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中堅企業の管理会計を支える「経営数字データ」とは

「中堅中小企業における経営数字データの利用実態調査レポート」解説コラム

仰星マネジメントコンサルティング株式会社
プリンシパル 公認会計士 金子 彰良 氏

2015年03月03日更新

はじめに

企業が成長していく過程で、事業の拡大とともにその内容が多岐にわたるようになると、事業とビジネスプロセスの関係も複雑化してくる。経営者をはじめマネジメント層が、意思決定を行うために拠りどころとする「経営数字データ」は、ビジネスプロセスの中で生成・記録・収集されるが、事業拡大・多様化に伴いそのしくみも見直さなければならない。
事業とビジネスプロセスの関係が複雑化してくると、制度会計の枠組みだけでは事業を管理することが難しくなってくるため、成長過程にある企業では、制度会計とは別に管理会計のしくみを構築することが重要になる。
株式会社富士通マーケティングが2014年10月に実施したアンケート調査の結果、『中堅中小企業における経営数字データの利用実態調査レポート(以下、「調査レポート」という)』をリリースしている。
アンケート調査は、従業員数2千人未満の企業を対象に実施され、その結果からは受注や売上・営業利益などいわゆる「経営数字データ」の活用状況を把握することができる。

アンケートの回答に基づく分析と興味深い解説が付されているが、この調査レポート全体を読んで個人的に特に気になったことがある。それは、調査対象企業を従業員数で「49人以下、50~199人、200~599人、600人以上」の4つにクラス分けした場合に、従業員数200人~599人のクラスにおいて、相対的に、「マネジメント層への経営数字データの提供に不足感もつ傾向」があり、また、「経営数字データの活用が不十分であると感じている項目が多い」という特徴があったことである。

一般に経営者を中心に少人数で、または、事業規模が拡大してもギリギリ経営者の目の届く範囲でマネジメントができるのは従業員数199人以下のクラスと考えられるが、調査結果は従業員数がそれを上回ると、経営数字データの提供や活用面で何らかの変化があることを示唆している。
また、従業員数600人以上のクラスになると、再び経営数字データの提供や活用について相対的な満足度が向上していることから、このクラスに移行する過程で経営数字データを組織的に管理するしくみ、すなわち制度会計とは別に管理会計のしくみが構築されたとも推測される。

中小企業が成長して大企業になる過程で、いわゆる中堅企業と言われる段階があり、従業員数や売上高・資本金などで一概に区別できないものの、調査レポートの従業員数200人~599人のクラスの回答は、多くの中堅企業の実態を表していると解する。

以下では、調査レポートから読み取れる範囲で、中堅企業にとって経営力を高めるための「経営数字データ」とは何か、どのような管理会計を構築すべきかのヒント得るため、「経営数字データ」のマネジメント層への提供と活用の方向性を中心に考察した。

調査レポートが中堅企業の財務・経理部門に示唆している3つの方向性

経営数字データはマネジメント層にとって、「意思決定に資する精度」でなければならない

調査レポートが示唆している一つ目の方向性は、「意思決定情報の精度」の向上である。ここでいう精度には、経営数字データが、事業の損益構造を管理するメッシュとなっているか、また、分析に有用な詳細度を持っているかという二つの側面がある。

事業の損益構造を管理するメッシュ

調査レポートの『図1:【従業員数別】企業経営における損益管理の現状』を見てみると、従業員数が50人以上のクラスになると管理メッシュが全社から部門別に、また、サイクルも年度から四半期(月次)と短くなっている。実施率で30%近く増加し、クラス内の企業の半数以上が該当する。


図1:【従業員数別】企業経営における損益管理の現状

これは事業規模の拡大に伴い従業員数も増加し、事業遂行の体制も複数部門に分けて行うことやPDCA(Plan-Do-Check-Action)のサイクルもより短サイクルで回したいという内部管理ニーズが反映されていると思われる。ちなみに従業員数600人以上のクラスでは、セグメント別の損益管理を実施する企業が大きく増加しているが、これは事業内容が多岐にわたり始めることが反映されているからであろう。
このように調査レポートからは、事業の拡大や展開に合わせて管理メッシュも細分化していくことが損益管理の実効性を高めるために必要なことがわかる。
クラス別に差はあるものの、おおむね全体の傾向として事業の損益構造を管理するためのメッシュは適切に設定できていると思うのだが、調査レポートの『図2:【従業員数別】マネジメントに必要な「経営数字データ」の提供』によると、従業員数200人~599人のクラスでは、他のクラスと比較して、マネジメントに必要な情報が不足している(「やや必要な情報が不足している」+「必要な情報が不足している」の合計)と回答した企業は多く、全体の約40%にのぼる。


図2:【従業員数別】マネジメントに必要な「経営数字データ」の提供

これは推測になるが、こうしたマネジメントに必要な情報が不足していると回答した企業には、まだ部門別に四半期(月次)の損益管理ができていない企業に加えて、事業の多角化や組織体制の変更など内外の環境変化に応じた損益管理の見直しができていない可能性も考えられる。

