2019年06月03日更新

SCM“人間系業務”にこそ改革の可能性あり!実践事例で解説 第10回 まとめ:業務プロセス・オートメーションの未来

株式会社フェアウェイソリューションズ 代表取締役社長 殷 烽彦 氏

業務プロセス・オートメーションの限界?

これまで、数回にわたりサプライチェーン分野の「人間系」業務のシステム化、本質的には業務プロセスのオートメーション化について、様々な業種業界での事例を挙げてご紹介してきました。最終回を迎えるこの頃では、「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」というテクノロジーに注目が集まり、従来ホワイトカラーの人々が行っていた業務をシステムで自動化・効率化する取り組みが活気を帯びています。
日本で「RPA」と聞いて思い浮かべるのは、例えば「入力作業の自動化」ではないでしょうか。FAX OCRと連動して注文データを自動入力し、決まったキーボードやマウス操作を行って、データを抽出・出力するところまで、RPAツールを利用してロボットに行わせることが出来ます。これらの仕組みによって、大量の注文入力作業に人手を割いている企業では、大きな効果を得ることが出来るでしょう。
しかし、RPAの盛り上がりと同時に「検討はしたものの、効果が見えず断念した」或いは「導入したが、結局使えなかった」という失敗ケースも聞かれるようになりました。一体何故でしょうか。

RPAの本来の構想とは

実は、最近のRPAツールの解説でよく目にする、“入力作業など定型的業務の自動化を行う仕組み”は、RPA全体の段階における「Class1」のレベルにすぎません。

業務プロセスの自動化は、一般的には以下のようにレベルに分類されています。

Class 1:Robotic Process Automation(RPA)

いわゆる狭い意味でのRPAです。主に「構造化されたデータ」を対象とした、定型業務の自動化にフォーカスしています。
先述したデータの入力・抽出・レポート業務のほかに、競合他社のWebページを自動巡回し製品の価格情報を取得したり、画面上の色・形・図形を認識して自動処理する仕組みなどがあります。
これらは基本的には、過去に蓄積され構造化されたデータの出し入れが中心ですので、定型的なバックオフィス業務を得意としています。反面、複雑な条件や判断を伴うフロントオフィス業務は不得意です。

Class2:Enhanced Process Automation(EPA)

構造化されていないデータの収集・分析・判断の自動化を実現します。
より細かい条件と、それに基づく“判断”が必要な業務を対象とすることが可能です。サプライチェーンに関わる業務で例をあげると、製品群別に異なる様々な条件を加味した需要予測や、予定と実績が乖離した場合のアラート、製品の需要変動に合わせた在庫戦略の実行、などの業務が対象となります。
これらは、過去に蓄積されたデータを利用して、未来に関する新たなデータを自動生成し、処理を行っていきます。

Class3:Cognitive Automation(CA)

大量のデータから、自律的に学習し、自動的に判断を実行します。
ほぼAIや機械学習と同義になり、業務の完全自動化を実現するレベルですが、一部の領域で実験的に実用化されつつあります。例えば、サポート用のチャットロボット(テキストの意味認識と自動回答)や、短期的な金融資産運用などがあります。サプライチェーン領域の業務では、注文データを受信した時、過去の取引実績データにもとづいて、お客様の納期に間に合うよう新規調達も含めたあらゆる資源の利用可能性を自律的に判断し、自動的にお客様が満足する最適な手配指示を実行したり、納期連絡まで行うような仕組みがイメージ出来ます。

このように、本来のRPAとは、定型的な業務だけでなく、より広範囲に非定型な人間系業務までを自動化することを目的としていますが、日本におけるRPAは、Class1の単純なPC作業の自動化にとどまっているのが現状です。
しかし、ご存じのように、サプライチェーンに関わる業務は、顧客要望や過去の取引内容、今後の見通しを踏まえ、ビジネスとしての合理性を考慮して、即座に多数のディシジョン(判断)を行う必要があり、企業がシステムで合理化出来ずに、人的依存している業務というのは、得てしてこうした複雑な業務なのです。

