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Japan

第13回 止まらぬ海外生産・グローバル化 いまや日本の製造業の海外進出は必須なのか

日本の製造業革新トピックス

富士通マーケティング 製造業サポート推進チーム

2017年03月10日更新

第3回でご紹介した国際協力銀行の「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告-2015年度海外直接投資アンケート結果(第27回)」では、2014年度実績の海外生産比率は35.1%で、回答企業は今後も海外生産を継続するつもりだということをお伝えしました。中でも自動車の海外生産比率は2014年度実績で44.6%となり、主要4業種で最も高くなっています。自動車には多数の部品やコンポーネントが付随することから産業のすそ野が広く、今後も中小企業を含め多くの日本企業が海外に生産拠点を構えるでしょう。
しかし、海外生産が必須かというとそういうわけではなく、風向きは多少変化しているようです。

為替の円安進行や海外の人件費上昇で国内回帰

同調査では、円安が進行した2013~2014年度において、海外から生産拠点を日本国内に戻す「国内回帰」をしたかどうかについても質問しています。
国内回帰を実施した企業は9.9%(55社)で、2015年度以降に実施計画がある企業を含めると13.8%(77社)に上っています。
77社を業種別に見ると、電機・電子が15社、自動車が14社、化学が10社となっています。
国内回帰を実施した企業(※実施計画ありを含む)に移管対象製品/商品を尋ねたところ、主に日本市場で販売する汎用品と回答した企業が半数となりました。75社中51社は、中国の生産拠点から国内へ移管しています。
国内回帰を実施した理由は「円安により、日本からの輸出競争力が高まったため」が最も多く、次いで「海外拠点での労賃が上昇したため」となっています。移転元の生産拠点としてもっとも回答が多かった中国は近年賃金の上昇が著しいため、移管につながったと考えられます。

製造業の国内回帰の動き3パターンと企業例

製造業の国内回帰の動きは、主に3パターンに分けられます。それぞれ具体例とともに見てみましょう。

  1. 国内工場の稼働率引き上げ
    • 某総合電機メーカー:エアコン、電子レンジ、洗濯機など一部の上位機種(2015年春以降の新製品)生産を中国から国内拠点に移管
    • 某電子部品・光学機器メーカー:複写機やカメラの高価格帯製品の国内生産比率を今後3年以内に4割から6割に引き上げ
    • 某自動車メーカー:北米向けSUVを国内と韓国の拠点で追加生産
  2. 国内の設備投資を増強
    • 某電子素材部品メーカー:スマートフォンや自動車向け電子部品工場を国内に新設
    • 某AV機器メーカー:画像センサーの国内生産拠点を増強
  3. 国内調達率の引き上げ
    • 某自動車メーカー:2016年度モデルから国内部品調達率を引き上げ
    • 某輸送用機器メーカー:2015年2月発売モデルの国内部品調達率を8割まで引き上げ

「メードインジャパン」でコモディティ化する家電の差別化図る

某総合電機メーカーは海外で生産してきたオーブンレンジを兵庫県の工場に移管するなど、家電の約40機種を国内生産に順次切り替えると表明しました。円安で海外生産のうまみが減ったためだけでなく、「メードインジャパン」を打ち出すことで高品質をアピールし、低価格ながらある一定の品質を保った製品で追い上げを図る中国・韓国メーカーとの差別化を図るためだと考えられます。某電子部品・光学機器メーカーの高価格帯製品の国内移管も同じ構図だと考えられます。
某空調機・化学品メーカーも中国で生産している国内向け家庭用エアコンの製造を滋賀県の工場へ移す方針を示しています。

国内回帰の流れは限定的、中小企業は取引先次第

こうした国内回帰の流れが加速し、海外に転出した生産拠点がすべて日本に戻ってくるかというと、なかなか難しいようです。
国際協力銀行の調査では、国内回帰を実施せず、当面実施予定のない企業は78.6%(437社)で回答企業の大半を占めています。
業種別では、鉄鋼(91.7%)、窯業・土石製品、非鉄金属(いずれも88.9%)といった素材系業種と、精密機械(88.9%)などが多くなっています。
また、1ドル=124円程度の為替水準としてが中期的(今後3年程度)に継続した場合、またさらに円安が進行した場合、国内回帰をするかという問いに対しては、過半数の企業(319社、56.6%)が「為替変動にかかわらず、基本的に需要のある国・周辺地域で生産する」と回答しました。
国内回帰の意向は、大企業と中小企業によっても異なっています。中堅・中小企業の36.1%が国内回帰しない理由について「主要取引先が日本に移管しないため」と回答。大企業(23.2%)を12.9ポイント上回る結果となりました。

日本のマザー工場と海外工場で生産分業

国内回帰を実施しなかった理由として「海外と国内の分業体制が確立しているため」がもっとも多く、日本のマザー工場と海外工場で生産品目や生産体制などを分業するというのが昨今のトレンドとなっていることが伺えます。
円安で国内拠点に生産移管をしようにも、少子高齢化で国内の労働人口は減少しており、賃金は高止まりです。その一方で、日本国内の生産拠点では一人当たりの人件費は高くなるものの、優秀な人材が採用しやすく、高品質な製品を生産できるという強みがあります。
上述したパナソニックやキヤノンの例のように、高い技術力が必要とされる高価格帯製品の一部を国内生産に戻し、その他普及品は海外生産を継続する、というのが大まかな流れになるとみてよいでしょう。

著者プロフィール

富士通マーケティング

株式会社富士通マーケティング 製造業サポート推進チーム

20年以上のサポート経験から培ったスキル・ノウハウを基に、富士通マーケティングの先進の製造業サポート推進チームが、日本の製造業の動向や現状の課題を紹介していきます。
基本のQCDや環境、安全など、毎週、旬なトピックスを展開します。

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