2017年09月04日更新

SCM“人間系業務”にこそ改革の可能性あり!実践事例で解説 第06回 工場設備の保守部品在庫をコントロール

株式会社フェアウェイソリューションズ 代表取締役社長 殷 烽彦 氏

保全業務の重要性の高まり

製造工程の機械化が進むにつれ、生産における“保全業務”を行う部門の責任、重要性はますます大きくなって来ています。 いかにフルオートメーションの工場であっても、ひとたび異常が検知された際の点検、状況判断、改修作業の手配・指示といった一連の保全業務には、やはり人間のインテリジェンスが不可欠だからです。

さて、電子部品、機械機器、食品など、機械化の進む様々な業界トップの大手製造業における保全業務では、製品品質を一定に保持することと同時に、「生産設備の安定稼働」が、非常に大きなミッションです。 設備故障によって製造ラインが一部止まるだけでも問題ですが、影響範囲の広い設備にトラブルが発生すると、工場全体のラインストップという危険も起こり得ます。 そのため、設備メンテナンスは正確に粛々と行われなければならず、もしもの場合の交換用の部品(保守部品)の在庫を常に用意しておく必要があります。

今回は、製品(売り物)としての部品ではなく、自社工場設備の保守を目的とした、部品の在庫管理に焦点を当ててみたいと思います。

保守部品在庫管理、“人間系業務“の一つになっていませんか?

迅速な改修作業を行うために、常に用意されている保守部品在庫ですが、ここで問題になるのが在庫管理です。 製品の在庫とは違い、工場設備の保守部品は、通常、ERPなど基幹系システムでは管理されていないことが多く、例えばある半導体メーカー様では品目数が数千点にも及ぶにもかかわらず、現場でExcel表を作って管理されていました。入庫・出庫といった在庫受払履歴も怪しく、現物管理に近い現場も多いのではないでしょうか。

Excelなど手作業で管理していると、自ずと「工場ごと」「部門ごと」で独立した在庫管理を行うことになります。すると、複数の工場設備で共通の保守部品を使用しているにもかかわらず、他工場の在庫が見えないために、双方で利用することが出来ず、無駄に在庫が膨れ上がります。 代替可能な共通部品がある場合も、マスタ化されていないので、無用な発注を行ってしまいがちです。 また、将来“設備の切替え”が予定されている時、その時期を考慮して部品在庫を収束させることは、手作業ではなかなか困難です。結果的に切替え後に部品在庫が残存すると、利用用途が無いため廃棄するしかなくなってしまいます。

人間系での管理の結果として、保守部品在庫を大量に保持することになり、保管スペースや資金面でも問題ですし、業務コスト(各工場の担当者がそれぞれ作表・計算して発注している)面でも改善の余地があると思われます。

保守部品がERPで管理されない理由

では、保守部品在庫を効率的に精度良く管理するために、ERPなど基幹システム側で保守部品在庫のコントロールまでを対象にしようとすると、色々と厄介な問題が出てきます。

まず、保守部品の必要量を計算するには、この部品が今後どれだけ必要になるか?(=出荷予測)を計画しなければなりません。 設備には、当然ながら定期的なメンテナンス計画があります。設備ごとに90日に1回、N時間以上使用したら交換、といった計画です。とはいえ“突発的に故障する危険性”も考慮しておく必要があります。 次に、「Aという部品が無かった時、BやCでも代用できる」「しかし、Bを使っていた場合は、Cで代用できるがAでは代用できない」といった、やや複雑な代替の関係性を組み込む必要があります。 更に、同性能の部品でも、メーカー違い・品目/型番コード違いが多数存在します。もし型番が変更になったら(頻繁に発生します!)、元の部品の出荷予測データを引き継がなくてはなりません。 単純にメンテナンス計画に合わせて発注すれば良い、という話ではないのがお分かりいただけるでしょうか。

これらを基幹システムに組み込むとなると、出荷予測(適正なメンテナンス計画策定)、補充計算(各部品のリードタイム計算)、マスタ管理(型番引継ぎ・類似品)など、相応なカスタマイズを行う必要があります。 基幹システム側での入力や修正の手間(コスト)を考えると、システム対象外で管理するしかない、というジレンマを抱えているために、結局のところ、製造工程そのものに比べて、保守部品在庫のコントロールには手が回らず、人間系業務になってしまう、というのが現状です。

システム化の方法論とメリット

さて、近年では、業務系システムもサービス化・クラウド化が進み、基幹系の大型ERPは改修せずに、データ連携して外付けのサービスを活用する、という流れが日本の大企業でも主流となって来ました。在庫のコントロール業務も例外ではなく、特に設備保守部品のような特殊な需要計画と在庫特性を持つ分野は、こうしたITツール利用に適していると感じています。 以下に、システム化の段階を簡単にご紹介します。

  1. STEP1. 入出庫・在庫の実績管理をシステム化
    まずは各工場に点在する在庫のデータを一元的に管理し、入庫・出庫(使用)履歴を確実に残すところから開始します。 これにより、工場別の部品在庫一覧が可視化されるだけでも、緊急時に迅速に対応できるというメリットがあります。1品目だけでなく、型番違いや類似品も同時表示できると尚良いでしょう。
  2. STEP2. 在庫/調達の分析・分類分け
    適切な補充を行うにあたって、部品を分類分けする必要があります。 出荷の頻度が高い・低い、発注すればすぐ納入できる、金額が安い・高い、安全在庫をどのくらい持つべきか、といった分析と分類を行います。 例えば、使用頻度が高く点数の多い消耗品は、完全に自動発注化し、手間をかけずに在庫管理しても問題がありません。正しい補充方式を決め、特性に適したシステム化を行うことが重要です。
  3. STEP3. 出荷予測(メンテナンス計画)のシステム化
    突発的な故障発生は事前に把握することは困難である為、設備の故障率を機械学習により予測し、これに基づき事前に準備する方式が有効です。

保守部品在庫の適正コントロール

これらの仕組みの活用により、発注業務集約による業務効率化と在庫適正化の両方を推進することが可能になります。また、保全担当者が、在庫の有無や、いつ入荷するのかを気にせず本来の設備メンテナンス業務だけに集中できるというメリットもあるでしょう。 実際にこうした方法で、弊社のクライアント企業様でも、国内外100人以上が携わっていた保全業務を、10人以下で行える体制へと、大改革を実現されています。

著者プロフィール

株式会社フェアウェイソリューションズ
代表取締役社長

殷 烽彦(いん ほうげん/Fengyan Yin)氏

1987年3月 京都大学工学部情報工学科卒
1989年3月 京都大学工学研究科 情報工学専攻卒
1992年4月 ウッドランド株式会社(現 フューチャーアーキテクト)入社。
PIM、CRM、マルチメディアなど様々な情報システムの設計・開発に従事。
1997年7月 Toona Softs Pty Ltd 入社。φ-Conductorのシステム設計責任者として、日本・オーストラリア両開発チームの指揮を担当 。
2003年4月 株式会社フェアウェイソリューションズ 入社。大手電子部品メーカー・商社などのプロジェクト責任者として導入に携わる。
2005年4月 同社 取締役 就任
2007年4月 同社 代表取締役社長 就任

殷 烽彦(いん ほうげん/Fengyan Yin)氏

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