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Japan

第14回 日本の製造業が考えるべき遺伝子組み換え・食品トレーサビリティシステム

日本の製造業革新トピックス

富士通マーケティング 製造業サポート推進チーム

2017年03月24日更新

遺伝子組み換え技術では、生産者あるいは消費者の求める性質を効率よく出現させることができる点や組み込む有用な遺伝子が種を超えていろいろな生物から得られる点などが、従来の品種改良とは異なります。こうして自然界の法則を無視した遺伝子操作を行うことは、人がその食物を食べた場合に体に影響を与えるのではないかとの懸念がされています。
日本の問題を考えるにあたり、海外の事例も見てみましょう。

64カ国で表示義務、ただし基準は各国で異なる

米国食品安全センター(Center for Food Safety: CFS)によると、日本を含む世界64カ国が遺伝子組み換え食品の表示を義務化しています。しかし難しいのは各国でどのレベルまで表示すべきかという指針が異なる点です。
日本の厚生労働省が認可した遺伝子組換え食品は200種類以上ありますが、表示義務の対象になるのは、大豆、じゃがいも、なたね、とうもろこし、わた、てんさい、アルファルファ、パパイヤの8種類の農作物と、これらを原料として組み換えられた遺伝子やタンパク質が加工後も検出できる33食品のみとなっています。
第34回でお伝えした通り、製造の過程で組み込まれた遺伝子やその遺伝子が作る新たなタンパク質が技術的に検出できない場合、製品への表示は義務付けられていません。また、加工食品の場合は主な原材料(全原材料に占める重量の割合が上位3位までのもので、かつ原材料に占める重量の割合が5%以上のもの)にあたらない場合は表示が省略できることになっています。
一方、欧州は遺伝子組み換え食品に対する表示基準が厳しく規制されており、遺伝子組み換え技術を用いている食品は原則として、すべて表示する義務があります。

混迷を極める米国の遺伝子組み換え表示、国民の9割以上は表示望む

米国での状況はかなり混迷を極めています。
現在メイン、コネチカット及びヴァーモントの3州では、遺伝子組み換え食品表示を義務付ける法律があります。州によっては、遺伝子組み換え作物の栽培を禁止している州もあります。米国では、遺伝子組み換え食品に対する国民の関心は高く、30以上の州で表示義務を定めた法の制定を求める運動が行われています。ニューヨークタイムズ、ロイター通信、ワシントンポストといった大手メディアが実施した世論調査でも、90%以上の国民が「遺伝子組み換え食品を表示すべき」と回答しています。
こうした世論のなか、米国下院は2015年7月、「安全で正確な食品表示法(The Safe and Accurate Food Labeling Act)」を可決しました。これは、遺伝子組み換え食品の表示を阻止する法案で、上記の通り既にいくつかの州で義務付けられている遺伝子組み換え表示を求める州法を無効とする連邦法です。結局同法は上院で取り上げられず、実際には廃案となりましたが、国民から強く要望されているにも関わらず米政府が遺伝子組み換え食品に対する表示の義務付けに腰が重いのは、表示義務化を避けたい食品業界やバイオ、化学薬品企業がロビー運動を行っているためとみられています。
加工食品の70%に遺伝子組み換えの原材料が含まれているといわれる中、米国食品製造大手ジェネラル・ミルスは同社の代表的製品であるシリアルの「チェリオス」から遺伝子組み換え成分を排除し、「Not Made with GMO Ingredients」と任意表示すると発表しました。実際のところ、主原材料は全粒オートムギで、これは遺伝子組み換え作物ではありません。遺伝子組み換え成分が使われていたのはトウモロコシ由来のコーンスターチと、テンサイ由来のしょ糖で、これを遺伝子組み換えではない成分に切り替えるという取り組みです。
実際のところほとんど無意味とも思える取り組みですが、同社の発表が世論から大きく歓迎され、消費者の購買行動に影響を与えるのであれば、米国の遺伝子組み換え食品をめぐる事情は深刻さを極めているといえるでしょう。

TPPでは遺伝子組み換え食品の情報交換をするための作業部会を設置

先ごろ日本などが調印した環太平洋経済連携協定(TPP)の協定文書では、大豆などの遺伝子組み換え食品に対し、情報交換をするための作業部会が設置されることが明らかにされています。
遺伝子組み換え食品については、各国が「承認申請への必要書類の要件」「安全性の評価の概要」「承認された産品の一覧表」を公表し、たとえわずかであっても遺伝子組み換え作物が混入した事例があれば、参加国間で共有するよう求めていくと取り決められています。
また、輸入国から要請があれば、輸出国の食品加工企業は情報共有を進めることが推奨されています。
日本など、遺伝子組み換え食品の表示にセンシティブな国に一定の配慮がなされたといえますが、今後貿易量が増えるなか、米国などがさらなる市場開放を求めることも予想されます。
遺伝子組み換え食品の安全性と食品のトレーサビリティーをめぐる問題を考えるにあたって、TPP交渉の行方も注意を払っていく必要があるといえます。

著者プロフィール

富士通マーケティング

株式会社富士通マーケティング 製造業サポート推進チーム

20年以上のサポート経験から培ったスキル・ノウハウを基に、富士通マーケティングの先進の製造業サポート推進チームが、日本の製造業の動向や現状の課題を紹介していきます。
基本のQCDや環境、安全など、毎週、旬なトピックスを展開します。

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