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Japan

第01回 10年後にも日本の卸売業は生き残っているのか?

日本の卸売業を強くする!

株式会社フロンティアワン
代表取締役 鍋野 敬一郎 氏

2015年12月21日更新

卸売業はこのまま衰退してしまうのか?

アベノミクスによって、日本はようやくデフレ経済からは脱出しつつあるように見えます。
大企業の業績は、軒並み過去最高益を更新しています。特に製造業は、黒田日銀総裁が実施しているかつてないほど大規模な金融緩和策による円安の恩恵を受けています。しかし、消費税の増税や、欧州経済の停滞、中国高度成長の終焉、米国景気回復の遅れなど海外市場の先行きは不透明です。原油や資源価格は、ドルベースでは値下がり乱高下していますが、円ベースでは円安がそのメリットを薄めています。

また、輸入に頼る原材料・食料品や人件費などは高騰していて、製造コストや物流コストを確実に上昇させています。日本経済全体としては、ようやくプラスに転じつつある景気ですが、卸売業界にとってはほぼ全ての産業でマイナスの影響が出ています。

スマートフォンやモバイル機器の普及はインターネット通販を加速させ、従来の小売業流通を追い込んでいます。製造業は、ネット販売で直接ユーザーへ商品を販売する直販ルートを開拓しています。小売業は、製造小売業へと進化しオムニチャネルを掲げて卸売業界に頼らないビジネスモデルを構築しつつあります。

こうした状況は、卸売業の売上と利益の低下に追い打ちを掛けています。経済産業省発表の商業動態統計によると、平成26年の卸売業販売額は食料・飲料卸売は増加、機械器具卸売業は自動車が自動車の輸出入増や自動車部分品の輸入増及び貨物車・バスの国内向け増などにより増加したものの、電気機械器具が家電製品の国内向けの減などにより減少となっています。(出典:経済産業省:商業の動き第170号Open a new windowより)しかし、その売上高営業利益率は各業界とも総じて低く1~3パーセント程度です。製造業が5~10パーセント程度であることからみても、厳しい状況にあることが分かります。

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卸売業が生き残る道を探る、先行事例と施策とは

インターネット通販の拡大、製品価格の上昇、物流コストの高騰、人手不足といった状況から、卸売業のビジネス環境は今後より一層厳しくなることが予想されます。
大手物流企業も人手不足やオペレーションコストの上昇から、今後運賃の値上げは避けられないことと思われます。卸売業の利益に、少なからず影響することは確実でしょう。製造業や小売業の業績が回復しつつあるなかで、卸売業の地盤沈下が顕著です。卸売業が生き残る術は無いのでしょうか、生き残りに成功した事例とその施策を他業界や先行事例に学ぶ必要があります。

注目すべきは生き残りが最も厳しい業界とも言われている家電量販業界です。
ご存知の通り地デジ対応による大型テレビ販売で急速に市場拡大しましたが、その後市場が縮小に転じて最大手のヤマダ電機が一時業績赤字に陥りました。また、アマゾンや楽天などネット通販企業が店舗と競合しています。家電量販の経常利益率は、エディオン1.6パーセント(売上高6912億円)、ヤマダ電機2.1パーセント(売上高1兆6643億円)、ビックカメラ2.9パーセント(売上高8298億円)、ケーズホールディングス4.1パーセント(売上高6371億円)です。

しかし、ヨドバシカメラは7.8パーセント(売上高6515億円)と他社の2倍以上の利益を上げています。その独自の取り組みや、強みを構築する施策については、いくつかのメディアや雑誌(日経ビジネス2015.10.05号No.1810)で取り上げられていますが、生き残るための秘訣は卸売業に共通するところがあります。

また、中規模・小規模の卸売業でも「既存顧客へ付加価値サービスを提供する」「新規顧客へ既存商品・サービスを提供する」という戦略で生き残りに成功している企業があります。前者は、ある食肉卸売業のケースですが、商品を卸す際に仕入先で食肉の仕込みに時間と人手が掛かるという悩みをサービスとして提供しようと試みたものです。

