発電所のタービンや新幹線のレール、国産ロケットの燃料装置など、社会インフラや産業設備における重要機器の振動、変位などの状態を監視する高精度なセンサ、モニタ、解析診断装置を製造する新川センサテクノロジ株式会社様(以下、同社)。日本国内だけでなく、電力や鉄道などインフラ整備が進む新興国を中心としたグローバル競争を勝ち抜くために、開発から設計、製造、資材・調達までの業務プロセス全体の効率化が求められていました。同社では、富士通の統合設計情報管理システム「FUJITSU Manufacturing Industry Solution PLEMIA(プレミア) グローバルエディション」を導入。図面や部品表の一元管理と、開発や製造など、部門間の情報共有の効率化を実現しました。また、電子部品情報サービス(CLCA : Component Life Cycle Adviser)も導入し終息部品情報の早期入手により、購買手配時の手戻りリスクを大幅に削減。執行役員 生産本部長の金子経輝氏、インフラ管理グループマネージャーの山野郁生氏、特注設計グループマネージャーの上田展崇氏に、導入の経緯と効果について伺いました。
[2015年10月8日 掲載]
導入の背景 | 導入の経緯 | 導入の効果 | 将来の展望 | お客様情報
発電所のタービンなど大型回転機械の振動監視には、微細な振動などを検知する様々なセンサが用いられています。例として直径3メートルほどの動翼が回転する大型タービンでは、回転軸の揺れ幅の許容範囲はわずか数10ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)。同社は、このわずかな揺れを異常振動として検知する高精度なセンサをはじめ、国産ロケットの燃料供給装置における回転軸の動きを計測する変位計などを製造しています。
国内市場ではトップシェアを誇る同社製品は、発電所などインフラ整備が進む新興国においては、世界中の競合他社と品質やコスト、納期面での競争になります。金子氏は「海外市場では何よりもスピードが重要」と指摘します。市場ニーズの変化を素早くキャッチし、ニーズに合った製品をいち早く市場投入するスピードです。「メーカーの生命線である製品開発プロセスの合理化をはじめ、技術部門間での情報共有、作業効率の向上など、常に改善が求められています。それを実践するためにもPLMシステムの導入が必要だと判断しました」(金子氏)。
同社では、PLMシステムの導入にあたり開発、設計、製造、資材、インフラ管理の各部門から人員を選出してプロジェクトチームを結成。開発と生産に関する業務を網羅した課題の洗い出しを実施しました。その中で浮き彫りになった課題の1つが図面管理です。同社では、CADで作成した図面を出力して所属長の承認印を押印し、次の部門に渡すフローがあります。部品点数が2000点にもなるような製品では、機械図面や電気・回路図面などで100枚を超すことも珍しくはありません。特注設計グループマネージャーの上田氏は、「新製品のデザインレビューで改善点があると、図面を何度も修正し、紙の枚数も増えます。差し替え不備がないかなどの確認に時間や手間がかかっていました」と振り返ります。さらに重要な課題が、図面の設計変更・版数管理だけでなく、部品差し替えの影響範囲を迅速に把握するための部品表管理でした。開発、設計、製造、資材など関連部門で製品構成の最新版をリアルタイムに共有し、部品やユニットの標準化と流用率を高める仕組みの構築が必要でした。同社では、製品開発の一連のプロセスを効率化できる図面管理・部品表管理のPLMシステムを検討し、統合設計情報管理システム「PLEMIAグローバルエディション」を導入しました。
システムを選定した理由について、金子氏は「富士通マーケティングからの提案が図面や部品表管理のICT化だけに留まらず、開発・生産プロセス全体を捉えた技術部門の『全体最適』を見据えたものだったこと」を挙げています。「メーカーとして生産革新を図るには、開発から設計、製造、資材・調達までの業務プロセスの一気通貫と『全体最適』を考えるべきだとアドバイスをしてくれました。その提案に、将来の発展性を感じました」(金子氏)。
