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第01回 成長に必要な技術戦略

「企業の成長と事業の継続」生産管理編

技術士(情報工学)   北村 友博 氏

2016年10月31日更新

時代の節目

先日80年以上続いた中堅鋳造メーカーが倒産しました。最盛期は3つの子会社を含めて年間200億円の売上がありましたが、最近は12億円まで落ち込んでいました。100名を超える従業員の今後の生活、取引先や銀行への債務支払いなど、80歳を越えた社長には荷が重過ぎ、とうとう過労で倒れました。倒産する原因はこれといって見当たらないのですが、徐々に売上が縮小して営業利益を確保できなくなっていました。「時代についていけなくなったのです」と、経理部長は肩を落としていましたが、生き残る術がなかったとは思えません。これに類する製造業の倒産が増えています。
法が認めた人格つまり法人(企業)の寿命は永遠です。100年以上かつ3代以上存続した企業が「老舗」の定義ですが、帝国データバンクのデータベースによると、全国に約2万社、企業総数の1.6%に上るそうです。中には数百年にわたって時代の節目を乗り越えてきた、強靭でしたたかな企業も見受けられます。何が違うのでしょうか。
少々前置きが長くなりましたが、時代の節目すなわち、大変革を乗り越える企業の成長と事業の継続について、3回に分けて考えていきます。

1. 企業環境の変化

1.1 人口減少と消費者選好の変化

少子高齢化による人口減少について、国立社会保障・人口問題研究所では、日本の人口が2030年には1億1522万人、2060年に8674万人まで減少すると予測しています。高齢化の進展と人口減少および、それに伴う様々な社会の変化は、どんな対策を講じても避けられないようです。経済面に目を転じると、それにもかかわらず大量生産・大量販売による利益拡大という、旧来の図式から抜け出せない企業が大半です。
これに追い打ちをかけるように、近年、日本では消費者選好が大きく変化しつつあります。安全・安心だったはずの福島原発事故、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉など科学技術への不信、雇用不安・年金不安といった将来に対する漠然とした不安が、国民の消費行動を大きく変化させつつあります。つまり消費者の価値観が大きく変化してきたのです。
通販やケータリングを利用して外出せずに室内で生活する「巣ごもり志向」や、若者のクルマ離れ、食べ残しを防ぐ「30・10運動」に見られる「もったいない志向」など、すべてが国内消費の縮小 (シュリンク) 傾向を示しています。

1.2 第4次産業革命の到来

皆さんもご承知のように、産業の変革とそれに伴う社会構造の変化を産業革命といいます。蒸気機関による手工業から工場制機械工業への変革を第一次産業革命、そして内燃機関と電気エネルギーによる、大量生産・大量消費時代への変革が第二次、さらにコンピュータによる情報化時代への変革が第三次産業革命と言われています。
2011年、製造業の様相を抜本的に変え、製造コストを大幅に削減することを目的に、ドイツ政府は第四次産業革命と位置づける「インダストリー4.0」プロジェクトを打ち出しました。様々なモノを直接インターネットで繋ぐ情報通信技術がIoT (Internet of Things)ですが、このIoTを基盤として、産業と社会が大きく変革すると考えられています。消費財の生産は大量生産から個別ニーズに合ったカスタム生産へ、企業は「ものづくり」から「ことづくり」への変革が必要と予測されています。第四次産業革命では、地球規模で人類のライフスタイルの変革し、全ての産業が以前のビジネスモデルから変革を余儀なくされるのです。

図1 決断を迫られる日本の製造業
[出典]経済産業省HP 第4次産業革命 -日本がリードする戦略-Open a new window

2. 成長し続けるための製品開発

2.1 研究・開発管理の重要性

大量生産・大量消費の時代は二度と戻ってきません。企業が売上・利益を確保し成長し続けていくには、これまでのものづくりの方向を全面的に見直すことが必要です。時代の変化に合わせて開発体制、生産体制、販売体制、経営体制を変革していくことが必要です。なぜなら企業は“Ongoing to grow”、すなわち「中断することなく成長し続ける」ことが求められているからです。右肩上がりの時代では、全員が汗を流して頑張れば売上up、利益upは比較的容易でした。現在の国内市場では、売上downの状態でも利益upを続けられる戦略が必要です。私はそのキーとなるのが技術戦略と生産戦略だと考えています。
技術戦略から考えていきます。R&D (Research & Development = 研究・開発) への投資割合は業界によって異なりますが、自動車業界、電機・電子業界では8%前後、製薬業界では20%前後に上ります。右肩下がりが明確となった現在では、業界を問わず企業が成長を続けるためにはR&D(研究・開発)が重要であり、これを効果的に行うために、R&Dマネジメントの重要性が高まっています。
技術探索から始まって、必要な技術を選別して組合せ、商品開発を行い、生産方法を確立して、販売に至る、製造業はこのようなプロセスで、製品あるいは商品開発をおこなっています。ここでR&Dとひとくくりに言っていますが両者は全く異なり、その管理方法も変える必要があります。D(Development = 商品開発)は製品(商品)開発という明確な目標があるため、マネジメント手法としてMBO(Management By Objectives = 目標管理)が、多くの企業で適用されています。そのため「厳密なスケジュール管理、厳しい指揮命令の規律、組織秩序の維持」が組織文化を形成します。またD(商品開発)は投資規模が大きく、複数部門によるプロジェクト形態をとることが多いため、経営トップの関与が大きくなります。そのためローリスクかつ成功確率の高いテーマが優先されることが多く、その結果費用対効果の低い開発となってしまう可能性があります。
これに対してR&DのR(研究)はD(開発)とは様相が異なります。R(研究)は技術探索と技術開発、つまり「0から1を生み出す個人活動」という要素が強いため、「研究者は勝手気まま、規律が守られず、日程と予算の管理が弱い」といった状況に陥り勝ちです。
R(研究)の管理では目標管理でなく「なにをすべきか」という明確な方向を示すことで、技術ビジョンと技術ドメイン(領域)、そして技術ミッションを研究者に明確にして、事業計画と統合させることが重要です。ロボカップでは研究者に「西暦2050年までに、自律型ヒューマノイド・ロボットで、人間のサッカー世界チャンピオンに勝つこと」と、具体的なビジョンとミッションを示しています。良い例と言えます。
このように全く異なるR(研究)とD(開発)のマネジメントを、いかにうまく行なっていくかが、企業が成長を続けるために最重要です。