例えば、焼き鳥店では部位ごとの串打ち、切り身を同じ重量で切り分けていくなどいずれも手間と時間が掛かりますが、複数の仕入先の注文をまとめることで食品製造機器を導入しました。処理を自動化して付加価値サービスを提供し、加工賃を得たのです。後者は、自動車部品卸売業のケースですが、仕入れの強みを生かして珍しい自動車部品や特殊なパーツをマニア向けにインターネット通販で販売したのです。

10年後卸売業の勝ち組になる秘訣は、実現可能な新しいビジネスモデルを創ること

業界業態に関係無く他社に無い強みを持つことが出来れば、差別化する理由ができるため生き残るチャンスが増えます。
新規事業への取り組みは、多くの企業で取り組んでいると思いますが、成功の秘訣はそのアプローチ方法にあります。ありがちな失敗は、「新しい商品を開発して、新規顧客を獲得する」というものです。このアプローチの問題点は、“新しい製品の開発”が必ずしも自社の強みを活かしたものではない可能性があること、“新規顧客の獲得”は大企業でも難しいことです。つまり、2つの難易度の高いハードルを超えるよりも、乗り越えるのは1つだけに絞ることです。

また、さまざまな取り組みを繰り返して成功へのアプローチを探るため、取り組みが暴走しないようにプロジェクトを自動的に停止する安全装置を組み込んでおく必要があります。これは、プロジェクト管理などの手法で良く取り入れられるものですが、市場成長が止まったり、他業界から大手企業が新規参入してきたり、他社が先に同様の取り組みを行った場合などは自動的かつ速やかにプロジェクトを停止して、計画を見直すというものです。

10年後に確実に生き残るためには、なんらかの新しい取り組みを成功させなければなりません。もちろん複数企業による合併、グループ化でバイイングパワーを強化する、総合商社や大手グループの傘下に入ることで生き残るという道もあります。しかし、ここではそうした組織再編ではなく、商品・サービスと顧客に視点を置いた取り組みにフォーカスします。

また、新しいビジネスに取り組む前に、自社の強みと使用を取り巻く環境を再度見直して、足腰を鍛えておく必要があると考えています。本コラムでは、機械と食品の2つの業界をあげて『10年後の生き残り』をテーマに様々な角度から卸売業の取り組みについてていねいに検証、考察していきます。

次回より、機械器具卸売業について具体的にお話をすすめていきます。最初のテーマは、機械器具卸売業の勝ち組と負け組について、現在と未来を比較して未来に向けた取り組みについてご説明いたします。

産業財 卸売業における経営戦略やIT推進状況の実態調査から”課題”と”解決策”に迫る!

著者プロフィール

鍋野 敬一郎 氏

株式会社フロンティアワン

鍋野 敬一郎 氏

株式会社フロンティアワン 代表取締役

1989年:同志社大学工学部化学工学科(生化学研究室)卒業。

1989年:米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。農業用製品事業部に所属し、事業部門のマーケティング・広報を担当。

1998年:ERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職し、マーケティング担当、広報担当、プリセールスコンサルタントを経験。アライアンス本部にて戦略担当マネージャーとしてSAP Business All-in-One(ERP導入テンプレート)立ち上げを行った。

2003年にSAPジャパンを退社し、コンサルタントとしてERPの 導入支援・提案活動に従事。

2005年に独立し株式会社フロンティアワン設立、現在はERP研究推進フォーラムでERP提案の研修講師、ITベンダーの事業企画や提案活動支援、ユーザー企業のシステム導入支援など、主に業務アプリケーションに関わるビジネスを行っている。ERPや業務アプリケーション、セールスフォース・ドットコムやMicrosoft Windows Azureなどのエンタープライズ・クラウドに関する活動に携わっている。

オンラインメディアなどにERP、クラウド、SOA、GRCなどに関連する記事を、数多く寄稿。

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