埼玉県、栃木県、千葉県に数々の拠点を持ち、1日約220台のトラックを稼働させ、日本全国への配送も行っている京葉流通倉庫株式会社様(以下、同社)。食品、出版、アパレル、日用品、医薬品など、幅広い分野の物流業務を一括受託するアセット型3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)事業者として、多彩な業種・業態のお客様の物流改革をトータルに支援しています。
同社では、「より強い輸送を目指す」という事業方針の実現のため、顧客の多様なニーズに対応できるよう輸送の仕組みを改善して、収益向上につなげることを決断。形態の異なる佐野配送センターを除く3拠点の配車業務を白岡配送センターに集約すると同時に、配車支援システム「LOMOS / 配送計画SP」と輸配送業向け販売管理システム「WebSERVE / 輸配送」を導入しました。今回はその経緯と効果について、京葉流通倉庫 執行役員 輸送統括支店長の池田氏、輸送統括支店 佐野輸送グループ マネージャーの石井氏、営業本部 システムグループ マネージャーの岡島氏にお話を伺いました。
[2011年11月30日 掲載]
導入の背景 | 導入の経緯 | 導入効果 | 将来の展望 | お客様情報
同社は従来、各事業所が配車業務をバラバラに行っていましたが、多様化するお客様ニーズに対応できる輸送の仕組み作りの一環として、2011年3月20日に埼玉県の白岡配送センターに周辺3事業所の配車機能を集約。自社の収益性向上・経費削減をはかりました。
これに併せて、配車業務をいかに効率化するかという点も、改善が進められました。従来は拠点ごとに「配車マン」と呼ぶ配車担当者が手作業で配車を行っていました。配車カードを机の上に並べ、カルタ取りのように車組みを行っていたため、とても効率が悪かったといいます。また、配車機能集約に伴う規模拡大という事情もあり、従来のスタイルを継続するのは難しいと判断。より配車業務を効率化できるシステムを検討することにしました。
「物流業界では『お客様のニーズに応える』というメッセージをよく使うのですが、人間の力で配車していてはお客様に、自分たちのやり方に合わせてもらっていることになります。こういった事態を改善して、お客様に満足していただくのはもちろん、自社にとっても満足できるような仕組みを作るために、どのようなシステムが必要か考え始めました。」(池田氏)
同社には、15年ほど前に一度、多額の費用をかけて自動配車システムを導入しましたが、試行錯誤を繰り返しながらカスタマイズを進めたにもかかわらず、細かな出荷対応などに対応できず、まったく使わずに終わってしまったという苦い経験があります。そのため、配車支援のシステムに対して、トラウマのようなものも感じていたといいます。
「今までにも数社のベンダーから提案を受けることはあったのですが、提案してくださるのはパッケージ製品ばかり。パッケージ製品ですと、当社の業務に合わせてカスタマイズをしなければなりませんし、その分の費用がかかります。その点が非常にネックになっていたのです。」(池田氏)
今回は同じ轍を踏まないように、2010年2月にプロジェクトチームを立ち上げ、慎重にシステムの選定を進めました。システムを選定する上では、「コストを削減でき、生産性向上を実現できること」、「情報をデータ化して対応のスピード化を実現できること」、「人間が行っていた配車業務の効率化」、「得たメリットをどのようにお客様へ還元するのか」などが要件として挙がりました。そして、何より従来の輸送の仕組みを改善・強化するため、受注から請求までの一連の業務に対応したシステムであることが重要な前提条件となっていました。
富士通マーケティングから提案したのは、効率的な配送計画の立案を支援する配車支援システム「LOMOS/配送計画SP」と、運送業向け販売管理システム「WebSERVE/輸配送」です。この提案は、現場の課題解決だけを目標とした部分的なものではなく、会社全体の最適化を意識したコンサル提案サービス(情報システム関連の投資に関する導入目的の明確化、投資効果の視覚化をコンセプトに、最適な提案を実施・実行する無償サービス)に基づいて行われました。
「提案から本稼働を予定していた時期まで、あまり時間がありませんでした。そのため、当社が描いていた理想にどれだけ近い製品か、なおかつ非常に完成度が高く、短期間で、リーズナブルな価格で実現できるのか、という部分を重視していました。また、倉庫のシステムとの連携も必要だったのですが、当社は3PLを重視しているため取扱商品が多岐にわたります。そのため、荷主によって複数のシステムを使い分けていたのですが、この複数のシステムと連携できるシステムかどうかということも、システム選定の大きなキーポイントでした。」(岡島氏)
実際に配車担当者もデモに立ち会い、選定に向けて自分たちの意見を出し合いました。その中で特に評価が高かったのが、1画面で複数の車両を配車管理ができる点と、納品時刻や積載率の計算などがすぐに実行され、状況が画面上で色分けされるおかげで視覚的に素早く判断できる点でした。
「数社から提案をいただきましたが、担当者が頭の中で描いていた理想のイメージと一番近かったのが、富士通マーケティングの提案でした。」(池田氏)
受注~収支の情報を一元管理
