2017年12月22日更新

現場からのレポート、労基署調査はこうだ! 第04回 「ヒヤリング(給与計算・未払い残業手当、他)」

特定社会保険労務士 杉本 一裕 氏

第3回は、休憩、休日、健康診断、他を述べてきました。今回は給与計算、不正確な残業時間集計等から起こる未払い残業手当に焦点をあて述べていきます。

賃金控除に関する協定を見せてください。

賃金控除に関する協定は、会社があらかじめ社員に給与を渡す(振り込む)ときに事前に控除(例、食事代)する場合に必要となります。協定が無くとも法定控除は可能です。法定控除には、所得税や社会保険料などがありますが、法令で定められていない項目を控除する場合には労使協定であらかじめ定めておかなければならないのです。その協定があるかないかをチェックされます。

給与が少ないのでは?

電卓で最低賃金を確認される場合があります。電卓を出された場合は、残業手当の計算のほうが多いです。しかし、最低賃金を守っていない会社も現実にありチェックされる場合があります。時給者は、単価そのものなのでわかりやすいです。日給月給者は所定労働時間で除して確認します。
外国人の労働者の場合も最低賃金を守らなければなりません。本人が了解していてもダメです。

残業手当が正しいかを確認!

実際に残業手当の計算が正しいか確認されます。計算方式は就業規則(賃金規程)が根拠になります。例えば、

  • 残業単価の算出式は正しいか?
    残業単価は基本給などの固定支給÷月間の平均所定労働時間です。労働時間は昔に比べたら減っています。分母が減ると残業単価が上がることになります。分母の時間が多いと、一目瞭然で怪しいです。
  • 分子の固定支給に全て含んでいるか?
    分子の手当に含めなくてよい項目があります。例えば、住宅手当や家族手当、通勤手当などです。
    しかし、一律支給している場合は認められません。簡単に言えば、基本給の一部を住宅手当という名称にすれば分子の手当に含めず残業単価は安くなるからです。知っていて行っていればブラック的な会社になります。

営業マン、ほぼ毎日、会社に戻ってきておられますね!

営業は残業手当がつかない場合があります。これは事業場外みなし労働の制度を利用しているからです。しかし会社に戻ってきている場合は違います。客観的記録がありますので戻ってきているか否かもわかります。例えば、タイムレコーダーやドアの入退室記録です。
事業場外での労働ばかりではないと思います。内勤の日は、通常の社員同様に残業時間の管理、手当の支給が必要となります。

勤務終了時刻とタイムレコーダーの退出時刻に乖離がありますね。

勤務終了とした時刻と実際に帰宅した時刻に差分があります。多いと残業カットではと考えられるわけです。調査の中でも「お金」がからむリスクのある内容となります。
差分については、社員が何をしていたか聞かれたりします。答えられるわけがありません。社員が帰宅前に何をしていたかなど、わかるはずがありません。
対策は2つ。

  • 勤務終了後に、すぐに帰らせること。
  • 勤務終了後に居残った場合は「理由」を書かせること。

理由は同僚との雑談、社内クラブなどの参加、飲み会までの時間調整など多々あろうかと思います。理由を書くことで、あとで何をしていたか本人が申告しているわけですから残業カットにはなりません。(強要してウソを書かせるなどは論外です)
では何分ぐらいの差分がある場合に理由が必要なのでしょうか?私は、会社で決めればよいと指導しています。目安的には30分や45分になるでしょう。

遡及して支払いなさい。

遡及の原因は、下記のようなものがあります。

  • 勤務終了時刻と退社時刻との差分
  • 定時後の休憩時間帯の未払い

例えば、昼休みが45分なら定時後8時間勤務を超えるときに15分の休憩があります。この休憩時間に仕事をさせていた場合です。
この部分を計算して遡及しなければならないことがあります。ニュースでも取り上げられているので、ご存じではないでしょうか?悪意であったり(いわゆるブラック)、指導に従わなかったりした場合は、調査の遡り期間も増え最大で2年分支給しなければならないことになります。賃金請求権として労働基準法に定められている期間は給与で2年になります。 こういった事態にならないように、日頃から未払い残業だと言われないような管理を行うことが肝要です。

次回は、「まとめ」として指導に際して渡される是正勧告書や期日までに対応が間に合わない場合の対応などについて述べていきます。

著者プロフィール

社会保険労務士事務所 SRO労働法務コンサルティング

杉本 一裕(すぎもと かずひろ) 氏
社会保険労務士事務所 SRO労働法務コンサルティング 代表

(特定社会保険労務士・行政書士)

1985年メーカー系IT企業に入社。多数の大企業にて勤怠・給与・人事制度の業務コンサルティングを手掛ける。在職中の2007年には総務省年金記録確認/大阪地方第三者委員会の専門調査員を兼務。その後、退職し現在に至る。
製造業や病院、大学、鉄道、販売流通業など幅広い業種のコンサルティング業務に従事。労務リスク回避や労務管理に関する専門家として、講演や執筆活動も行っている。

取得資格

・特定社会保険労務士(社会保険労務士/裁判外紛争手続代理人)
・衛生工学衛生管理者
・第1種衛生管理者
・SAP HRコンサルタント

社労士略歴
1989年 社会保険労務士試験に合格、社会保険労務士会に入会
2006年 日本弁護士会の司法担保能力研修終了、特定社会保険労務士試験合格
2006年 特定社会保険労務士として付記登録(紛争解決手続代理業務を行なえる社会保険労務士)
2007年 総務省 年金記録確認/第三者委員会にて専門調査員として活動

著訳書
「よくわかる人事給与業務とコンピュータ活用」(翔雲社)

杉本 一裕(すぎもと かずひろ) 氏

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