新潟、山形、秋田の三県におけるトラック運送事業者約500社を組合員として交通共済事業を行っている、新潟地方交通共済協同組合様(以下、同組合)。トラック運送事業者の社会的、経済的な地位向上を目的に、その一環として交通事故防止対策や事故発生時の補償、被害者救済活動に取り組んできました。同組合では、トラック運送における交通事故低減を目指し、自治体・道路利用団体向け情報提供・データ分析サービス「FUJITSU インテリジェントデータサービス 急ブレーキ多発地点情報提供サービス」を導入。「急ブレーキ多発地点」に関する情報を組合加入企業に提供し、事故防止に活用する取り組みを進めています。サービス導入の経緯と効果について、同組合の専務理事の内田裕二氏、事故防止対策室 室長の坂場茂氏、事故防止対策室 部長の髙村行雄氏にお話を伺いました。
[2016年8月10日 掲載]
導入の背景 | 導入の経緯 | 導入の効果 | 将来の展望 | お客様情報
日本における物流の中核を担うトラック輸送。しかし昨今では、競争の激化やドライバーの高齢化や人手不足など、業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。同組合・専務理事の内田裕二氏は、「トラック輸送は、国内における貨物輸送量の約6割を占めています。一方で、9割を超すトラック輸送事業者が中堅・中小の事業者です」とトラック輸送業界の状況を語ります。「そうした事業者に対する交通事故の補償、何よりも交通事故を起こさない対策強化が、従来にも増して重要な取り組みになってきました」(内田氏)と背景を語ります。
同組合の事故防止対策室・部長の髙村行雄氏は、「これまでもドライバー向け講習会や、各事業者の経営者を対象にした事故防止研修会などを実施してきました。その中で、いわゆる『ヒヤリ・ハット情報』の共有化を図れないかと考えるようになりました」と語ります。事故の多発地点情報だけであれば、警察庁の発表資料などがありますが、「事故の多い場所を知るだけでなく、例えば『ある特定の地点では飛び出しが多く急ブレーキが多く踏まれる傾向にある』といった具体的な情報を共有できれば、より実態に即した事故防止に役立ちます。そうした情報を、組合企業に所属するドライバー間で共有し活用できる方法を探していました」と語ります。
同組合では情報収集を進めていく中で、2015年3月に、株式会社富士通交通・道路データサービスが企画し富士通マーケティングの提供する自治体・道路利用団体向けの情報提供・データ分析型サービス「FUJITSU インテリジェントデータサービス 急ブレーキ多発地点情報提供サービス」の存在をWebサイトで知りました。髙村氏は、「全国を走る約7万台のトラックから、1秒間に時速10㎞を超え減速した『急ブレーキ情報』を収集・分析し、交通事故リスクの高い地点として示してくれるサービスに対し、興味を持ちました」と振り返ります。このサービスでは、トラックに搭載した「デジタルタコグラフ」で取得した詳細かつ膨大な運行情報をクラウド環境にビッグデータとして蓄積し活用するため、「データが増えるほど、情報の精度と信頼度が高まります。将来的にもより有効性が期待できると考え、サービスの導入を検討しました」(髙村氏)と選定のポイントを語ります。
また、同組合の事故防止対策室 室長の坂場茂氏は、「ドライバーの『安全に対する意識』が変わることを期待できたことも選定のポイントでした」と言います。「損害保険会社や県警からも、事故多発交差点などの情報提供はあります。ただし、それらは発生した事故そのものの情報です。運送事業者が真に必要なのは、プロドライバーが実際に危険を感じた『事故以前のヒヤリ・ハット情報』です。それを提供することで、ドライバーの安全運転に対する意識が変わることを期待しました」(坂場氏)。
その後、同組合では、本サービスを活用した取り組みを、全国のトラック運送事業者向け共済組合が加盟する「全国トラック交通共済協同組合連合会」の新規事業として応募。「ICT活用による先駆的な事故防止対策との評価を受け採用されたことを契機にサービス導入を決めました」(髙村氏)。
同組合では、急ブレーキ多発地点に関する情報をまとめ、2016年4月から組合加入企業に対してインターネットの会員専用Webサイトや小冊子を通じて提供しています。さらに2016年8月からは事故防止キャンペーンとして、各事業者の運行管理者を対象とする研修会において、情報の活用方法に関する提案活動や、情報の活用状況、その効果について情報収集していきます。