分析に有用な詳細度

『図1』では、従業員数が50人以上のクラスになると部門別の予実管理に加えて詳細な実績管理を行っていると回答した企業の比率が40%を超えている。また、これに調査レポートの『図3:【従業員数別】経営数字データの活用目的』を合わせてみると、従業員数200人~599人のクラスでは原価管理を重視している企業が他のクラスに比較して高い(72.9%)。


図3:【従業員数別】経営数字データの活用目的

経営数字データがマネジメント層にとって、意思決定に資する精度であるためには、分析も詳細に行う必要があるが、原価管理を重視して詳細な実績管理を行っているにも関わらず、『図2』の結果によれば、従業員数200人~599人のクラスにおいて、マネジメントに必要な情報が不足していると回答した企業があるのはなぜだろうか。
これも推測になるが、実績データの分析結果が意思決定につながりにくい状況であると思われる。例えば、実績データの記録にあたって、部門情報とは別に後で分析するために必要な情報が付されていないとか、ITの利用状況による制約から実績データに付すことができる分類・属性情報が不十分であるといった状況が想定される。

このように、経営数字データをマネジメント層にとって、「意思決定に資する精度」とするためには、事業の損益構造を管理するメッシュで、また、分析に有用な詳細度を持つように管理されなければならない。

ところで、『図3』からは、収益管理、予算管理、原価管理の三つを活用目的としてあげた企業は多いが、一方で、業績予測シミュレーションやキャッシュ・マネジメント、新規・不採算事業の評価、リスク管理といった項目を活用目的としてあげている企業は全体として多くないことがわかる。
これら業績予測シミュレーションなどは、経営数字データを過去および現在だけでなく、将来を予見するために活用する性質を持つ。このような過去から将来に向けた経営数字データの一貫した利用は共通の課題であるようだ。

意思決定を支援する経営数字データは、「迅速かつ適時」にマネジメント層へ伝わらなければならない

調査レポートが示唆している二つ目の方向性は、「迅速かつ適時」に経営数字データを把握し、提供することである。これはPDCAサイクルをより速く回すために必要なことである。

決算数値確定の早期化は満足度が高い?

意思決定情報の中でも決算数値のデータは企業の現状を知るための重要な情報である。この決算数値の確定が遅いと、PDCAサイクル上、経営課題に対する打ち手(Action)も遅くなる。
調査レポートで興味深いのは、『図4:経営数字データの活用度合に関する認識(従業員数200~599人)』を見ると、従業員数200人~599人のクラスでは、「決算数値確定の早期化」について44.1%の企業が「十分である」とし、それ以外の評価項目と比較して、相対的に満足度が高いという結果が出ている。
これは、意思決定を支援する経営数字データが迅速かつ適時にマネジメント層へ伝わっている企業が多いことを表している。


図4:経営数字データの活用度合いに関する認識(従業員数200~599人)

精度向上と迅速化はトレードオフの関係

しかし、「経営数字データ」のマネジメント層への提供と活用に関する課題をクリアしようとするとこの回答は変化するかもしれない。というのは、前述した経営数字データの精度を向上させることと、決算数値の確定を早期化することはトレードオフの関係にあるからである。 また、決算数値のもとになる上流の業務プロセスで生成される情報の精度を上げる取り組みも同様である。『図4』の「製品・顧客・チャネル別など欲しい軸でデータ提供」について「十分である」とした企業は33.9%であるが、もし分析軸を追加した結果、データの収集・記録に時間を要することになると、決算数値の確定にも影響が生じる。 このように、中堅企業にとって、意思決定を支援する経営数字データは、精度向上を目指す一方で、「迅速かつ適時」にマネジメント層へ伝わるように業務および情報システムを整備しなければならない。

経営数字データの作成プロセスは、「生産性を向上」させることで、事業成長に伴う業務ボリュームの増加を吸収しなければならない

調査レポートが示唆している三つ目の方向性は、経営数字データの作成プロセスについて、「生産性を向上」させることである。
経営数字データの主たる内容に決算情報があるが、その数字作成のとりまとめを担うのが財務・経理部門である。財務・経理部門が強い企業は、成長局面において営業や技術、製造といった事業部門の活動をしっかりと支えている。その一方で、財務・経理部門が弱い企業は、経営数字データの精度や迅速かつ効率的な作成といった点で、何らかの問題を抱えていることも少なくない。
このあたりを調査レポートの二つのデータ、『図5:【財務・会計部門の強さ別】財務・会計部門を強くするために必要なこと』と『図6:【従業員数別】財務・会計部門を強くするために必要なこと』で見てみる。

専門知識の向上

調査レポートによれば、『図5』で自社の財務・会計部門が「弱い」と感じている企業の多くは、当該部門を強くするために「財務・会計部門の専門知識」が必要であると回答している(46.6%)。しかも『図6』によれば、従業員数200人~599人のクラスでは、その割合が52.5%まで上昇する。


