建設業・土木業界向けの「建機レンタル」の大手、太陽建機レンタル株式会社様(以下同社)は、関東から九州までの全24都府県を106支店で網羅し、各地域でメンテナンスの行き届いた建機を迅速にレンタルサービスできる体制を構築しています。広域の多店舗経営を推進する中で浮彫りになった課題が従来の基幹システムにおけるサーバの容量不足や拡張性でした。同社は、既存システムのソフトウェア資産を活かしつつ、最新のOSやハードウェアへの対応を可能にする「モダナイゼーション」と呼ばれる手法で基幹システムの刷新を決断。その目的と効果について常務取締役管理本部長の久松雅文氏とシステム開発室室長の平野隆幸氏に伺いました。
[2014年10月29日 掲載]
導入の背景 | 導入の経緯 | 導入効果 | システム概要 | 今後の展開 | お客様情報
同社の強味は、建設・土木向けの機械器具をはじめとするさまざまな種類の建機を自社で保有し、全国の各地域でゼネコンや地元の建設会社からのあらゆるニーズに即応できる体制を整えていることです。本社がある静岡エリアをはじめ、営業展開する各地では、2020年に東京で予定されているスポーツイベントに向けたインフラ整備、さらには東京・名古屋を結ぶ「中央リニア新幹線」の敷設など、今後、さらに建設・土木需要が喚起されると期待されています。
一方で、同業界では人手不足などの問題もあり、作業効率向上のために建機を効果的に活用する動きが浸透しています。同社・常務取締役の久松氏は「お客様のご期待に応えるためには、安心・安全で、メンテナンスの行き届いた建機の品揃えを充実させて、かつタイムリーに提供することが今後ますます重要になってきます。」と語ります。そのため、各店舗における賃貸機械を増強し“お断りをださない取組み”を推進。「最高の支店環境を整え、最高品質の機械を準備し、お客様に最高のおもてなしを提供するという“最高のお客様対応”の提供が当社の使命と言えます。その実現のためには、合理的なシステムでスピードと業務効率を向上させる必要がありました。そこで、基幹システムの刷新に踏み切ったのです。」(久松氏)
従来の基幹システムには、建機の「レンタルシステム」をはじめ、日々現場が利用するシステムが組み込まれ、内勤社員に加え、全支店の営業社員も使用していました。業容が拡大するなか、月末や月初にはアクセスが集中し、サーバの負荷が100%ちかくになることもありました。システム開発室室長の平野氏は、Windows 2000 Serverをベースに構築され、仮想化技術で運用されていた従来のシステムの課題を「サーバの容量不足と拡張性だった」と指摘します。「古いOSと古いプログラム言語で、今後の情報処理量の増大には耐えられないことは明らかでした」(平野氏)。
基幹システムの刷新を検討していく中で、同社が重視したのが事業継続性の確保と拡張性、そしてセキュリティです。「基幹システムが停止すると仕事が完全にストップしてしまう。まず『止まらない』ことが大前提。同時に今後の業容拡大、人員増加に対応できる拡張性、将来的に営業社員がモバイルで活用することも想定しセキュリティも重視しました」(久松氏)。
その結果、富士通マーケティングのクラウド環境移行サービス「FUJITSU APMモダナイゼーションサービス for Cloud」の導入を決断。モダナイゼーションとは、既存システムで稼働していたソフトウェアやハードウェアなどの資産をできる限り活かしながら、最新OS、開発言語、製品へと置き換える手法です。この手法とあわせて、基幹システムを稼働させるサーバを、安全基準が世界トップクラスの富士通データセンターに設置。センターのサーバ側にOSやアプリケーションを格納し、クラウド環境でシンクライアントからアクセスすることで、社員の端末上にデスクトップ環境を再現する「仮想デスクトップ」(DaaS:Desktop as a Service)の環境も整えたのです。
「DaaSなら数年後にハードを入れ換えても、OSや設定内容がすべてサーバ側にあるので、設定の手間がなくなります。営業社員がオフィスに戻ったときに自分のパソコンがなくても、空いているパソコンで“自分のデスクトップ画面”が表示される。モバイル端末で活用すれば、外出先でも同様に活用できます。これは将来、確実に効果を発揮してくれます。(平野氏)
