関東一円を拠点として3PL (third party logistics)事業を展開されている篠崎運輸株式会社様(以下同社)。「お客様の多様なニーズに基づいた物流メニューを創造し、荷主企業の物流パートナーとして、『顧客満足度』の更なる向上を支援する」をかかげ、安心、確実、スピーディな物流総合サービスを提供。多品種・少量・多頻度化する物流に力を発揮し、3PLとしての荷主サービスの拡充を図っています。
同社は2011年8月、さらなる運行情報システムの基盤強化のため、クラウド型運行管理システム「TRIAS/TR-SaaS」及びクラウド対応ネットワーク型車載ステーション(デジタコ) ドライブレコーダー(ドラレコ)搭載モデル「DTS-C1D」を導入しました。
今回の導入を決断された篠崎運輸株式会社 代表取締役社長 篠嵜 泰夫 氏、導入に尽力された同社 専務取締役 運輸事業部統括部長 山本 英之 氏、同社 運輸事業部管理部長 大鷲 曻男 氏、同社 経営企画部部長 篠嵜 元久 氏にお話を伺いました。
[2012年4月20日 掲載]
導入の背景 | 導入の経緯 | 導入システム | 導入効果 | 将来の展望 | お客様情報
昨今物流業界は多頻度少量配送や短納期配送への要望が増えている一方、大手3PL事業者の参入による価格破壊、CO2削減やエコ物流への潮流、ドライバーの安全管理強化など様々な課題が山積となっています。
同社は、すでにデジタコを導入し安全管理を強化していましたが、次の課題が浮き彫りになっていました。
経営方針として、何よりも安全を重視している同社。初期のデジタコ導入から5年以上を経過し、次なる取り組みを模索していました。
篠嵜社長は、次のように語ります。「安全運行を強化すると、売上が落ちるという懸念もありますが、これは安全運行に対する設備投資と考えています。たった1人のドライバーの過失で、会社が潰れるということもあります。事故を起こして、賠償問題が発生するよりは、未然に防ぐことにコストを掛けていきたい。安全運転を励行することは、当社が社会において責任を果たしているということ。運輸業界でのブランドを維持するためにも、安全をおざなりにすることはできません。」
「安全面の強化ということで、デジタコを導入。これにより、ドライバーの安全に対する意識が格段に変わりました。次の取り組みとして、国土交通省が公開している運輸安全マネジメント制度の体制に、実務をどれだけ近づけるかということでした。」(篠嵜 部長)
2009年8月から富士通マーケティング(以下FJM)とともに、新運行管理システムの検討を開始。
事故が起きたときまたは起きそうな時ドラレコで記録した画像を送付することや、アルコールチェッカーを運行管理日報と連動する、といった機能強化を要望しました。
2011年8月、クラウド型運行管理システム「TRIAS/TR-SaaS」、車載端末にはクラウドサービスに対応ネットワーク型車載ステーション(デジタルタコグラフ:デジタコ)ドライブレコーダー(ドラレコ)搭載モデル「DTS-C1D」を導入。
これにより、インターネットが繋がるパソコンがあれば、システムにアクセスでき、自分の業務パソコンで日報・車両の位置確認が可能となり、またクラウドであるため運行管理アプリケーション、車載アプリケーションはネットワーク経由で常に最新バージョンが利用出来るようになりました。さらに、複数拠点の情報をSaaSサーバで一元管理することで、システム運用コストの削減にもつながりました。
ドラレコ内蔵のデジタコで、FOMAのアンテナを実装。リアルタイムに運行状況を把握することができます。もともと、デジタコと画像を記録するドラレコは別々の筐体で、カードも別でした。それをこの機種で一体化。車両に急激な重力(G)が加わると前後4秒の動画を送信することが可能になり、事故発生時に、事務所で素早い対処が出来るようになりました。また、法定点検項目21項目を車載端末で入力可能とし、1日の終わりにインターネット経由でデータをPCに取り込むことで、点検項目が日報に反映されます。
前述のリアルタイムな運行管理機能に加えて、労務超過を事前に抑止する「拘束時間機能」や波状指数を利用した独自の「エコ&セーフティ評価方式システム」など、さらなる安全&経済運転を実現させるための多彩な機能を実装したサービスとなっています。
当初のデジタコ導入で、ドライバーの安全に対する意識が格段に変わりました。今回は、各車両にネットワーク型デジタコとカメラを2台設置、運転席の前方と左後方が写る設定にしました。当初ドライバーには抵抗がありましたが、今は安全性を重視ということに意識が変化してきています。
