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Japan

第08回 経営者による事業の見方(5)─経営戦略の視点 その4

儲かる仕組みを作り上げる―企業経営に求められる継続的収益力の創造―

マネジメントテクノロジーズ、LLC
代表 尾田 友志 氏

2013年05月08日更新

あなたの会社が優れた商品を出すと、まもなくして類似商品が出てきます。また、あなたが折角、成長事業分野を見つけてビジネスをしていても、競合企業や他の業界企業が参入してきます。差別化によって自社が顧客から選ばれる会社となり、参入障壁によって守る─「差別化」と「参入障壁」はセットとなって、あなたの会社の収益性を向上させるための強力な武器となります。
今回は、参入障壁と代替品について、考えてみましょう。

参入が始まるターニングポイント

あなたの会社の事業分野への参入が行われるには、2つのきっかけがあります。それは、

  1. 事業分野の市場成長率が、日本の平均経済成長率よりも高いこと
  2. 事業分野の収益性(ROA:Return on Assets)が、全産業平均のROAよりも高いこと

です。
先日2013年3月8日に発表された、日本の2011年の経済成長率は0.3%でした。あなたの事業分野・商品分野の成長率がこれを超えている場合には、参入の危険性があります。また、同じく2011年の全産業平均(ただし、金融・保険業を除く)のROAは3.1%です。自社の両方の数値を確認して、参入の危険性があるか否かを知っておき、必要に応じて準備をしておくことをお勧めします。

チェックリスト「新規参入の脅威」

表1のチェックリストで、セルフチェックをしてみてください。

表1:参入障壁

まず、判りにくい言葉を解説します。「規模の経済性」とは、「生産量が多くなると、製品1個当たりの固定費が低下して、利益率が上昇する」ということです。これから参入しようとする会社は、先行してビジネスをしている会社よりも生産量が少ないので、利益率が低くなります。先行企業が値下げによって新規参入に対抗してきた場合には、赤字になる危険性があり、参入しにくくなります。
「習熟曲線・経験曲線」というのは、累積生産量が倍になる都度、一定割合でコストが低減するというものです。しかし、近年はなかなか生じるものではありません。1960年代前半に、テキサス・インスツルメント社が経験曲線の考え方を用いて、LSI(集積回路)を低価格で販売し、一気に普及させました。

チェックリスト全体を見回して言えるのは、「日々のビジネスを行いながら、技術・コストダウン・顧客ニーズの把握・商品差別化などに関するノウハウを、意図的に蓄積していく必要がある」ことです。あなたの会社では、いかがでしょうか?
現場はアルバイト・パートが主役だといっても、そこから現場ノウハウを抽出し、蓄積していくことは、十分に可能です。また、蓄積したノウハウを社員誰もが学ぶことができるようにすることが求められます。同時に、アイデアを出す習慣も、日頃から養っておきたいものです。スウェーデンの自動車メーカー ボルボでは、自動化製造ラインとは別に、数人のチームが自らの手で自動車を組み立てることで、生産技術に磨きを掛け、自動化製造ラインの入れ替え時に、自分たちのノウハウを組み込んでいるそうです。

参入障壁としてもうひとつ挙げることができるのは、「顧客との密着」です。単なる関係の強化ではありません。顧客が法人であれば、「自社の商品・サービスの提供を通じて、顧客企業の売上を向上/コストの削減を行い、利益を出す」。顧客が消費者の場合は、「消費者が欲しいものではなく、必要なものをプロとして提供し、消費者の支出を改善したり、生活を豊かにする」という行動を指しています。

自社の参入障壁を築く

基本的なアプローチ方法は、「自社業界の成功要因を挙げ、重要な経営資源の確保・独占、顧客の囲い込み」をしていきます。表2に飲食業界—韓国料理店と居酒屋の成功要因を掲げています。同じ飲食業でも、業態が変われば成功要因も変わってきますので、注意が必要です。

