2019年11月20日更新

病院とICT活用 第03回 受付の自動化

MICTコンサルティング株式会社 代表取締役 大西 大輔 氏

政府が「働き方改革」を進めており、現場ではその対応に追われている。その背景で、生産性向上の観点から、タスクシフティングとICTを活用する動きが活発化している。いま医療機関において注目を集めているのが、受付の自動化(オートメーション化)だ。

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働き方改革と生産性向上

少子高齢化が進む我が国において、労働人口の減少が顕著になってきている。医療機関でも、なかなか人が集まらないとの声をよく聞くようになった。このような中、政府主導で「働き方改革」が急ピッチで進められている。

働き方改革では、ワーカホリックと揶揄される日本の労働環境を改善するため、「残業時間の削減」や「有給取得」など長時間労働の是正に関する環境整備が先行して推進されている。これらを進めることで労働時間は短縮されるが、同時に成果を減らしては業績を落とすことになる。医療機関でいうと患者の診療数を減らすということだ。

一方では、生産性の向上が求められている。そこで、従来よりも少ない人数で生産力を高める手段として、ICTの活用「自動化(オートメーション化)」が今注目されている。

医療機関で自動化が遅れている理由

他の業界に比べ、病院では「自動化」は進んでいるのか?
病院には毎日多くの患者が押し寄せており、その対応にスタッフはてんてこ舞いだ。ほとんどの業務を人が対応しており、自動化が進んでいるようには感じない。ホテルや駅、空港、レストランなど、多くの業種で自動化が進み、無人化が進んでいるにもかかわらず、病院はいまだ人間が業務を行っているのが現状だ。

病院で自動化が遅れている原因の一つは、患者の多くが高齢者であり、ITリテラシーが低くとても自動化に対応できないのではないかと考えられてきた。
また、受付業務一つとっても、業務が複雑で自動化など難しいと考えられてきた。潤沢にスタッフを採用できた時代は、あまり気にする必要がなかったのかもしれない。しかしながら、今後到来する深刻な人手不足を考えると、背に腹は代えられないと、病院も自動化にチャレンジする機運が高まりつつある。

進む身の回りのICT化 ― 「受付」自動化

日常生活では、この10年で「受付」に人を見かけなくなった。サービス業において、自動化がもっとも進んだセクションが「受付・会計」ではないだろうか。たとえば、駅の自動券売機や銀行のATM、そして飲食店の食券機が普及してきており、受付業務は「ヒト」から「コンピュータ」に変わってきている。また、レジスターの進化も著しく、「レジ打ち」という仕事はほぼなくなりつつある。商品の代金をお預かりすれば、それをレジに投入するだけで自動で釣銭が出てくるようになった。

医療機関のICT化 ―「受付」自動化の導入

病院でも受付業務の効率化や人員削減を目的に、再来受付機や自動精算機が導入されるようになった。当初は、機器の価格が高額であったことから大学病院など大規模病院を中心に設置されていたが、現在では、普及に伴い導入コストが下がってきたことで中層規模病院や診療所にも設置が検討されるようになってきた。

再来受付機

「再来受付機」は、診察券を機械にかざすだけでチェックインができるシステムだ。診察券を持っている2回目以降の患者は、受付を自動で行うことが可能になる。また、月1回の保険証の確認も「保険証確認機」を導入すれば自動化が可能になる。「保険証リーダー」という読み取り機を導入すれば、保険証をスキャンするだけで、自動で電子カルテに保険情報を取り込めるようにもなる。受付業務は、初めての患者受付と、誘導業務、確認業務のみとなり、大幅な人員削減が可能だ。

自動精算機

「自動精算機」は、患者みずからが自己負担金を、受付スタッフを介せずに簡単に支払う(精算する)ことができるシステム。その流れは、電子カルテから本日の自己負担金のデータを自動精算機に送り、診察券あるいは受付票に印字されたQRコードよって患者を識別、自己負担金額を表示し、患者はタッチパネルモニターに表示された金額を指示された手順に沿って支払う、という仕組みだ。

自動精算機を導入することで、従来のレジスターへの金額の入力間違いがなくなるほか、釣銭も自動計算し支払われるため、釣銭の渡し間違いもなくなる。人為的ミスによってレジの金額が合わないことがなくなり、受付も経営者もレジ間違いという問題で残業する必要がなくなるのだ。

また、キャッシュレス化の波にのり、自動精算機にはクレジットカードや交通系ICカードで支払う機能も付いている。キャッシュレス対応が進むことで、未収金の発生も減少していく。

「再来受付機」、「自動精算機」の導入により、生産性の向上が見込めるであろう。

ICT化で進む医療機関の「生産性向上」と「働き方改革」

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著者プロフィール

MICTコンサルティング株式会社 代表取締役

大西 大輔 氏

過去3,000件を超える医療機関へのシステム導入の実績に基づき、診療所・病院・医療IT企業のコンサルティングおよび講演活動、執筆活動を行う。

経歴
2001年 一橋大学大学院MBAコース修了
2001年 医療系コンサルティングファーム「日本経営グループ」入社
2002年 医療IT総合展示場「メディプラザ」設立 (~2016閉館)
2016年 コンサルタントとして独立し、「MICTコンサルティング」を設立

大西 大輔 氏

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