図5:【財務・会計部門の強さ別】財務・会計部門を強くするために必要なこと


図6:【従業員数別】財務・会計部門を強くするために必要なこと

これは事業の成長に伴って取り扱う会計事象が多岐にわたり始めたり、また、税務を意識していたのが利害関係者(株主や債権者など)への説明を意識するようになったり、さらには、経営課題や解決策を見つけるなど経営がうまくいっているのかを意識するようになったりと、財務・経理部門が果たすべき役割が変化していることと関係があると思われる。
特にこの従業員数200人~599人のクラスでは、決算にあたって顧問の税理士や会計事務所へ依存している状況から自立して、自社で適正な決算数値を作成する体制を組むことを目指す企業も多いことから、財務・経理部門の専門知識の向上を強く意識しているのではないだろうか。
ところで、財務・経理部門を強くするために「専門知識の向上」が最も必要であるという回答であったが、時間的な制約があるため、専門知識向上に伴い増えていく役割をこなすためには、必然的に業務を効率的に遂行する必要がでてくる。つまり、専門知識の向上と並行して業務生産性を向上させないといけない。

人員の増加

業務生産性の向上に関連するが、もう一つ気になる回答項目が、『図6』における「財務・会計部門における人員増」である。従業員数200人~599人のクラスで20.3%の企業が人員増加を必要と回答している。
一般に、中堅企業では財務・経理部門に専任の担当者を配置できず、総務や人事・情報システムなどの仕事を一部兼務していることも珍しくない。つまり、事業の成長に伴う業務量の増加に対して、絶対的な人員が不足している状況である。
たしかに現在の財務・経理部門の体制をみたときに、スキルの面またはマンパワーの面で人員を増やすことは効果があるかもしれない。ただ、それは業務量の増加に対して比例的に増やすのでなく、並行して業務生産性を向上させないと人件費等固定費の増加が収益の圧迫要因となってしまう。

ITの活用で対応する

それでは、財務・経理部門の業務生産性を向上させるにはどのような方法があるのだろうか。従業員数200人~599人のクラスにとってのヒントも調査レポートから得ることができる。
『図5』によれば、自社の財務・会計部門が強いと思っているクラスでは、それ以外(弱いと思う、どちらとも言えない)のクラスと比較して、「基幹システムと各業務システムとのデータ連携」が財務・会計部門を強くするために必要と考えている傾向が強い。これは前述の専門知識の次に高い割合となっている。
また、当該項目を『図6』で従業員数別に見ると、従業員数50人~199人、200人~599人、600人以上と大きくなるにしたがって割合が下がっていく。これは、経営数字データの作成プロセスにおいて、従業員数規模が大きくなるにしたがって、人手を介さずにシステム間の連携を図らざるを得ない(その結果、すでに実現できているため、必要と考える割合が減少している)と考えられる。
さらに、『図6』で従業員数600人以上のクラスでは、「財務・会計分野のシステムの高機能化」が「専門知識」の次に高い割合となっている。これは、より高度な業務をシステム化する、また、より多くの業務処理で自動化を進めたいニーズの表れと考えることができる。

このように、中堅企業にとって、事業成長に伴う業務ボリューム増加を吸収するためにも、経営数字データの作成プロセスは、ITの活用を手段に「生産性を向上」させることが求められていると言えよう。

まとめ

以上、調査レポートの内容をもとに、中堅企業にとって経営力を高めるための「経営数字データ」とは何かをみてきた。
経営数字データは、企業の健康状態を表す診断結果の数字である。企業を効率的かつ健全に経営していくためには、様々な角度から日常的に関心を持ち管理監督していくことが重要である。ここで言う「様々な角度」というのが管理会計のしくみに相当する。課題抽出や解決方針の決定といったマネジメント層の意思決定の合理性を高めるためには、管理会計のしくみを通じて得られる質の高い経営数字データを欠かすことはできない。
その経営数字データの作成・提供を担う財務・経理部門は、企業の継続的な成長を支えるためにインフラ部門としての役割が期待される。

ポイント

  • 経営数字データはマネジメント層にとって、「意思決定に資する精度」でなければならない
  • 意思決定を支援する経営数字データは、「迅速かつ適時」にマネジメント層へ伝わらなければならない
  • 経営数字データの作成プロセスは、「生産性を向上」させることで、事業成長に伴う業務ボリューム増加を吸収しなければならない

著者プロフィール

金子 彰良 氏

仰星マネジメントコンサルティング株式会社 プリンシパル

金子 彰良 氏

公認会計士、ITコーディネータ

慶應義塾大学経済学部卒業。大手監査法人系のコンサルティングファームを経て、仰星マネジメントコンサルティング株式会社に所属。
経理・財務分野を主な専門領域とし、決算の早期化や内部統制報告制度への対応、経理シェアードサービスセンター構築の支援に加え、各種ERPパッケージの導入コンサルティングと構築フェーズにおけるプロジェクトリーダーを歴任。
【著書】
・『内部統制評価にみる「重要な欠陥」の判断実務』(共著、中央経済社)
・『阻害要因探しから始める決算早期化のテクニック』(共著、中央経済社)

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