2017年09月22日更新

現場からのレポート、労基署調査はこうだ! 第01回 「労働基準監督署が来られたのですが」

特定社会保険労務士 杉本 一裕 氏

「労基署が来られたのですが・・」毎年、必ず電話があります。突然訪問されるばかりでなく、事前に連絡がある場合もあります。私は、事業所への調査が初回ならば、できるだけ立ち会うようにしています。調査の経験がない企業は何を聞かれるのかと何も問題なくとも不安がられるためです。前年度、今年度と連続して調査が入る企業もあります。本社、支社、営業所と全国にある場合や都市部から離れた大企業などに多いと感じます(経験測)。

本シリーズ5回編では経験に基づいて労基署調査で聞かれること、やってはいけないことや対応について述べていきます。特に過重労働面での指導は強化されていますので実就労時間の管理(法定休日を含む)は必要です。法違反がないようにと36協定の法的な限度時間は配慮されていると思いますが、法定休日も含めた過重労働面からの管理が今後は必要になってきます。
「労基署から調査で訪問に伺いたいと連絡が・・・」
「工場の方に労基署が来たのですが・・・どう対応したら?」
特に慌てる必要はありません。普段から資料等も整理されているし大丈夫です!と言います。調査経験のない企業は過敏に心配される場合があるからです。もちろん、普段からの付き合いで顧問先企業の規程や日頃の運用などを理解しているので言えることです。
事業所に調査対象となる資料が全て揃っているわけではありません。準備する資料を事前にもしくは、その時に提示してくれます。また、事業所の労務責任者や担当者が不在の場合もありますので再訪問の日程調整になります。企業、私、労基署の日程を調整して頂き調査日を決めてもらっています。
初回で不安がられている企業に対しては経験に基づいて聞かれるであろう内容について事前に説明します。イメージ的には私が監督官です(笑)。当日は、ほぼ予想どおりという感じになります。
労基署調査を臨検監督と言い、労基法101条で定められています。労働基準監督官は、事業所、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し(中略)という条文です。一言で言うと、労基署職員が行う会社に対する調査になります。
オーソドックスなパターンでは事前に資料準備の依頼文書が示されるので準備しておき当日を迎えます。最近では、事前にアンケートのように調査シートを配布され記入しておく場合も多いです。特に労働時間(過重労働)関係になります。過重労働については、昨年あたりから36協定の範囲内で違反なくとも健康面から残業削減の話がなされます。

【事前の準備資料】例_抜粋

以下の資料等を準備願います(あるものには□内にレ点をいれてください)。

時間外・休日労働時間等集計表(直近1年の残業時間一覧表等)
賃金台帳(直近6箇月分)
タイムカード、出勤簿、残業申請書、タコグラフ等の勤務時間記録書類(直近6箇月分)
就業規則(賃金規程等別規定含む)
一年単位の変形労働時間制に関する協定届(制度実施の場合)
時間外労働・休日労働に関する協定届(残業がある場合)
健康診断結果個人票
医師による面接指導記録(残業月45時間超の場合)
労働者名簿、労働条件通知書等労働条件を示した書類(雇用契約書、労働契約書等)
労働災害・業務上疾病の発生状況(有る場合)
安全管理体制表(安全管理者、衛生管理者、産業医、安全衛生推進者)
安全衛生委員会議事録(派遣含み50名以上の場合)

など

このように、当日のヒヤリングで確認される資料の準備が必要となります。ヒヤリングで多々質問されますので、準備資料の記載部分(証拠、証憑)を示しながら説明を行います。日頃より上記のような管理資料を整備しておくことが肝要です。

【過重労働関係の事前記入資料】 例.労働時間実績表

(労基署によってフォーマットは異なる場合があります)

労働時間実績表

長時間、過重労働の視点で、また36協定違反がないかをチェックできるシートになります。

  • 直近1年間について、上段に時間外労働時間数、下段に総労働時間数の実績を記入。
  • 1日8時間、1週40時間を超える法定労働時間超の時間数を記入。

特に、過重労働についいては全国の労働基準監督署に体制規模の大小や兼務か否かなどの違いがありますがカトク(過重労働撲滅特別対策班)が設置されていることからわかるように力を入れています。法律違反、36協定違反を行っていなくとも残業が45Hを超えている社員がいる企業には指導票が出される場合が多分にあります。昔と違います。時代についていくことも必要です。
過去の調査では3か月分の資料を準備という場合が多かったですが、上段に例示したようなシート準部により限度時間45時間を超えた回数が年に何回あったかもチェックできるようになります。毎月45時間を超えている社員もいるのではないでしょうか。たとえ特別条項の36協定で80時間としていても毎月超えていると回数オーバーとなり違反となります。今後さらに労働時間面、特に過重労働(長時間労働)、45時間超えの労働や回数について言及されていくと考えます。
過重労働では、法定外の残業時間管理をしておかないと調査時では手間が増えますので勤怠データの管理は考えておくべきです。法定内、法定外を混合して残業時間としてカウントしている企業は、別途分けて内部管理はしておくべきです。
今回(第1回)は、労基署から連絡があり事業所に訪問されるまでの部分に焦点をあて述べました。次回からは、具体的に詳細な事前の調査シートや当日の質問項目などについて複数回に分けて述べていきます。

著者プロフィール

社会保険労務士事務所 SRO労働法務コンサルティング

杉本 一裕(すぎもと かずひろ) 氏
社会保険労務士事務所 SRO労働法務コンサルティング 代表

(特定社会保険労務士・行政書士)

1985年メーカー系IT企業に入社。多数の大企業にて勤怠・給与・人事制度の業務コンサルティングを手掛ける。在職中の2007年には総務省年金記録確認/大阪地方第三者委員会の専門調査員を兼務。その後、退職し現在に至る。
製造業や病院、大学、鉄道、販売流通業など幅広い業種のコンサルティング業務に従事。労務リスク回避や労務管理に関する専門家として、講演や執筆活動も行っている。

取得資格

・特定社会保険労務士(社会保険労務士/裁判外紛争手続代理人)
・衛生工学衛生管理者
・第1種衛生管理者
・SAP HRコンサルタント

社労士略歴
1989年 社会保険労務士試験に合格、社会保険労務士会に入会
2006年 日本弁護士会の司法担保能力研修終了、特定社会保険労務士試験合格
2006年 特定社会保険労務士として付記登録(紛争解決手続代理業務を行なえる社会保険労務士)
2007年 総務省 年金記録確認/第三者委員会にて専門調査員として活動

著訳書
「よくわかる人事給与業務とコンピュータ活用」(翔雲社)

杉本 一裕(すぎもと かずひろ) 氏

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