2020年8月24日更新

コロナ禍により、変えるもの変わらないもの 第03回 組織防災から、在宅防災へ

株式会社月刊総務 代表取締役社長 豊田 健一 氏

コロナ禍により、緊急事態宣言が出され、強制的に在宅勤務が始まりました。目的はもちろん、従業員の命を守ることです。死に至る可能性があり、大切な従業員の罹患を防ぐために、とにもかくにも在宅勤務の実施が要請されました。オフィスに集まらず、個々の家庭で、多くの従業員が仕事をすることになったのです。この事態が、組織防災から、在宅防災への視点の変更が必要になる所以なのです。

対象はオフィスの防災のみ

実は私も総務経験者。新卒で入社したリクルートで、入社四年目に総務に異動しました。複合機や社有車の管理担当とともに、全社の防災も担当していました。本社とともに首都圏の大規模ビルの防火管理責任者となり、消防計画を作成しては消防署に届ける仕事をしていました。また、避難訓練も一年に一回、それぞれの大規模ビルで実施していました。

その当時、阪神淡路大震災の直前であり、まだBCPという概念は浸透しておらず、ただひたすら大震災に対する防災対策を立案していました。そして、考える対象は、オフィス内での防災であり、個々の家庭での防災対応はプライベートの問題として、各人に任されていました。総務ではそこまで対応してはいませんでした。

ところが、働き方改革が進展する中で、リモートワークという働くスタイルが表れてきました。それも、今回のコロナ禍により、在宅勤務が標準装備となり、また、緊急事態宣言が出された時点では、強制的に全社員が在宅勤務、そのような会社も多々ありました。

また、第二波の前兆も現れ、さらに感染拡大が想定される中、この在宅勤務がニューノーマルとなりつつあるようです。人事総務として考えなければならない新たな課題として、リモートワーク時の防災、これが新たなテーマとなってきたのです。

どこにいるか分からない従業員を守るには

リモートワーク、当然ながら就業時間内となりますから、会社としては、従業員の安全確保する責任があります。ただ、問題となるのが、どこで働いているか分からない、という点です。従来ですと、オフィスの中で働く従業員が大半だったのが、各家庭もあれば、自社のサテライトオフィスもありますし、契約しているコワーキングスペースもあります。さらに、移動途中もあれば、カフェ、ということもあります。

つまり、どこにいるか分からない従業員をどのように守るか、守り切れるのか、という課題が出てくるのです。正直、人事総務が直接的に守ることは現実的に不可能ではないでしょうか。どこにいるか分からない、また、それぞれ仕事をしている状況、環境もバラバラな状態で、どのような対応が考えられるのでしょうか。

直接的に守ることは難しく、撮れる手立てとしては、防災教育の徹底、防災マインドの醸成しかありません。自ら守る手立てを身に付けてもらう、生き抜く力を学んでもらう、そのような間接的な対応です。特に、各家庭における防災対応は、その家庭の従業員が対応するしか方法はありません。そこで、在宅防災という考え方が必要となってきたのです。コロナ禍による、防災観点の大きな変化です。

在宅防災で気を付けてもらうこと

在宅防災では、どのようなことを従業員に対応してもらうべきなのでしょうか。まずは、大震災への対応として、自分の住んでいる戸建て、マンションが新耐震基準に適合しているかどうかの確認が必要となります。これは、1981年6月から施行された基準で、「震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6強から7に達する程度の大規模地震でも倒壊は免れる」というものです。この基準に適合していない住居の場合、難しいかもしれませんが、転居された方が無難です。

加えて、仕事部屋の家具固定や、書棚やタンスの上の重量物の落下防止が必要です。仕事中にそのようなものが頭上に落ちてこないようにしないといけません。また、窓ガラスやタンス等のガラス面の飛散防止です。避難する場合、床にガラスが散乱していると、足を怪我してしまう可能性があります。

ゲリラ豪雨、大雨等、浸水、洪水被害が頻発しています。この対応でまずして欲しいことは、各自治体が出しているハザードマップの確認です。居住地域が浸水被害地域になっていないかの確認です。地域内にあるようであれば、非常時持ち出し袋を用意して、速やかに避難できるように準備しておく必要があります。当然、避難場所の確認も必要です。

一方で、大震災の影響が軽微である、あるいは、浸水被害地域ではない、そして、自宅で留まれるようであれば、コロナ感染防止の意味も含め、在宅避難、自宅にとどまって復旧を待つことになるでしょう。さらに、そのまま在宅で、会社の復旧支援を行うことになるかもしれません。

そうすると、会社内に常備してる、災害備蓄品を各家庭においても常備しておくことが必要になります。ある程度の期間、外出せずに暮らせるような備品や食料品の備蓄です。会社側で用意し提供するか、必要な物品リストを提示して、各自で準備するか。いずれにせよ、必要物品の常備が必要です。

以上のようなことを常に情報発信し続ける防災教育が必要となってきます。危機意識の醸成は継続しかありません。そして、自分事にしてもらわないと、まず動いてくれません。どうしても、のど元過ぎればなんとやら、に陥りがちな日本において、この在宅防災は、なかなか定着しにくいかもしれません。

ただ、何が起こるか分からない世の中になったことは確かです。感染症と同時に大規模震災が来ないとも限りません。人事総務においては、常に最悪のことを想定しつつ、それへの対応を考えていく必要があるのです。

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著者プロフィール

株式会社月刊総務
代表取締役社長

豊田 健一 氏

『月刊総務』編集長
一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム副代表理事

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験後、ウィズワークス株式会社入社。その後、株式会社月刊総務に移り、現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』の編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務・人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。

豊田 健一 氏

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