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受注~配送の最適化
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業務の効率化による競争力の創出
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より効率的な配車を行うには配車担当者の感性も必要ということで、各拠点にいた配車担当者5人を白岡配送センターに集め、システムを使いつつ調整する部分は配車マンのノウハウを駆使し、配車業務を行っている同社。東日本大震災の影響によって、配車支援システム「LOMOS/配送計画SP」の本稼働の時期は3カ月後の2011年6月になったため、まだ本格的に使用した時間は長くありませんが、それでも多くの効果を感じています。
「例えば、現在2拠点でお菓子メーカー8社の配送を受託しており、540件くらいの注文を約70台の車に配車しています。これが従来なら約2時間かかっていたところ、今は約30分~40分で配車が終わるようになりました。この効果には、配車担当者も驚いていました。」(池田氏)
「システムの操作性についても、ドラッグ&ドロップでルートを容易に変更できるタイムチャート機能をはじめ、非常に扱いやすいと現場の配車担当者も話しています。また、目からさまざまな状況を判断できますので、効率的な配送計画に基づく最適なルートを選定できるようになり、車両の積載率と回転率を向上させることができました。」(石井氏)
また、輸送部門は基幹システムとして輸配送業向け販売管理システム「WebSERVE/輸配送」を導入したことで、受注情報や配車情報の連携を実現。各部門でのデータ入力作業やデータ照合作業が軽減され、受注と請求についての業務を全体的に効率化できました。
「今まで手入力していた出荷データが、ある一定の時間が来たらデータで流れてくるようになりました。これは非常に効率化ができたと思います。また、倉庫側からしても、ピッキングリストを作るため、配車担当者が手作業で作っていた配車カードの情報を、手入力していたのですが、その作業もなくなりました。さらに、倉庫ではピッキング作業を行っている従業員が約20名いるのですが、各従業員がそれぞれ業務時間を約1時間程度短縮できるようになりました。こちらも、非常に大きな効果があったと思います。」(岡島氏)
さらに、データが入力された時点で、その日に必要な車の台数が大まかに分かるようになり、もし足りない場合には協力会社に手配する、といった判断もできるようになりました。このような効率化の効果として、配車担当者だけではなくあらゆる従業員の作業時間短縮にもつながっています。
今後、同社では導入した配車支援システムに、運行支援システムを組み合わせるなど、さらに効率化を推進して、「配車のムダ、ムリ、ムラ」をなくしていくことを計画しています。そして、このような経費削減への取り組みを本格化させることで、収益性を高め、今よりも安価な配送の仕組みをお客様に提案できるようになりたいと考えています。
「経費削減した効果について、当社だけではなく、荷主様にも還元できるような形を取っていきたい。そして、より安価での提案をどんどん行い、新しい顧客開拓を進めていきたいです。そのために、システムをもっと活用していきたいと思います。」(池田氏)
将来的には、Faxや電話からの注文をデータ化する仕組みの導入や、連携している協力会社にも同じシステムを導入してもらうことも考えている同社。お客様に提案する際にも、シミュレーションを行い「当社なら10台で配車されていたところを7台でできます」という風に、営業ツールとしての活用も計画しています。
お客様名 | |
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所在地 | 埼玉県戸田市川岸3-9-4 |
代表者 | 代表取締役社長 箱守 和之 氏 |
設立 | 1966年6月1日 |
資本金 | 9,000万円 |
売上高 | 1,225,800万円(2011年3月期) |
従業員 | 170人(2011年1月現在) |
事業内容 | 物流システム開発・販売(サード・パーティー・ロジスティクス事業)、倉庫業および倉庫リース業、貨物自動車運送業、貨物運送取扱事業、流通加工、物流機器販売、保険代理業、医薬品販売許可、通関業、第二種貨物利用運送事業、菓子製造業 |
株式会社富士通マーケティング
流通・サービス・金融営業本部
流通統括営業部 運輸サービス営業部(運輸サービス)
辻 一磨
京葉流通倉庫様においては、コンサル提案による現場の業務分析~あるべき姿のデザインを進めた結果(富士通マーケティングとして)お客様に最適なシステム構成(仕様)を提案できた今回導入の成功要因だと思います。
また今回の導入により輸送業務の最適化は実現しましたが、今後は、現行システムの連携によるリアルタイムの動態管理(クラウド型運行管理システム)による荷主サービスの向上を目指した提案を進めていく予定です。
(注)記載されているお役職等の情報につきましては、2011年11月現在のものです。
(注)記載されている製品名は各社の商標または登録商標です。
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