2017年10月20日更新

現場からのレポート、労基署調査はこうだ! 第02回 「訪問、調査、ヒヤリング開始」

特定社会保険労務士 杉本 一裕 氏

労働基準監督署の方(以下、労基官)が到着されました。
第1回は、事前に準備しておくべき資料や記入シートを中心にお伝えしました。今回は到着されてからの話に移ります。
到着後、ヒヤリング調査が実施されます。ヘルメットを持参してこられたら工場、研究所などの化学薬品や有機溶剤、運送用エレベータなど設備面含め多々調査されます。そしてヒヤリングに際して事前に準備した資料(賃金台帳や出勤簿、就業規則、健康診断結果等)を見せながら回答していくことになります。
悪意なくとも違反や指摘事項は、どの企業にも存在します。車を運転する人が悪意なく速度制限が40kmでも、それ以上で走る、条例を知らず自転車に保険をかけていないのと同様です。しかし、世間的・常識的に見て“おかしい”って考えられる部分は企業内でも労務関係者は気づいているのではないでしょうか。そのような部分は日頃から治しておくことが肝要だと私は指導しています。繰り返しになりますが悪意なく行っていることもありますので指摘事項(是正勧告書や指導票)は、ほとんどの企業にあります。こういった勧告書はその場で書くときと持ち帰り書かれる場合に分かれます。

指摘が多い項目は

法違反で多い項目は何でしょうか?立ち合い経験から思うのは、ヒヤリングされる内容はほぼ同一で労基署によって大きな差がないということです。
私は社労士として多々企業の相談に接してきました。

  • 私自身の顧問先
  • セミナー講演後の労務相談
  • 労務研修の講師を行っている際にうける労務相談

そして就業規則も数百ほどの企業の規程でアドバイスをしてきたと思います。就業規則改定の研修などでは将棋を順次打つように実物をチェックしていくので社数などわからなくなっています。
どの企業でも、同一の勤務制度や労務制度で区分けした場合に、分類毎に共通して危ない部分があります。そこの運用を細かく突っつくと予想通り違反的な運用を行っている場合が多いのです。労働基準監督署も当然、把握していてヒヤリング項目など決めているのではないでしょうか。

では、指摘事項で多いのは?一般ニュースでも話題になりますので既に推測されているでしょう。私は下記が指摘の多い項目だと考えます。(経験測)

  • 労働時間関係
    労働時間がおかしいということは賃金もペアでおかしいということになります。とくに残業手当です。残業手当は実際に就業規則(賃金規程)に基づいて計算されます。
  • 就業規則関係
    就業規則が古いままって企業が意外とあります。古いと実態と合っていません。
  • 労働安全衛生関係
    現場での安全基準や健康診断などです。

特に賃金未払い、残業カットなどは当然、是正勧告書です。しかも後々、遡って差分を計算して支給するといった大きな事務工数と大きな費用が発生します。これも小さな悪意なき違反からブラックに至るまで範囲は広いです。未払いや残業カットは2年の時効が定められていますので請求権上も最大2年間遡って清算しなければなりません。

では具体的に聞かれる内容を見ていきましょう。聞かれる内容は、一般的な質問から事前アンケート記入したものまでに及びます。今回は一般的な質問から重要なものを選択して解説していきます。

ヒヤリング

企業や業務の概要を教えてください。

パンフレットや組織図を見せながら説明する場合が多いです。投影して説明してもいいでしょう。ここで業務内容を把握されます。ある程度、調べてこられているように思いますが、業務や社員の属性(正社員、契約社員、パートなど)、人数の確認などが行われます。派遣労働者のことも聞かれる場合があります。いなければ後々の派遣に関する質問がないことになります。

労働契約について確認させてください。

会社によって労働条件通知書、労働契約書、雇用契約書など言い方が異なります。特に有期労働者とは必ず契約文書を交わしているはずです。有期社員、パート、アルバイト、契約社員、嘱託社員など会社によって多々態様があります。 労働条件を明示しているか、また内容は妥当か確認されます。労働条件は明示しなければなりません。労働契約期間、業務や就業場所など記載事項があります。明示していなければ指導されます。
余談ですが、言った言わないでトラブルにならないためにも契約事項ははっきりと明確に書いておくべきです。例えば

  • 契約期間
    契約満了時に更新があるのか無いのか明確にしておきます。
  • 就業場所
    「本社」と記載。本当に本社のみの勤務ならよいのですが、繁忙期や応援業務や異動等があれば記載しておくべきです。契約書に記載がないことを命令できません。
  • 業務内容
    限定業務なのか複数の業務にわたるのかを含め内容を明確にしておくべきです。言われていた仕事内容と違うとトラブルになるケースもあります。

36協定届について確認します。

特別条項つきの36協定については、長時間労働抑止の面から違反ではないがという前提で45時間を超える法定外残業を行っている社員が実在すると過重労働防止の面から指導されます。これについては、事前のアンケート記入について多々話されるので後述します。
“残業がある=36協定がある“となりますので、残業がある会社には36協定があるはずです。なければ違反です。そして確認される事項は

  • 36協定を超えた残業がないか。
  • 有効期間が切れてないか。
  • 特別条項ありの場合、限度時間(45時間)を超える残業が6回以内か。
  • 代表者の選出が妥当か。

法違反をしてはいけないので36協定は目標残業時間を書くのではなく、少し余裕をみて設定すればいいです。ただ、時代背景、健康面からも長時間残業はよくないので内規では目標残業内に抑えていくべきです。

今回はヒヤリング内容までご紹介しました。企業概要、労働契約、36協定についてです。 次回は休憩、休日、他を述べていきます。

著者プロフィール

社会保険労務士事務所 SRO労働法務コンサルティング

杉本 一裕(すぎもと かずひろ) 氏
社会保険労務士事務所 SRO労働法務コンサルティング 代表

(特定社会保険労務士・行政書士)

1985年メーカー系IT企業に入社。多数の大企業にて勤怠・給与・人事制度の業務コンサルティングを手掛ける。在職中の2007年には総務省年金記録確認/大阪地方第三者委員会の専門調査員を兼務。その後、退職し現在に至る。
製造業や病院、大学、鉄道、販売流通業など幅広い業種のコンサルティング業務に従事。労務リスク回避や労務管理に関する専門家として、講演や執筆活動も行っている。

取得資格

・特定社会保険労務士(社会保険労務士/裁判外紛争手続代理人)
・衛生工学衛生管理者
・第1種衛生管理者
・SAP HRコンサルタント

社労士略歴
1989年 社会保険労務士試験に合格、社会保険労務士会に入会
2006年 日本弁護士会の司法担保能力研修終了、特定社会保険労務士試験合格
2006年 特定社会保険労務士として付記登録(紛争解決手続代理業務を行なえる社会保険労務士)
2007年 総務省 年金記録確認/第三者委員会にて専門調査員として活動

著訳書
「よくわかる人事給与業務とコンピュータ活用」(翔雲社)

杉本 一裕(すぎもと かずひろ) 氏

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