2019年12月13日更新

変革の時代を生き抜く製造業向け特効薬シリーズPART-2 第02回 出図遅れに効く薬(2):仕様機能展開と設計不通化出図

株式会社経営システム研究所 代表取締役社長 冨田 茂 氏

『受注設計業務を、抜本的に見直して効率化し、受注設計に費やされている工数を、新製品開発設計にパワーシフトさせたい!』という話が、増えており、私どものコンサルティング業務の半分以上が、このテーマに集中し始めました。
長年にわたり、提供してきた製品がコモディティ化してしまい、中国や東南アジアの民族系企業との競争が激化する中で、製品仕様の複雑化、価格競争の激化などが発生し、製品そのものの性能面での突き放し開発や、新製品創造、製品そのものの大幅なコストダウンを行う必要が、出てきているからであると思われます。
また、設計技術者の新規採用による増員困難化、働き方改革などによる時間外労働時間の短縮などの問題も、現実化してきています。
今回述べる、『仕様機能展開と設計不通化出図』は、出図遅れの対策として非常に有効なものであります。出図遅れに悩む企業や、受注設計から製品開発へのパワーシフトを行ないたいとお考えの企業では、是非、この“特効薬”を試していただければと、存じます。

『仕様機能展開』・『設計不通化出図』の意味

  • 『仕様』とは、『目的とするものの完成姿』のことを言います。
    お客様が製品を特定しないで浮かべている仕様は、抽象的度合いの高い完成イメージであり、このイメージを具体化していくプロセスが、必要となります。
  • 『製品仕様』とは、『客先からの要求仕様を、営業マンや受注設計者が、その実現手段となる製品型式を特定した後、その製品についての完成姿で表現したもの』のことを言います。
  • 『設計』とは、『どのような機能を組み合わせて、目的とする完成姿を作るのかを定義する作業』のことを言います。
  • 『仕様機能展開』とは、『製品仕様をITシステムに入力すると、その仕様を実現するために必要な構成機能表現としての、図面や購入仕様書が、正確かつ過不足無く、自動抽出されるしくみ』のことを言います。
  • 『設計不通化』とは、『仕様機能展開によって、設計者が新図や図面改訂を行うことなしに、設計図面や購入仕様書が出力されるしくみのこと』を言います。

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仕様機能展開のしくみ

ここでは、仕様機能展開についての基本的な考え方について、述べます。
例えば、ある産業機械製品の基底部を支える鉄製の標準据付プレートアッシーがあったとします。今回、この製品を納める工場では、酢酸系の蒸気が充満し、床はそれが液化した状態で濡れているとします。
その結果、設計者は、酢酸に対する腐食耐性を考えて、標準プレートの材質を、鉄からステンレスに変更したとします。
これに伴い、003番目の製品仕様項目が、“設置場所雰囲気”であったとすると、それについての製品仕様条件は、以下のように変化します。

図-1 製品仕様条件の追加

また、型式別部分組図管理表上で、012番目に部分組図:“据付プレートアッシー”が、あったとすると、そのバリエーションは、以下のように変化します。

図-2 製品構成機能としての部分組図バリエーションの追加(型式別部分組図管理表)

そして、製品仕様と部分組図とは、新しい部分組立図面が発行される時、当該製品内で以下のように仕様と機能を結び付けて、ITシステムに登録するようにします。

図3 製品別仕様機能結合のしくみ

これ以降は、設置場所雰囲気が酢酸系雰囲気有ならば、自動的に品番7890のステンレス製プレートが選択され、自動出図されるようになります。

以下の、図-4は、機械振動を床と縁切りして欲しいと言われて、合成ゴムダンパーを付けた場合の、仕様機能結合表です。ご参考にして下さい。

図4 製品別仕様機能結合のしくみ(合成ゴムダンパー付図面の追加)

また、図-1中の、製品仕様条件に,99特殊( )が、漏れなく付けられているのは、受注生産事後設計型製品の常として、特殊仕様を全て断るわけにはいかないという、事情があるからです。もし、仕様項目003の設置場所雰囲気で99特殊が選ばれた場合には、仕様項目003と繋がっている、全ての部分組立図について、作図指示が出る仕組みが、必要となります。