サプライチェーン上の業務はディシジョンの連続

まだまだ現状では、充分なデータを保有している少数の大企業を除けば、一般の企業が単独でClass3のCognitive Automationまで実現するのは難しいと感じています。
それでは、次段階へ進むためには、何をすれば良いのでしょうか。

サプライチェーン業務の自動化に向けて

その答えは、ここまで事例でご紹介してきた企業様の様に、従来人間が行っている業務プロセスの領域に踏み込み、システム化に取り組むことだと考えます。
どのような業務プロセスであれ、基本的には、入力の「Input」があり、処理の「Process」があり、結果としての「Output」が作られます。これらの小さい業務プロセスがパイプラインのように繋ぎ合わされて、より大きなプロセスとなっています。

業務プロセスの分解

これら一つ一つのプロセスについて、以下の検討手順でシステム化範囲を決定し、構築してゆくのがセオリーです。

  1. 手動で行っている業務プロセスを、合理的な子プロセスに分解
  2. 子プロセスごとに、必要なデータを定義
  3. 可能な限り、既存ERP等のシステムにあるデータを自動収集・蓄積できる仕組みを構築(BIやRPAツールなど)
  4. ERP等で管理していないデータ(例:Excel上の管理データ)に関して、可能な限り標準化
  5. 人間の判断ポイントと判断基準を明確に定義
  6. 整理されたプロセスに対して、RPAツールや業務支援用アプリケーション適用を判断

例えば、新規に発注業務プロセスを自動化したい場合、下図のような子プロセスへと分解することで、多くの業務判断をシステム化し、部分的にClass2の EPAを実現することが可能になります。

業務プロセス自動化:発注業務の例

このように、業務プロセスを見直した上で必要なシステム化を実行し、人間とシステムを合理的に繋ぎ合わせることによって、かなりの範囲の業務自動化・効率化が実現可能です。また運用で徐々に「人間判断」の領域を減らすことも可能になります。
RPA以外に、業務領域に適したツールを組み合わせ活用することによって、より高いレベルの業務の自動化を実現出来るでしょう。必要な様々なデータの「Input」には、現状のRPAを活かすことが出来ます。そして、将来的にはデータの蓄積と機械学習技術の進歩に伴って、人間の判断ポイントも部分的にClass3のCAによって置き換えられることになるでしょう。

今後日本に訪れる超少子高齢化社会において、労働力不足を補い、人間のパフォーマンスを最大化するために、非定型業務の自動化のニーズは急速に高まると予想されます。
そのシステム化対象範囲は、長らく「人間系業務」とされてきた、需給調整や納品手配(フルフィルメント)の業務にも及び、判断を伴う業務が自動化されて行くことでしょう。
もしかすると、経営層、IT企画責任者の方々は、システム化の検討範囲が従来の事務処理、会計や人事給与といった領域とは異なるため、最初は戸惑われるかもしれません。今一度社内業務プロセスを見直しし、合理的に分解・統合することによって業務プロセスの自動化が可能なのか?その実現手段はRPAツールだけなのか?或いは新規に専用の業務支援ツールを導入した方がより効果的なのか?というお悩みの解決に、本連載が何らかのヒントになりましたら幸いです。

著者プロフィール

株式会社フェアウェイソリューションズ
代表取締役社長

殷 烽彦(いん ほうげん/Fengyan Yin)氏

1987年3月 京都大学工学部情報工学科卒
1989年3月 京都大学工学研究科 情報工学専攻卒
1992年4月 ウッドランド株式会社(現 フューチャーアーキテクト)入社。
PIM、CRM、マルチメディアなど様々な情報システムの設計・開発に従事。
1997年7月 Toona Softs Pty Ltd 入社。φ-Conductorのシステム設計責任者として、日本・オーストラリア両開発チームの指揮を担当 。
2003年4月 株式会社フェアウェイソリューションズ 入社。大手電子部品メーカー・商社などのプロジェクト責任者として導入に携わる。
2005年4月 同社 取締役 就任
2007年4月 同社 代表取締役社長 就任

殷 烽彦(いん ほうげん/Fengyan Yin)氏

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