同社ではPLEMIAの導入により、まずは業務のスピードアップ効果を実感しています。「図面に修正があると、これまでは全部署で共有するのに半日から1日のタイムラグがありました。それが、PLEMIAの導入で製品構成情報を一元管理でき、全部門で最新版数の図面と部品情報をリアルタイムに共有できます。全体の業務が大幅にスピードアップしました」(上田氏)。それだけではありません。同社では、PLEMIAとあわせて「電子部品情報サービス CLCA(Component Life Cycle Adviser)」も導入。これは電子部品の終息予定情報やその代替製品の情報を知らせる富士通独自のサービスです。PLEMIAの電子部品リストと連携し、たとえば生産終了になる部品やその代替品の情報をいち早く得ることができます。インフラ管理グループマネージャーの山野氏は、「毎月2~3種類の部品に生産終了や仕様変更があります。そのたびに設計変更が求められるので、少しでも早い情報入手が必要でした」と導入の経緯を語ります。また、PLEMIAとCLCAとの相乗効果もでています。PLEMIAには、様々なトレーサビリティー機能がありますが、ある部品を指定すれば、その部品が使用されている製品群を特定できる「逆展開機能」があります。「CLCAで生産中止の情報を得たら、逆展開機能でその部品が使われていた製品を素早く特定でき、影響の範囲を瞬時に把握できます。これまでは設計変更管理や生産終了部品への対応などに時間がとられていましたが、この「逆展開機能」による効率化で、開発、設計メンバーはより重要な『新製品開発』に工数を振り向けられます。グローバルな競争を考えたときにメリットが大きいと感じています」(金子氏)。
同社のPLEMIAとCLCA導入にあたっては、富士通システムズ・ウエストのSEがPLEMIAの運用立ち上げ支援や2次ステップ導入のサポートをしています。図面管理・部品表管理システムは技術部門の基幹システムの位置付けだけあって、お客様の業種業態により、個別業務ルールや仕組みの反映、運用立ち上げ支援などが必要となりますが、「担当SEは細かな課題に真摯に誠意を持って向き合ってくれています」(金子氏)とサポート力も高く評価されています。さらに、同社では、PLEMIAとCLCAとあわせて、富士通グループが揃えている製造業全般を網羅したいくつものソリューションの活用にも目を向けています。「富士通グループの工場を見学させていただき、現場でのPLMシステムの実践とその効果を知ることができました。富士通グループはICTベンダーでありながらメーカーであり、製造現場を良く知っているからこそ、弊社の業務プロセスの改善に有効なソリューションを提案してくれることに期待しています」(金子氏)。
「当社は事業を格段に伸ばす必要がある時期を迎えています。当社の次世代を担う若手が、品質へのあくなき追求・リードタイム短縮・原価低減のために、開発と生産全体についてを深く考え、新しいものへトライする姿勢を常に持って欲しいと感じています。技術部門のICTによる開発力強化は会社組織として非常に重要なことで、海外の競合よりいかにしてスピードで上回れるかは会社経営に直結する問題でもあります。富士通と富士通グループ各社には今後も協力して欲しい」(金子氏)。視線は常に世界市場に向いています。
プロジェクトチームの皆さま:左から、開発・技術本部 商品開発グループ 宮内氏、管理本部 インフラ管理グループマネージャー 山野氏、生産本部 特注設計グループマネージャー 上田氏、執行役員 生産本部長 金子氏、生産本部 資材グループ プロジェクトリーダー 今田氏、生産本部 製造グループ 松永氏、管理本部 生産管理グループマネージャー 井上氏
お客様名 | |
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所在地 | 東京本社:東京都千代田区麹町4丁目3-3新麹町ビル3F
広島事業所:広島県東広島市吉川工業団地4番22号 |
代表者 | 代表取締役社長 新川 文登 |
設立 | 1994年2月16日 |
資本金 | 5,000万円 |
従業員数 | 150名(2014年5月1日現在) |
事業内容 | 回転機械状態監視システムにかかわる製品の開発・設計・製造・サービス・修理
産業用応用センサの開発・設計・製造・サービス・修理 ISO18436-2準拠 機械状態監視診断技術者(振動)の訓練 |
(注)記載されているお役職等の情報につきましては、2015年10月現在のものです。
(注)記載されている製品名は各社の商標または登録商標です。
株式会社富士通マーケティング
中四国営業本部 中国支社 産業営業部
種子 正美(たね まさみ)
今回、「PLEMIA」と「CLCA」をご採用いただいたことは、開発・生産プロセス最適化の最初の一歩だと考えています。今後、仮想設計検証や生産管理といった業務へのICTの有効活用により、お客様のさらなるビジネス拡大をご支援してまいります。
株式会社富士通システムズ・ウエスト
産業システム本部 第一システム事業部
大久保 学(おおくぼ まなぶ)
「PLMシステムを活用した設計・生産の効率最大化の実現」という揺ぎないプロジェクト目標と、プロジェクトメンバーの皆さまの結束力があったからこそ、設計開発部門の方をはじめとする多くの方々にご活用いただける最適な情報システム基盤が構築できたと思っております。
今後もさらなる業務効率化を目指し、サポートさせていただきます。
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