仕様機能展開の活用方法

仕様機能展開は、その目的によって、以下の2種類が必要となります。

1) 営業仕様機能展開

主に営業部門が、製品仕様をITシステムに入力して、見積原価計算書、客先向け製品仕様書、などを取り出したい時に、行われる仕様機能展開です。部品点数の多い製品を生産する企業では、製品仕様項目について、納期や原価に大きな影響を与える製品仕様項目を、製品仕様項目の3割程度に限定し、それ以外は標準的な仕様をデフォルト項目として仮決めして、運用している企業も珍しくありません。営業が決めるべき仕様国目を、『営業仕様項目』と、呼ぶこともあります。
また、営業が行う、仕様機能展開は、『どっちの製品仕様が安いかな?』などといった、営業の試行錯誤的活動として行われることも多く、この試行錯誤途中の仕様機能展開結果が、毎回、そのまま設計部門や生産管理部門などに流れてしまっている企業が、散見されます。これは、下流部門にとっては、大迷惑となります。
営業が行う仕様機能展開の結果は、その仕様で営業部門が新製番発行や、発行済製番内容の変更に伴う、製番のVersion-Up発行を行った場合に、設計部門や生産管理部門に、前回との差分のみが流れてくるしくみにしておくことが、肝要です。

2) 設計仕様機能展開

モジュール化設計技法を、正しく導入した受注事後設計型組立製造業では、一般に、受注製番の70%程度が、仕様機能展開のみによって、新図や図面改訂を行うことなく、出図されるようになります。これは概ね設計工数全体の30%程度にあたります。
また、営業仕様機能展開結果は、一旦、受注設計部門に伝えられ、設計者が確認・発行することによって、生産管理部門などに通知されるしくみとなっている会社も、珍しくありません。これは、製番についての出図リストや、製番要品目録などの発行責任部門が、仕様機能展開システムの稼働後も、従来通り、設計部門となっている会社が、大多数であるという事情もあります。
このような理由で、設計部門が仕様機能展開を行う必要があるために、『設計仕様機能展開』と呼ばれる機能が必要となっているのです。

3) 仕様機能展開の進化

最近、CADメーカー各社では、受注仕様に対応した総組立図の自動作図や、3D画像による製品稼働状況の映像化(VR: Virtual Reality)などを実現する動きが、盛んになってきています。
また、3D設計データーを用いて、金属や樹脂の3Dプリンターによる、都度製作部品の金型レス生産などのチャレンジも、実際に始まっています。

仕様機能展開による設計不通化のしくみつくりの手順

仕様機能展開を行うための、主な準備作業手順は以下の通りです

1) 設計不通化率目標の設定

先ず初めに、目標とする『設計不通化率』を定めます。
設計不通化率をどれ位の水準に設定するかは、各社のポリシーや戦略に負うところが大きい部分です。過去に製品開発競争で、競合他社に後れを取っている企業があり、新製品開発設計者を増やすことが、喫緊の経営課題となっていたケースがありました。この企業では、受注設計者の半分(数百名)を、新製品開発にパワーシフトさせるために、設計不通化率を90%に設定しました。
設計不通化率を高めるということは、特注仕様を許容しないということと表裏一体の関係になります。また、設計不通化率の目標を80%を超えるレベルに設定すると、事前準備やセットアップに要する労力が、収穫逓減の法則に従って、急速に立ち上がってくることを覚悟した上で、行う必要があります。
一般的には、設計不通化率を70%程度に設定し、受注設計者の30%程度を、新製品開発などにパワーシフトする企業が多いように思います。

2) 製品仕様の事前標準化

製品仕様の標準化度合いは、その企業の製品マーケティングの実力度合いを、表わすと言っても、過言ではありません。個別受注事後設計型組立製造業で多いのは、実際に受注した仕様によって、仕様バリエーションを整備するやり方が、大多数となっています。
このやり方を行っていると、二度と出てこない特注仕様が、積み上がっていき、受注設計効率は低下し続ける結果を招きます。例えば、客先と仕様打合せを行う際に、事前に100mmピッチで、描かれた標準図面があれば、殆どの場合、客先の寸法要求は、100mmピッチのいずれかの標準図面に誘導できます。標準がなければ、客先の任意の寸法で、図面を起こすことになってしまいます。
製品仕様バリエーションは、後追いではなく、事前整備に注力することが、肝要です。

