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Japan

第12回 目指される生産プロセスのイノベーション・最新テクノロジーで技術継承は実現できるのか?

日本の製造業革新トピックス

富士通マーケティング 製造業サポート推進チーム

2017年02月24日更新

日本のものづくりの現場を支えてきた中小企業。町工場ともいわれるこうした生産現場では、「切る」「削る」「曲げる」「みがく」「接合する」「測る」といったものづくりの基盤となる技術を職人技の域にまで高めた技術者たちが技術を追求し、「メード・イン・ジャパン」の高品質化、高精度化、高付加価値化に貢献してきました。
しかし、少子高齢化や生産現場の海外移転などで、こうした熟練技能者は減少傾向にあります。
厚生労働省の調べによると、例えば、鋳物砂型工、鋳物工、モールディングマシン工といった「鋳物工」は、1991年に3272人だったのが10年後の2000年には1974人に、やすり工、ラッピング工、機械部品仕上工、金型仕上工、治具仕上工は、4937人から3314人に減少しました。
熟練技術者の持つ技能やノウハウを未来に活かしていくために、知識や技術、勘などの知的資産を可能な限り客観化・データ化し、ITによって「デジタル技術」として置き換えていく必要があります。
3Dプリンタービッグデータなどの最新技術は、ものづくりの技術継承にどういう役割を果たせるのでしょうか。

「デジタル・マイスタープロジェクト」でものづくり技術のデータ化を実施

ものづくり技術のデータ化という課題に取り組む際に参考となるのが、産業技術総合研究所が平成13年から4年間実施した「ものづくり・IT融合化推進技術(デジタル・マイスタープロジェクト)」という事業です。
金型分野中心にITによる技能の技術化を推進する、機械部品の加工を行う中小製造業のものづくり力強化を目指すといったプロジェクトが実施されました。
溶接、鋳造、鍛造、切削、レーザ加工、物理・化学蒸着など一般的な機械部品の加工に用いられる19の技術分野について、加工技能の整理・体系化を行い、そのデジタル化された結果をインターネット上で「デジタルハンドブック」として公開するという取り組みです。
機械部品を加工する場合、一つの加工法で済む場合もありますが、複数の異なる加工法を施すことで完成に至るケースも多くあります。このプロジェクトでは、それぞれの加工法に関する技能の技術化を、前後の加工法との関係なども含めて体系的に明らかにしたのが特徴です。
加工の基本となる情報については、ものづくり先端技術研究センターで公開して多くの人がアクセスできるようにし、企業内のノウハウに属す部分は社内で蓄積していく計画です。
プロジェクト実施当時はまだビッグデータという概念がなかった時代ですから、「インターネットハンドブック」として技術の基本をデータベース化するという事業内容になっていますが、現在であれば技術者にウェアラブルなセンサーを取り付けて直接技術を測定し、ビッグデータ化して再現する、などと発展できそうです。

熟練技術者に余力をもたせ、ものづくり全体の底上げをはかる

設計・製造支援アプリケーションのためのプラットフォーム開発というもうひとつのテーマでは、中小製造業で活用されているCAD/CAM/CAE技術を企業ごとの個別要求に沿って実現するため、企業ごとに必要なIT機能を容易に構築でき、改良していくために必要な基盤ソフトウエアを提供するという事業です。データベース化した加工技能のデジタル記述情報と協調可能な設計・製造支援のプラットフォームを開発することで、製品開発を容易にしていく目的があります。
現在では、3Dプリンターの登場で、製品の製造に必要な各種数値さえ入力すれば、熟練の技がなくても容易に生産が可能な時代になっています。
これら2つのプロジェクトのように、熟練した加工技術をデジタル化することで、経験の浅い作業者でも、熟練技能者に近いレベルの作業が可能になります。これはけして熟練技術者を駆逐したり、その存在価値を否定したりするといった意味ではありません。熟練技術者に余力が生まれることで、新たな付加価値の創造にその力を振り分け、ものづくり全体の底上げをはかることが可能になるのです。

職人芸の世界をセンサーで計測・再現

製造業のものづくり現場以上に技術継承で危機的状況にあるのが、伝統工芸の世界です。
名古屋工業大学の藤本英雄教授(当時)は、伝統工芸の技をデジタル化して継承するというプロジェクトに取り組んでいます。
陶芸家の上半身に3Dモーションキャプチャーを、指にはデータグローブを装着し、ろくろで作陶を行う際の身体の動きを測定します。計測したデータをもとに、腕と手、ろくろの上で回転する粘土が映し出されるバーチャルCGムービーを作成しました。これにより、回転している粘土の内側の動きや、指との接地面の動きなど、通常撮影しづらい部分の動きまで確認しやすくなりました。
次段階として、動きだけでなく、力の入れ方や圧力、つまり力覚をセンサーで記録して再現するというフェーズに移行します。指先に小型の感圧導電性エラストマーセンサを貼り付け、人差し指と親指で粘土を挟み、粘土を引き上げる動きを測定したところ、「親指と人差し指の操作バランスが良いときれいに変形する」「粘土の厚さが薄く半径が大きくなると、力をこめなくてもきれいに変形する」といったことが判明しました。こうして収集されたデータは、熟練の技の解明に一役買っていくことは間違いありません。

著者プロフィール

富士通マーケティング

株式会社富士通マーケティング 製造業サポート推進チーム

20年以上のサポート経験から培ったスキル・ノウハウを基に、富士通マーケティングの先進の製造業サポート推進チームが、日本の製造業の動向や現状の課題を紹介していきます。
基本のQCDや環境、安全など、毎週、旬なトピックスを展開します。

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