新しいシステムの導入にあたっては、稼働中のシステムを「止めない」ことが不可欠でした。そのため、関東から九州までの106支店の全てにCEを配置し、土曜日の業務終了時間からわずか数時間でシステムを刷新。「とくに気をつけたのは現場に迷惑をかけないことです。業務パソコンは1000台を超す規模にもなりますから、それらを旧システムから新システムに環境を短時間で切り替え、問題なく業務できるかを念入りに確認しました。」(平野氏)。それらの確認作業を含めても翌営業日の業務開始時には通常どおりの業務にあたることが可能になっていました。
同社では、基幹システムが刷新されたことで、「月次の集計処理にかかっていた時間が約10時間から4時間を切るまでに短縮されました」(平野氏)と効果が表れています。「単純計算で2.5倍の高速化ですが、効果は単に“スピード”だけでありません。従来、10時間を夜間処理していたのでシステム開発室スタッフの負担も大きいものがありましたが、処理時間が大幅に短縮されたことでスタッフを貼り付けておく必要もなくなり、余力を他の仕事に回せます。その効果が大きいのです」(平野氏)。
また、サーバの負荷が大幅に改善したこともメリットが大きいとのことです。「社員の基幹システムへのアクセスは、接続ライセンス数でみると630から1170へとほぼ倍増していますが、サーバ負荷は月末月初でも30%程度。今後10年間でさらに2倍の約2300ライセンスに拡大しても十分対応できます。拡張性を確保できているので安心です」(久松氏)。
同社が、将来的に目指しているのが、「基幹システムを進化させて、『月次の集計』という概念自体をなくす」(平野氏)ことです。「常に自動的に決算が締まっている状態であれば、いつでも経営指標となる数字を確認できるようになります。より高度な経営分析や判断も可能となるでしょう」(久松氏)。
そういったシステムを構築するには、ともに目標を共有できるパートナーの存在が必要です。「106支店の一斉切り替えという大きなプロジェクトを実現できたのは、富士通マーケティングが富士通グループの総合力で、一緒にさまざまな課題を乗り越えてくれたからだと感じています」(平野氏)。
レンタル業務は、製品を作って販売する業務とは異なり、建機のサイクルを考えて、故障の際の対応、一定期間を経た建機を売却するか処分するかなど、さまざまな状況を想定しての最適のビジネスモデル構築が求められます。「だからこそ、今後もより効率的なICTシステムの導入がますます重要となってくるのです」(久松氏)。新たなステップを見据えた取り組みが始まりつつあるようです。
お客様名 | ![]() ![]() |
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所在地 | 静岡県静岡市駿河区大坪町2-26 |
代表者 | 代表取締役社長 西井戸 邦彦 |
設立 | 1986年1月23日 |
資本金 | 11億4,047万2千円 |
年商 | 603億円(2014年5月期) |
社員数 | 1,867名(2014年9月現在) |
営業拠点数 | 106支店(2014年10月現在) |
事業内容 | 1.土木・建設機械器具、各種トラック・高所作業車、電気機械器具、プレハブ・コンテナハウス・トイレ・事務所備品などのレンタル業務
2.運搬機械の製造・修理・販売・レンタル並びに輸出入業務 3.公害防止機械器具、仮設資材のレンタル並びに販売業務 4.損害保険代理業務 5.建築工事業 |
(注)記載されているお役職等の情報につきましては、2014年10月現在のものです。
(注)記載されている製品名は各社の商標または登録商標です。
株式会社富士通マーケティング
中部営業本部 静岡支社 第二営業部
中村 正樹
「モダナイゼーションからイノベーションへ」太陽建機レンタル様のICTへの取り組みに最適な言葉です。激しい環境変化に応えるため、ICTへのこだわりにより、現状に満足することなく、常に高いレベルで「改善」と「変革」を追求されています。今回のモダナイゼーション推進は、富士通グループとの初の取り組みでしたが、大きな問題もなく無事本稼動できたことは、私達にとっても大きな自信となりました。これから益々発展されるお客様の継続的なイノベーションを、富士通の総力でご支援させていただきます。
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