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お客様からリピートオーダーが欲しければ”大満足”あるのみ

「提案型」でさえ苦戦している

昔、必要なモノが不足していた時代には、顧客のニーズはもっぱら「モノが欲しい」というものだった。車が欲しい、テレビが欲しい、パソコンが欲しいなど。それから時が流れ、モノが世の中に溢れるようになると、「モノが欲しい」というニーズから「良いモノが欲しい」「自分に合ったモノが欲しい」というニーズに変化した。しかし近年、このニーズはさらに変わってしまった。今の顧客ニーズはどのようなものになっているのか。それは、顧客自身が「欲しいものが分からない」そんな時代になったのだ。モノも情報もサービスも溢れ、業務もICTも高度化し、グローバル化で現場が見えなくなった昨今、一体何を手に入れたら問題解決や目標達成ができるのかが分からない。このように、時代と共に顧客のニーズは大きく変化してきた。

そこで企業側は、ニーズの変化に合わせてビジネススタイルを変えていかなければ、生き残ることができなくなると言える。

以前、「モノが欲しい」というニーズの時代には、「受け身型ビジネススタイル」で十分だった。顧客からの注文通りに製品を提供したり、顧客からの指示に従ってサービスを提供することで喜んでいただけていた。ただし、今の時代「受け身型」では、顧客に価値を感じていただけず、仕事量が減ってしまったり、価格競争に追い込まれてしまう。受け身型のビジネススタイルからは、いち早く抜け出さなければならないのだ。

そして次に、「良いモノが欲しい」というニーズに代わると、「提案型ビジネススタイル」が注目されるようになった。これは、顧客のニーズにピッタリ合ったものをどんどん提案しようというものだ。ただし実際は、顧客のニーズを直接聞くことが難しいことが多く、ニーズを推測して提案したり、流行モノを提案したりしていた。実は最近、この提案がなかなかお客様にフィットしなくて苦戦する企業が増えている。なぜならば、最近ではお客様自身が「欲しいモノが分からない」時代になったからだ。「欲しいモノが分からない」お客様に、企業側が勝手に「このお客様には、この提案が喜ばれるに違いない」と提案を仕立てて持っていっても、提案がフィットしないのは当然だと言える。

お客様のニーズの変化

つまり今後、この厳しいビジネス環境を生き抜くためには、「受け身型」からも「提案型」からも抜け出して、これからの時代のニーズに合ったビジネススタイルに変わらなければならないのだ。

それが「問題探索型ビジネススタイル」だ。これは、お客様自身が「欲しいものが分からない」という状況のため、お客様の業務を理解したうえで、問題を探し出すところからお客様とご一緒することで、ビジネスを拡大していこうというものだ。

この問題探索型ビジネススタイルを実現するためにはもちろん、問題を探し出して解決するためのスキルが必要になる。しかしその前に、極めて重要なのが「お客様の身内になる」ことだ。問題を一緒に探すためには、お客様に問題点や弱点を見せていただく必要がある。しかしお客様にしてみれば、身内でもない相手には、なかなか問題点は見せたくないものだ。だからこそ「身内になる」ということが極めて重要になるのだ。

論理的かつ科学的に「サービスのプロ」になる

そしてもう1つ、忘れてはいけないのが「サービスのプロ」になることだ。いまや、すべての産業においてサービスが競争優位そのものと言える時代になった。サービスサイエンスでは、「すべての産業はサービス業である」と定義している。つまり、卸売業であっても、自社をサービス業として捉えてサービスを磨き上げて、サービスでお客様に喜んでいただかなければ、お客様から選ばれ続けることができないのだ。また、すべての産業をサービス業として捉えると、たとえお客様が製造業であっても、サービス業としてお客様のビジネスを捉えなければ、お客様を正しく理解することができないのだ。これらの理由から、これからの時代を勝ち抜くためには、「サービスのプロ」になる必要があるといえる。

しかし「サービスのプロになる」というのは簡単ではない。サービスは目に見えなくて雲を掴むようなもの。ついつい精神論やテクニック論で考えてしまう。また、経験やセンス、勘に頼った現場任せな取り組みしかできていないことが多い。

そこで最近では、サービスや顧客満足の本質を明らかにしたサービスサイエンスの論理を理解して、組織的なレベルアップに取り組む企業が増えている。今回はこのサービスサイエンスについても触れながら、卸売企業が他社と差別化し、お客様に選ばれ続けるための努力のポイントを明らかにしてみたいと思う。