3) 製品仕様を整備する手順

実際に、製品仕様の整備を行うためには、以下の手順を踏んで進めます。

  1. 製品図面構成とその取り合い部を標準化
  2. 各部分組図(モジュール図)の機能バリエーション(機能項目・条件)を整理 機能バリエーションは、実績だけではなく、発生が予測できるものも含めて、整備します。この時、当該部分組図の機能バリエーション数が、30種類を大きく超える場合には、部分組図の機能分割を検討します。
  3. 製品の仕様バリエーション(仕様項目・条件)を整備 各部分組図の機能バリエーションについて、『この図面はどのような製品仕様要求によって生まれたのか?』を、設計者自身が思い出して、製品仕様バリエーションを整備します。
  4. 製品仕様項目・条件を客先との仕様打合せシートとして利用してみる 実際の案件で、製品仕様項目・条件を、仕様打合せチェックシートとして使ってみて、内容に漏れや、誤りがないかどうかを、確認します。

4) 製品仕様機能結合の登録

2.製品仕様機能展開で述べたように、製品仕様と製品構成部分組図とを、仕様機能結合登録します。

5) 製品製作仕様間の、組合せ禁止・組合せ不可・組合せ警告の登録

製品仕様項目・条件間の組合せについて検討し、仕様項目・条件間に、以下の区分を設定します。

  • 組合せてはならない組合せ → 組合せ禁止
  • 組合せることができるかどうかの設計検証ができていない組合せ → 組合せ不可
  • 組合せられるが、オーバースペックとなるような組み合わせ → 組合せ警告

その他の注意事項

1) 関連訂正問題

部分組図間の組合せを行う場合、部分組図1の改造がB以上ならば、その組み合わせ相手の部分組図2の改造はE以上でなければ、組合せられないといった、関連訂正問題が発生することがあります。組図間の嵌合部形状などが変更された時に、起きる問題です。
この問題を回避するためには、製品自体の改訂番号を持たせて、製品内で非互換関連改訂が発生した時に、製品自体の改訂番号を1UPさせて、その時の各部分組図の改造を記録しておき、仕様機能展開には、製品自体の改訂番号を特定して行うことが、必要となります。

2) 設計通報との連携

製品仕様機能展開を行う基となる、製品仕様と、部分組図毎のバリエーションを繋ぐ、仕様機能結合は、必ず設計通報システムの対象としておく必要があります。 もしそうしなければ、仕様機能結合自体が、設計改定によって陳腐化してしまい、1年もたてば、使えなくなってしまうからです。

3) 旧品指定問題

お客様から、『最新の製品ではなくて、5年前に買った製品と同じものが欲しい』といった仕様要求が出る場合があります。予備品や工具などを、当該製品について、種類しか持ちたくないとか、慣れた機械操作で全て行いたいといった場合に、よく出てくる話です。
このような場合には、仕様機能展開をする時に、製品自体の改訂番号を、前回納入時の製品改訂番号で行うようにします。また、製番要品目録などに、『旧部品使用のこと』といった、注記を入れておくことも、必要となります。

次回は、出図が計画取りにいかない課題に対して、製番部品表を利用した出図管理について、お話しします。ご期待ください。

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著者プロフィール

株式会社経営システム研究所
代表取締役社長

冨田 茂(トミタ シゲル)氏

昭和27年生まれ(兵庫県)
甲南大学理学部経営理学科卒業
大手輸送機メーカを経て現在に至る。
製造業を中心に約1000社のコンサルティング実績を持つ。
企業変革をメインテーマとした、経営戦略、企業文化変革、生産改善、設計技術改善、BPR、情報戦略策定指導、原価・業績管理指導などのコンサルティング活動を展開中。

冨田氏

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