図2 研究と開発は全く違う

2.2 魔の川・死の谷・ダーウィンの海

戦略的なR&D投資と効率的な技術運営で、タイムリーに製品開発と市場投入をおこない、確実に果実を収穫(収益)すること、これが理想ですが残念ながら経営の視点で技術戦略・技術行政ができていないケースが多いのが実情です。
以前から技術を事業に繋げるには3つの障害があるといわれてきました。技術を開発しても製品に繋がらない「魔の川」、開発した製品を「商品化」できずに埋没させてしまう「死の谷」、開発商品が市場で淘汰される「ダーウィンの海」と呼ぶ3つの障害です。魔の川を渡れないのは市場ニーズに合致する技術テーマの絞込み不足が原因です。死の谷は開発に係わるリスクをテークすべき技術担当役員の資質が問題となります。つダーウィンの海では技術戦略とマーケティングの整合性が課題となりますが、最近の日本企業の失敗の多くがこれによるものと私は思います。3つの障害の意味、原因、そしてキーとなる対応策を図3に整理してみました。

図3 R&Dが事業に結びつかない3つの障害

  魔の川 死の谷 ダーウィンの海
意味 技術が製品に
結びつかない
製品を商品化できず
埋没してしまう
製品が市場で淘汰され
業績に寄与しない
障害 研究はシーズ志向、
開発はニーズ志向、
ベクトルが異なる
技術者は製品を
開発するが、
企業は商品を求める
差別化とガラパゴス化を
混同しがち
対策 マーケティングによる
開発テーマの
明確化が必要
CTO(技術担当役員)
の技術戦略と
リスクテーキングが必要
技術戦略とマーケティング
との整合性を図る

結局「R&Dマネジメントは難しい」の一言に尽きるのですが、例え文系出身のトップだからと言って「R&Dはよく判らない」と投げ出すわけにはいきません。そんな企業では事業計画の成否を左右するにも拘らずR&D部門が、人事・予算・購買権まで獲得して、経営トップが口を出せなくなるからです。このような企業を開発志向企業と、世間は捉えることもありますが、これでは経営は成り立ちません。経営の視点から開発パフォーマンスを把握・評価して、開発効果の最大化を目指すべきです。

2.3 MOT(技術戦略)の重要性

R&Dの生産性は評価できているか、技術を「財」に変換する視点があるか、異分野技術と融合できる柔軟な頭を持っているか等々、企業におけるR&DマネジメントをMOT (Management Of Technology = 技術経営)といいます(本文では技術戦略と定義します)。MOT (技術戦略)の目的は「製品開発力を高める」ことで、企業における位置づけは図4のようになります。 ここでは事業ドメインと技術ドメインの概念が重要です。事業ドメインとは企業活動を行う事業展開領域、技術ドメインはR&D活動の領域をいいます。事業ドメインを規定することで自社の競争領域を明確にし、必要な事業に資源を集中投入できるため、経営戦略の最適化が図れるようになります。優れた事業ドメインは広過ぎず狭過ぎず適度な広がりを持ち、将来の事業展開を視野に入れており、技術ドメインが整合しているものです。現在のように市場が変化する時代では、事業ドメインと技術ドメインを絶えず見直すことが企業には重要です。
具体的なMOTの方法としては、自社の技術ドメインを明確化したうえで、R&DのQCD(品質・コスト・期間)を「見える化」することからスタートし、R&Dの効果・効率の評価基準の作成、するのが良いと思います。つまりR&Dにおける“PDCAサイクル”を確立することです。

図4 技術戦略(MOT)の位置づけ

次回は、生産計画、生産技術、調達、生産、在庫、物流といった、生産面の成長戦略についてお話しします。

著者プロフィール

北村 友博 氏

ピークコンサルティンググループ株式会社

北村 友博 氏

ピークコンサルティンググループ株式会社 代表取締役

早稲田大学商学部卒、大手機械メーカーで、SE、プロマネ、システム部門長、業務改革責任者として、生産管理、工場改善、設計開発、グループ企業管理、グローバルシステムなど、システム構築、およびIS部門運営、ITビジネス改革などを経験、2004年、ピークコンサルティンググループ(株)を設立、同社の代表取締役として、多くの製造業でものづくり改革とITを活用した経営支援に当たる。
業務の傍ら、2005年から4年にわたって日本技術士会副会長を勤め、技術士活性化施策を推進に尽力、現在、日本技術士会近畿本部本部長。他に生産・物流システム研究会を主宰、関西大学環境都市工学部・講師(非常勤)として後進の指導に当っている。
〔資格〕 技術士(情報工学)

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