顧客満足とリピートの興味深い関係

多くの企業では、リピートオーダーをいただくために顧客満足向上に取り組んでいるが、なかなか上手くいっていないことが多い。そこで初めに、顧客満足度とリピートオーダーの可能性についての相関関係を示した下図をご覧いただきたい。

顧客満足度とリピートオーダーの可能性

横軸の顧客満足度が「0:不満」から「1:やや不満」「2:ふつう」「3:やや満足」と高まっていっても、リピートオーダーの可能性はほとんど高まっていない。そして、「4:大満足」になって初めて、リピートオーダーの可能性が急激に高まっている。「3:やや満足」と答えたお客様の、実に95%以上がリピートしない可能性があるというデータもある。このことから、「リピートオーダーを得るためには、大満足あるのみだ」ということが明らかになった。
しかし実際には、企業での顧客満足向上の取り組みのほとんどが、顧客満足度の「平均値」にフォーカスしている。だが、顧客満足度の平均値をいくら高めても、大満足のお客様が増えなければ意味がない。むしろ考えるべきは平均値の向上ではなく、「やや満足」のお客様を特定して、どうしたら大満足していただけるかにフォーカスして取り組むことなのだ。
このように、少しだけロジカルに顧客満足とリピートオーダーの可能性の相関関係を明らかにするだけでも、今までよりはるかに効果的で具体的な努力のポイントが明らかになるものだ。 では続いて、サービスや顧客満足の本質を理解してみよう。

「サービス」の本質とは

これまでとことんサービスや顧客満足についての議論をしていても、その定義はと問われると答えに困ってしまうものだ。実はこういった定義を組織で共有せずにサービスや顧客満足についての取り組みを進めたために、議論や取り組みが噛み合わないことは少なくない。そこでまずは、サービスの定義からご紹介したいと思う。

【サービスの定義】
人や構造物が発揮する機能で、ユーザーの事前期待に適合するものを「サービス」という。

この定義で最も重要なポイントは、「事前期待に適合するものをサービスという」の部分だ。つまり、いくら機能を発揮しても、「事前期待に適合しないものはサービスと呼ばない」ということなのだが、では何と呼ぶのか?それは「余計なお世話」や「無意味行為」「迷惑行為」と呼ばれてしまうのだ。つまり、事前期待を掴まずしてサービスは提供できないのだ。

また、サービスの定義同様に、顧客満足の定義もしっかりと理解する必要がある。

「顧客満足」の本質に迫る

顧客満足の定義は下図の通りだ。

顧客満足の定義

お客様が商品やサービを利用する前に持っている「事前期待」よりも、利用後の「実績評価」が上回ると、満足していただけてリピートオーダーがいただける。
反対に、事前期待より実績評価が小さいと、ガッカリされて、お客様を失ってしまう。
そして、事前期待と実績評価がほぼイコールの場合は、期待には応えているのだがこれではダメで、「印象が薄い」ので、お客様を競合に奪われてしまう可能性がある。
これは、言われてみれば当たり前だと思う方が多いかもしれない。しかし、この定義のポイントを理解してみると、これまでの顧客満足に関する取り組みが少し筋違いだったかもしれないことに気付く。顧客満足の定義のポイントは「絶対値」ではないということ。つまり顧客満足は、事前期待と実績評価の「相対値」で決まるのだ。しかし実際多くの企業では、「どうしたらお客様に喜んでいただけるか」を考える際には、実績評価の方だけを意識して議論している。顧客満足は事前期待と実績評価の「相対値」なので、実績評価の方だけに着目して取り組むのは筋が良くない。お客様に満足していただくためには、「事前期待」を把握することが何より大切なのだ。

このように、サービスや顧客満足の定義を理解してみると、「事前期待」を掴まずして、サービスでお客様に喜んでいただくことはできないことがよく分かる。ではこの「事前期待」とはいった何なのだろうか。

「事前期待」とは何か

事前期待は次のように構成要素に分解することができる。

事前期待を分解する

この中でも特に「事前期待の対象」については、普段からよく議論されていることが多い。しかし実は、ここをいくら努力しても感動サービスやホスピタリティサービスといった高い評価を得ることは難しいことが分かった。評価の高いサービスを実現するためには「事前期待の持ち方」に着目することが効果的だ。そこで「事前期待の持ち方」について詳しく見ていこう。

