。じっと木や石と向き合っていると、その中にある姿が見えてくる。自分はそれを浮かび上がらせるだけだ」と語っていました。会社の目指す姿というのも、単に自社の希望だけではなく、業界という木・石の中から、自社の特徴・差別化ポイントを反映させながら浮かび上がらせるものとも言えるでしょう。

2.顧客にとって自社がどのような存在になりたいか
次は顧客の視点から、自社のなりたい姿を決めていきます。自社の商品・サービスを使って、顧客にどのような貢献をしていきたいのか、その結果顧客にとってどのような存在になりたいのかを書いていきます。

包帯・ガーゼなどの衛生材料を製造している会社がありました。これらは使い捨て商品です。医療でもなく、薬でもありません。社員は常に医師という存在を前にして、自社商品および自分自身にプライドが持てていませんでした。
この会社では創業100周年を機に「包帯・ガーゼなくして医療・治療はできない。我々は最先端医療を支える黒子の一員である」という目標を掲げました。この目標を聞いた社員の顔つきは、目に見えて変わったのです。

3.仕入れ先にとってどのような存在になりたいか
前項2とほぼ同じです。日常業務上は、仕入れ先に対して「最高の品質の商品を最低の価格で持ってこい」のような厳しいことばかり要求していることが多いでしょう。しかし、仕入れ先からの供給が止まったり、品質が悪化すれば、自社ビジネスは遂行できません。共存共栄という観点から、仕入れ先との関係を設定します。

ある産業機械メーカーは、次のような目標を設定しました。
「あなたの会社(自社のこと)の要求はとても厳しい。しかしその要求を実現し続けることで、我が社(仕入れ先)は自社業界の中で抜きん出た存在になっている」
この言葉を聞いた社員の仕入れ先との交渉の様子は、すぐに変化しました。それはでは一方的な要求だったものが、相手を思いやり、スキルアップを支援するようなことも行うようになりました。今では、多くの仕入れ先ファンの会社に支えられています。

4.社員にとって、我が社で働く意味とは
社員は部品や消耗品ではありません。業績の良い会社は、社員のモチベーションを高め、創造性を発揮させているという特徴があります。年齢差・経験差のある社員たちが、我が社で働く意味を社員の立場に立って考えてください。

5.株主にとって
最後に株主にとってのなりたい姿を書きます。一般的には、株主資本の増大という言葉が書かれることが多いです。企業経営上は、ROE(Return on Equity: 株主資本利益率)やフリーキャッシュフロー(=営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー)などの理論株価を向上させることによって、株主の利益増大を実現していきます。

皆さまの会社のなりたい姿を、明確に描くことができたでしょうか。それを社内および社外に、積極的に公表してください。優れた経営目標であれば、社員の協力・顧客の協力・仕入れ先の協力を得ることができます。皆さまの会社が、一日も早く素晴らしい会社になるきっかけをつかんでいただければ幸いです。

経営者としてのチェックポイント

次回、第10回コラムでは、ビジネスモデルすなわち儲かる仕組みについて解説をいたします。

著者プロフィール

尾田 友志 氏

マネジメントテクノロジーズ,LLC

尾田 友志 氏

マネジメントテクノロジーズ,LLC代表

日系コンサルタント会社コンサルタント、青山監査法人(現:あらた監査法人)/プライスウォーターハウス シニアマネージャー、日本マンパワーバリューマネージャー養成講座 主任講師、中央青山監査法人/PricewaterhouseCoopers ディレクターを経て、現在、マネジメントテクノロジーズ,LLC代表、株式会社アイロムホールディングス 監査役

所属:日本オペレーションズリサーチ学会

専門分野:経営工学(統計・オペレーションズリサーチ)、財務・管理会計

主な経験分野
 ・中期経営計画策定
 ・新規事業計画とフィージビリティスタディ
 ・マーケティング/セールスマネジメント
 ・企業価値/株主価値
 ・業務改善(ビジネス・プロセス改善)
 ・企業のフランチャイズ化
 ・内部統制整備(財務報告目的、内部監査)
 ・社員教育(企画・ツール開発・講師)
 ・システム化計画策定(事業分析・要件設定)

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