表2:飲食業界―韓国料理店と居酒屋の成功要因

あなたが韓国料理店を経営する場合、異文化の香り(メニュー、店舗内外装、店員など)と特殊な食材調達ルートの確立部分で、参入障壁を築くことができるでしょう。珍しい食材に関しては、あなたが全量買い付けをして、他店に流れないようにします。また、日本における特約店契約を結んでも、他店は入手しにくくなり、参入障壁になりえます。
東京のコリアンタウンでは、韓国の芸能プロダクションと独占契約を結び、デビュー前のいわゆるイケメン青年たちを店員として確保・独占しているところもあります。彼らはお店で働くことで、将来のファンを作ることにもなり、接客態度は日増しに良くなっていきます。模倣を防ぐ—これが参入障壁を築く目的です。

チェックリスト「代替品・サービスからの圧力」

代替品とは、別の業界商品でありながら、自社業界と同じ顧客を対象として、同等以上の便益を提供するものです。しかし実務上は、代替品を発見することは難しいことが多いです。(表3)

表3:代替製品・サービスからの圧力

代替品・サービスは、あなたの業界の市場を奪うことになります。コンパクトカメラ(カメラ業界)がレンズ付きフィルム(フィルム業界)に市場を奪われ、その後デジタルカメラ(電機業界)が市場を席巻したことは、まだ記憶にあることと思われます。

代替については、あなたの業界の市場が奪われることを恐れるよりも、あなたの会社の技術や商品によって、他の業界を代替していくことを考えるのが基本となります。あなたの会社の中核技術は何でしょう。それらは、発展性・拡張性があるでしょうか。複数の中核技術を組み合わせることにより商品を作り、新しい市場に臨むことはできないでしょうか。(図1)

図1:中核製品を使用して、競争力を強化

あなたの会社の商品を使うことで、現在生産性の低い分野を劇的に改善することができるのならば、急速に代替が進み、売上を上げていくことができます。

「経営者による事業の見方」のまとめ

第4回コラムから、5回にわたって一般社員や中間管理職にはない、経営者独特の見方をご紹介してきました。モノが溢れ、必需品が行き渡っている昨今、「作って売る・仕入れて売る」というだけでは、ビジネスは成り立ちません。買い手(顧客)・供給業者(仕入れ先)・新規参入・代替品・業界内競争などの影響を踏まえながら、「自社が競合他社とは戦わないポジショニング」を確立していくことが、経営者のひとつの役割ということができます。

他社と競合することで、お互いが切磋琢磨して発展していくことはあります。しかし、通常は戦うことで価格が下がったり、販売費用が増加して、収益性が下がっていきます。もしも、あなたの会社が消耗戦とも言えるような状況下にあるのならば、他社とは異なる観点でビジネスの軌道修正を図り、一日も早く努力をしたら成果に結びつく姿に変わっていただくことを願っております。

経営者としてのチェックポイント

次回は、経営目標を立てる際に、ぜひ気をつけていただきたい点を解説します。

著者プロフィール

尾田 友志 氏

マネジメントテクノロジーズ,LLC

尾田 友志 氏

マネジメントテクノロジーズ,LLC代表

日系コンサルタント会社コンサルタント、青山監査法人(現:あらた監査法人)/プライスウォーターハウス シニアマネージャー、日本マンパワーバリューマネージャー養成講座 主任講師、中央青山監査法人/PricewaterhouseCoopers ディレクターを経て、現在、マネジメントテクノロジーズ,LLC代表、株式会社アイロムホールディングス 監査役

所属:日本オペレーションズリサーチ学会

専門分野:経営工学(統計・オペレーションズリサーチ)、財務・管理会計

主な経験分野
 ・中期経営計画策定
 ・新規事業計画とフィージビリティスタディ
 ・マーケティング/セールスマネジメント
 ・企業価値/株主価値
 ・業務改善(ビジネス・プロセス改善)
 ・企業のフランチャイズ化
 ・内部統制整備(財務報告目的、内部監査)
 ・社員教育(企画・ツール開発・講師)
 ・システム化計画策定(事業分析・要件設定)

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