サービス導入による具体的な効果検証はこれからとなりそうですが、すでにその手ごたえは感じているようです。内田氏は、「各事業者でもヒヤリ・ハット情報を収集していましたが、独自のもののため汎用的ではありません。広域の情報を共有することで、ドライバーへのより適切な注意喚起や指導が可能となり、さらに高い効果が期待できます」と語ります。
ただ、内田氏は「事故を減らす取り組み自体に終わりはありません」と語ります。「事業者への研修会などで情報の有効活用を呼びかけ、たとえばドライバーの出発前の点呼時に危険地点についての注意喚起をしてもらうなど、各事業者に具体的な施策を提案していきます」(内田氏)。
また、坂場氏は、「ドライバー同士がヒヤリ・ハット情報を交換するのが事故防止にとても有効です。このサービスでは、急ブレーキ多発地点に関する情報をドライバーに伝えるのに役立ちますが、次はそれをドライバー同士で共有し活用して欲しいと考えています。そうした意識を高めるための研修なども実施し、導入効果をさらに高めたいと考えています」と、今後の期待を語ります。
同組合では今後、組合加入事業者に対して、管轄圏内である3県の情報だけでなく、管轄圏外の情報提供も検討しています。髙村氏は、「全国のトラック死亡事故の実態を見ると、52%が車籍のある事業圏内で発生、48%がその圏外で発生し、ほぼ半々です。あらかじめ危険箇所が分かっている圏内を運転するのと、初めての場所とでは精神的なストレスの面でも大きな違いがあります。そのため、圏外の情報をいかに事業者に提供していくかが今後の検討課題です」と語ります。
また、坂場氏は、より緻密で詳細なデータも事故防止に有効と考えています。「例えば、国道7号線のこの場所が危険箇所というように、路線別のデータを提供していただきたい。事業者でもトラック運行の路線や、事故などがあった場合の迂回路などを指示していますが、その時に危険箇所があらかじめわかっていれば、ドライバーに具体的に指示できます」(坂場氏)。さらに、事故の概要や集中する時間帯、急ブレーキを踏んだ時のハンドルの状態、車両が大型か小型かといった情報も、事故防止に役立ちます。「より広域かつ路線別の詳細データといった、運送事業者のニーズにより適合した情報を提供できるようになれば、さらに事故防止に役立つでしょう。そこを、これからも富士通マーケティングの提案に期待したい」(髙村氏)。同組合の取り組みが他の地域へも拡大し、やがては全国規模での事故防止に効果を発揮する。期待と可能性は広がっていきます。
お客様名 | |
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所在地 | 新潟県新潟市中央区新光町6番地4(新潟県トラック総合会館3階) |
理事長 | 川崎 敬文 |
設立 | 1976年2月6日 運輸省新潟陸運局(現:国土交通省北陸信越運輸局)認可 |
組合員数 | 498社(平成27年6月30日現在) |
事業内容 | トラック運送事業者を組合員として交通共済事業 |
(注)記載されているお役職等の情報につきましては、2016年7月20日現在のものです。
(注)記載されている製品名は各社の商標または登録商標です。
(注)当Webページで利用している地図情報については、株式会社ゼンリン製となっております。
Copyright2016 ZENRIN CO.,LTD.(許諾番号:Z16LD 第1507号)
株式会社富士通マーケティング
首都圏営業本部 南関東支社
情報・サービス営業部
黒崎 智子(くろさき さとこ)
このたびは、新潟地方交通共済協同組合様に「急ブレーキ多発地点情報提供サービス」をご採用いただき、大変光栄に思っております。今後も、交通事故防止に有効なサービスや、その効果的な活用方法のご提案をさせていただく所存です。そして、ICTの力で、トラック運送業界全体の交通事故低減に貢献できれば幸いです。
株式会社富士通交通・道路データサービス
川崎 渉(かわさき わたる)
新潟地方交通共済協同組合様は「急ブレーキ多発地点情報提供サービス」を「事故防止研修会」などでご活用をいただくなど、これからもトラック運送業界における交通事故の一層の低減を目指していかれます。今後も引続き、本サービスを通じてさらに安全な交通環境の実現に貢献してまいりたいと考えております。