「ドライバーは家族です。家族の一員が事故の犠牲にならないように、徹底した安全管理をしたい。今はドライバーの意識も『自分達の命と安全を守る』という形に変わってきています。」(山本氏)
「事故が格段に減りました。通常普通車との接触事故だと1割から2割はトラックも責任を取られますが、保険会社に動画を見せたところ、当方の過失はゼロになったこともありました。事故が起こるたび、ドライバーと画像を検証し、それを繰り返すことにより、ほとんど重大事故が無くなりました。」(篠嵜社長)
「リアルタイムに重要な場面の画像を見ることができるようになったことで、ドライバーが戻ってこなくても、すぐに事故の対処が出来ます。以前はSDカードが戻ってこないと画像確認が出来ませんでした。またドライバーも120名くらいいますので、それを確認するのは大変でした。今は画像が送信されてきたとき確認できますので、初動が早くなりました。」(大鷲 氏)
1ヵ月の運転実績は、全ドライバーにフィードバック。運転評価が当初70、80点というドライバーもいました。現在では最低が95点ぐらいで100点を取る人も増え、安全運転が定着しています。
「初めてデジタコを導入した2、3年は燃費も向上しましたが、今ではもうこれ以上良くならないですね。うれしい悲鳴を上げています。」(大鷲 氏)
アルコールチェッカー連動
篠嵜部長は語ります。「配車効率が格段によくなりました。今までは、どの車がどこにいるか、ドライバーの報告でしか確認できませんでした。これがリアルタイムで分かるようになり、フリーな仕事が入った場合でも、一番近い空車はどこで、荷主までの到着がどれくらいか読めるようになりました。また荷主からの問合せも、今までドライバーに電話して確認していましたが、大体の到着予定を、画面を見ながらすぐお知らせすることができるようになりました。『可視化』出来たということで、非常にメリットが出ています。」
同社では、今まで経験を頼りに配車をしていましたが、リアルタイムに動態管理が可能となり、格段の効率化が図れるようになりました。
「当社の経営方針は、『感謝報恩の精神』です。これには3つの意味があり、1つは荷主様に対するもの。これは安全と輸送効率。2つ目は、公に対するもの。これは、公道を使って商売していますので、社会に迷惑をかけないこと。3つ目は、従業員と会社。相互の信頼関係。この3つの感謝報恩を方針としてかかげ、運輸業界のブランドを築いていきたい。安全に対する意識を、さらに強化したいですね。」
と、篠嵜社長。
同社は、新たな取り組みとして運行管理システムの「エコ&セーフティ」オプションを試行中。「なめらか走行」を強化することにより、ムダな加速、ムダな減速を減らし、燃費改善を実現しドライバーのモチベーションを向上する試みをしています。
今回基盤強化した運行管理システムを活用することで、更なる業務最適化と荷主サービスの向上を実現するとともに、クラウドサービスによる戦略的情報活用で、他社との差別化をし、新たな荷主獲得につなげていくことを目指しています。
お客様名 | 篠崎運輸株式会社![]() |
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本社所在地 | 埼玉県さいたま市南区白幡6丁目13番1号 |
代表者 | 代表取締役社長 篠嵜 泰夫 氏 |
設立 | 1971年4月25日 |
資本金 | 1億円 |
売上高 | グループ計 45億円(2010年3月期) |
従業員数 | グループ計 548人(パート・アルバイト含む) |
事業所 | 14 (関連 株式会社インフォゲート) |
事業内容 | 陸上貨物運送、倉庫管理、ビジネスサポート、介護事業
保有車両 約100台(2トン~13トン) |
株式会社富士通マーケティング
流通・サービス営業本部
流通統括営業部 運輸サービス営業部
辻 一磨
篠崎運輸様は、クラウド型運行管理システム「TRIAS/TR-SaaS」の初のお客様として、開発段階においてアルコールチェッカー連動や見やすい画面遷移の切替表示などのご要望を取り込み、システムに反映させることができました。クラウドという特性を活かし、多くのお客様からの要望を取り込むことで更なるサービス拡充が期待できます。また、わずらわしいサーバ管理等の手間も省けますし、災害時の事業継続という面でも、運輸サービスのお客様には手軽に導入できる有効なシステムだと思います。
今後も、篠崎運輸様のさらなる効率化・安全強化のお手伝いを出来ればと思います。
(注)記載されているお役職等の情報につきましては、2012年4月現在のものです。
(注)記載されている製品名は各社の商標または登録商標です。