  1. 共通的な事前期待
    これは、すべてのお客様が共通的に持っている事前期待だ。例えば、ホテルでは「ベッドや水回りが清潔であってほしい」という期待はすべてのお客様が持っている。この期待に応えるには「マニュアル」や「チェックリスト」を活用して、抜けやバラツキのないサービスを提供する必要がある。
  2. 個別的事前期待
    お客様は十人十色と言うように、お客様一人ひとりで異なる事前期待のことを指す。ホテルの例で言えは、枕は「そば殻で厚手のものが良い」「羽毛で薄いものが良い」と、お客様ごとに事前期待は異なる。実はこの種の事前期待に応えることは、サービス提供側が思っている以上に、お客様に感動していただける可能性が高い。しかしマニュアルやチェックリストでは個別的事前期待に応えることはできない。そこで有効なのが「顧客カード」や「顧客データベース」の活用だ。すでに顧客データベースを持っていても、現場で上手く活用できていない場合には、価値ある活用法を見直してみたいものだ。
  3. 状況で変化する事前期待
    同じお客様でも時と場合によって事前期待は変わるものだ。例えば少し汗ばむ陽気の日に、いつも最初からワインを注文する行きつけのお店に入ったとする。そこで顔見知りのマスターから「松井さん、今日は生(ビール)でしょ!」と言われて、自分の気持ちにバッチリ当たっていたらホスピタリティーを感じてしまう。このような状況で変化する事前期待には、顧客データベースなどの仕組みだけでは応えられない。そこで必要となるのが、お客様の状況を敏感に察知するための着眼点やサービスセンスを身に付ける教育やトレーニングだ。
  4. 潜在的な事前期待
    これは少々難しいのだが、お客様が思いもよらない事前期待だ。以前、私の友人が妊娠して間もなくに書店でしばらく立ち読みをしていた。すると彼女のカバンに妊婦バッチが付いているのを見つけた店員さんが気を利かせて椅子を用意してくれたそうで、すごく感激していた。こういった感動体験は、教育やトレーニングをしたからといって提供できるものではない。そこでできる工夫としては「こんなことをしたら感動していただけた」という成功事例を組織的に共有することだ。そうすることで、サービス提供者がいざ同じ場面に出くわしたときに、感動サービスを再現できるチャンスが増えるのだ。
    このように事前期待の持ち方には4つの種類があるのだが、ただ単に共通的な事前期待に応えるだけでは「当たり前」という評価に留まってしまい、お客様に価値を感じていただけないことが少なくない。そこで、高い評価を得るためには、残る3つの個別的な事前期待、状況で変化する事前期待、潜在的な事前期待に応える方が効果的だと分かっている。
    こういった観点で、改めて機械器具卸に話を戻すと、普段努力していることが「品揃えの充実」や「迅速対応」「低価格」であることが多い。しかしこれらはもしかすると「事前期待の対象」であったり、「共通的な事前期待」に属する内容である可能性が高い。つまり、ここをいくら磨き上げても、もしかするとお客様からは「卸売業界では当たり前」としか評価していただけない可能性があるのだ。どの事前期待に応えることに価値があるのか?それを見出す必要がありそうだ。

このように、事前期待と一言で言っても意外に複雑だ。しかし、これだけのことをきっちりと理解したうえで実務に活かす必要があるのだ。では、ここまでに理解したサービスや顧客満足の理論を、実務にどう活かしたら良いのだろうか。次回は具体的な方法論と具体例を明らかにしてみよう。

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著者プロフィール

松井 拓己 氏

ワクコンサルティング 副社長執行役員

松井 拓己 氏

サービスサイエンスチームリーダー

名古屋工業大学産業戦略工学専攻修了後、ブリヂストンで商品企画開発に従事。
事業開発プロジェクトのプロジェクトリーダーとしても新規事業戦略立案に貢献。
その後、平均年齢62歳、170名のベテランコンサルタントが集うワクコンサルティングに参画し、副社長として主にコンサルティング事業のサービスマネジメントに従事している。
サービスサイエンスに基づいたサービス改革や営業改革、顧客満足向上支援を専門とし、サービスサイエンス研修や講演も行っている。

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