2019年09月13日更新

DX時代にバリバリ活躍するIT技術者になるためのこれだけは知っておきたいスキルセット・ガイド 第01回 バリバリ活躍するIT技術者になるための、これだけは知っておかなければならないコア・スキル

株式会社サイクス 代表取締役 宗 雅彦 氏

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デジタル先進国・欧米+中国 vs. デジタル変革(DX)がいっこうに始まらない日本

日本よりDX(Digital Transformation/デジタル・トランスフォーメーション)がはるか先をいく米国においては、アマゾンによる既存企業への破壊力が一段と激しさを増しています。2011年2月に全米第二位の規模を誇ったボーダーズの倒産をはじめとして、最近では2017年9月の米国玩具販売大手「トイザらス」の経営破綻など、「アマゾン・ショック」、「アマゾン・イフェクト」と呼ばれる、既存事業体への破壊的イノベーションの進行が留まるところを知りません。「アマゾン恐怖銘柄指数」は、アマゾンの収益拡大や新規事業参入などの影響を受け、業績の悪化が見込まれる米国の小売関連企業銘柄54社以上で構成された株価指数のことですが、英語ではデス・バイ・アマゾン(Death by Amazon)と呼ばれるこの銘柄指数が、アマゾンの影響力の大きさを象徴しています。
また近年、圧倒的な進化を遂げる中国のDXは「デジタル先進国」との呼び名も高く、モバイル決済など、中国社会がまさにデジタル・トランスフォーメーションしている姿をまざまざと見せつけています。
一方、DX推進の人材育成やDXプロジェクトの推進支援に取り組む筆者が目の当たりにしている日本のDX事情には、残念ながら誠に覚束ないものがあります。どなたもが異口同音に、「DXをどのように進めればよいのかわからない」とおっしゃるのです。急速にDXが進行する米国や中国。ヨーロッパではドイツが国をあげて「インダストリー4.0」を推進していることもよくご存じのことでしょう。しかし、いっこうにDXがはじまる気配が見えない日本。このギャップは、果たしてどこから生まれるのでしょうか。
そもそも米国においてDXの起爆剤となったのは、1994年に誕生したアマゾンでした。アマゾンは今日ではDXと呼ばれるようになった「IT経営」のあるべき姿を自ら実践してみせたのです。

図1

図1はアマゾンの書籍販売ECの部分だけを取り出して、DXとはなにかを説明するために書いたものです。「従来形書籍販売ビジネスモデル」と「アマゾンの書籍販売ビジネスモデル」の本質的な違いはひとつしかありません。「従来形」は「やりとり・インターフェースがアナログ中心」であることに対して、「アマゾン」の「やりとり・インターフェース」は「デジタルで直結されている」のです。そのことによって、アマゾンのビジネスモデルにおいては、アマゾンが顧客とデジタル直結されていることが第一、第二に出版社・取次・書店が「中抜き」されていることを確認してみてください。
このようにアマゾンが見せた「DX=IT経営」の著しい効果のひとつは、小売業のビジネスモデルにデジタルを結合することで、顧客とのデジタル直結を可能にして、顧客にとっての新しいCX(カスタマーエクスペリエンス・顧客経験価値)を生みだすことだったのです。
いつでもどこでも商品を注文できること、アマゾンの膨大な商品の品揃えが、ロングテールと呼ばれる、リアル店舗であれば手に入らない商品でも手にいれることができるといった新しい経験の数々を魅力的に感じている方も多いことでしょう。
さらに注意を払うべきポイントは、このように顧客に新しいCXを提供することによって、アマゾンは膨大な新しい収益を手にすることができたということです。

図2

一方、例外はもちろんあるものの、多くの日本企業にとってITとは、企業内基幹システムのIT化、業務効率化の道具でした。この企業内基幹システムは、顧客との接点を持たない、顧客とは断絶されたシステムであることに気を留めていただきたいのです。つまり業務効率化の道具としてのITシステムは、新しいCXを生み出すことに、直接的には寄与しないのです。

図3

めざすべきは真のDX企業

以上のおはなしをまとめると、日本企業のIT化の取り組みは、「いまのビジネスモデル・いま提供しているCXを前提に、企業内業務プロセスの効率化に取り組んでいる」ということになります。
一方、欧米や中国の「真のDX企業」は、「新しいCX=新しい収益を創出することが目的で、そのためにデジタル直結したビジネスモデルをデザインする」ということを行っているわけです。
この日本企業の業務効率化を目的とするIT化の進め方と、「真のDX企業」のDX推進の進め方はまったく異なります。

図4

この図(図4)は、この連載で利用するDX推進の概略プロセスです。プロセスの詳細は、この連載でおいおい紹介していきますが、このようなプロセスと、プロセスに紐付いたメソドロジーを実行しなければ、DXを進めることはできません。

DXを進めるための方法も知らない日本企業

それでは最初の問題に戻りましょう。「なぜ、日本ではいっこうにDXが始まる気配が見えないのか」。答えはとてもシンプルです。わたしたちのIT化の取り組みは「業務効率化」のためであって「真のDX推進」のためではなかったということは「わたしたちは真のDX推進を一回もやったことがない」となります。そもそもその前に「DXとは何か?」、「DXを進めるための方法は何か?」を知らないのです。でも、ちょっとだけ考えてみてください。

知らないことは想像できない!

そう思いませんか。だから、この連載の目的は、DXを進めるための方法、コア・スキルを解説することにあります。日本企業に真のDX推進の機運が盛り上がったときに、バリバリ活躍するIT技術者になるための、これだけは知っておかなければならないコア・スキルを、すんなり腹落ちできるように、わかりやすく、やさしく解説していきたいと思います。

この連載は、全10回を予定しています。第2回は、「真のDX企業がDXを推進するためのプロセス」の具体的な内容に踏み込んでいきたいと思います。それでは次回を楽しみにお待ちください。

著者プロフィール

株式会社サイクス

代表取締役 宗 雅彦 氏

IT経営ナビゲータ
『DX経営の冒険』(Facebookページ) http://fb.me/DXkeiei

UNIX OSの開発業務から、シリコンバレーでのITベンチャーの動向リサーチ・発掘、投資、事業開発業務までを経験し独立。DX(デジタルトランスフォーメーション)をIT経営の変革と定義し、企業の経営変革と顧客創造の推進支援に取り組む。
国際NPO団体IIBA(カナダ・トロント)にてBABOK(ビジネスアナリシスの知識体系ガイド)バージョン3(英語版)開発リーダーなど社会貢献活動にも参加。

宗 雅彦氏

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