2017年06月19日更新

SCM“人間系業務”にこそ改革の可能性あり!実践事例で解説 第04回 Excel依存の業務基盤で大丈夫? - 製造業 編-

株式会社フェアウェイソリューションズ 代表取締役社長 殷 烽彦 氏

製造業の“人間系業務”オペレーション改革

前回のコラムでは、商社 / 卸売業の“人間系業務”において、オーダーマネジメントの仕組みで効率化・標準化出来る余地が、数多く残されていることを解説いたしました。
今回から、製造業、特に需給調整や在庫に関わる業務の改善についてご紹介します。

製造業と一口に言っても、業務プロセスは非常に複雑で、業種も多種多様であります。業種それぞれプロセスの特殊性はありますが、敢えて大まかに共通点を表現すると下の図ようになるでしょう。

製造業における業務プロセス

「Planning」の領域は、人間の「頭」に相当し、まさに頭脳、発想力、企画力が高く要求される分野であります。
今後、AIやIoTの時代になったとしても、ここは「人間」が主役(安泰ではないかもしれませんが!)で、企業の競争力の源泉です。限られたリソースの中から、より多くの「人間の知恵」をこの分野にシフトしなければなりません。

「Operation」の領域は、人間の「ボディーと手足」に相当し、実行力、変化への対応力が要求されます。
ここは一般的に、従来からIT化の進んでいる分野と思われがちですが、実態は実績管理を中心としたIT化に留まっており、業務の現場では、未だ「人間系」業務が多く取り残されています。
特に赤文字で表現した部分をご覧ください。これまで100社を超える大小様々の製造業の企業様とお話ししましたが、80%以上の企業様で基幹系システムに機能を持っておらず、Excelで作成された表を駆使して行われている業務です。
それだけに、このオペレーションの領域で、より進んだ業務の合理化・システム化が可能になれば、企業の競争力に大きな影響力を与える可能性を秘めています。

米国のApple社では、90年代に営業赤字に転落した頃には、在庫日数は100日を超えていました。しかし、2000年代に入り、製品数の絞込みや製造体制の見直しなどサプライチェーンオペレーションの大改革を行った結果、現在の在庫日数は何と10日未満にまで圧縮されました。
Apple社の躍進の理由は、製品力に目を奪われがちですが、オペレーション改革にもあることを忘れてはなりません。

オペレーション改革が置き去りにされている理由

一般的に普及しているERPシステムは、「確定受注」からシステムが始まります。
しかし現場では、販売計画や見込み受注といった、未確定の需要情報の管理から始まりますので、そこは人間系でExcelで行なっているケースが非常に多い。生産計画や部材調達も、ベテランのKKD(経験と勘と度胸)で行っているところが多く見られます。この弊害は、次回以降で解説するとして、何故日本有数のメーカーであってもこのような事態が放置されているのかを考えてみます。

思うに、日本は高度成長期の成功体験により、「如何に効率よく作るか」という生産管理に重点を置いたシステム投資をして来ました。
結果として、工場側の論理(稼働率など)を重視し、販売側の需要の変化を取り込む、というシステムの形態になって居ないのです。
大量生産の時代と違い、多品種少量生産を行わざるを得ない現在、需要変化に対応する仕組みへと変えなくてはなりませんいかに効率良く製造が出来たとしても、在庫が大量に売れ残り、廃棄ロスが発生したら本末転倒だというのはマネージメント層なら誰もが思うところでしょう。
しかし現実に、システムはそのようになってはいない。売れ筋が変わった瞬間からAを作るのをやめてBを作る、という迅速指示が出来ている会社がどれだけあるでしょうか?

「売れるものを作る体制」に必要なこととは

製造業のオペレーション改革に必要な要素とシステム機能を、4点にまとめてみます。

1.需要予測精度向上

需要予測精度の向上に、システムの限界はあります。しかし、合理的な計算方法は日々生み出されており、最後は人間判断だとしても、叩き台としての統計的出荷予測は有意義なものであると言えます。
また、『昨年のキャンペーン時の出荷数』など、参考情報を誰もが即座に見られることに越したことはありません。

2.需要変化のアラートと生産計画への反映

計画は必ず狂うもの――長年需給計画業務をされている方ほど、よくそう仰られます。重要なのは、計画とのズレをいち早く察知し、適確に対策を打つことです。
計画と実績の差異を即座にアラートし、対策をシミュレーションして見せ、人間の判断を助ける…システムの得意とするところです。

3.拠点別の需要に合わせた最適在庫配置

複数の物流拠点がある時、一方で在庫過剰なのに、他方では欠品中、ということがまま発生します。在庫移動をすればコストが発生します。
可能な限り最新の拠点別の需要を反映し、「売れるところに在庫を配分する」ことで、販売機会逸失を防ぎ、移動コストも削減出来ます。

4.受注オーダーに対する在庫資産の徹底活用

過剰生産を抑えつつ受注オーダーに対応するには、時には多拠点を同時に在庫照合し、納期回答したり、製造中の製品(未来の入荷予定)に対する引当も行う必要があります。
そうすることで顧客サービスを維持し、在庫の有効活用が可能になります。

この4点は、どのような製品の製造業においても、必要とされる要素です。

オペレーションの改革は、現場努力に任せるだけでは限界があります。業態に合ったITシステムと改革へ向けた強いリーダーシップが必要です。

次回以降、様々な業種の製造業様の取組みをご紹介して参ります。

著者プロフィール

株式会社フェアウェイソリューションズ
代表取締役社長

殷 烽彦(いん ほうげん/Fengyan Yin)氏

1987年3月 京都大学工学部情報工学科卒
1989年3月 京都大学工学研究科 情報工学専攻卒
1992年4月 ウッドランド株式会社(現 フューチャーアーキテクト)入社。
PIM、CRM、マルチメディアなど様々な情報システムの設計・開発に従事。
1997年7月 Toona Softs Pty Ltd 入社。φ-Conductorのシステム設計責任者として、日本・オーストラリア両開発チームの指揮を担当 。
2003年4月 株式会社フェアウェイソリューションズ 入社。大手電子部品メーカー・商社などのプロジェクト責任者として導入に携わる。
2005年4月 同社 取締役 就任
2007年4月 同社 代表取締役社長 就任

殷 烽彦(いん ほうげん/Fengyan Yin)氏

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