2019年09月26日更新

病院とICT活用 第02回 遠隔診療、モニタリング、カンファレンス等の活用

MICTコンサルティング株式会社 代表取締役 大西 大輔 氏

2018年4月の診療報酬改定では、ICTなど最新の技術革新を医療に取り込むことで、医療の質向上、業務効率化が図れるとして、「遠隔診療(オンライン診療)の適切な活用」や「医療連携を含めたICTを活用した情報共有」が新たに評価された。

オンライン診療料・オンライン医学管理料の新設

遠隔診療については、情報通信機器(厚労省のガイドラインに準拠した者)を活用したオンライン診療について、対面診療の原則の上で、有効性や安全性等への配慮を含む一定の要件を満たすことを前提に、診療報酬上の評価として「オンライン診療料(70点)」と「オンライン医学管理料(100点)」「在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料(100点)」「精神科在宅患者支援管理料 精神科オンライン在宅管理料(100点)」が新設された。
今回は初めてのオンライン診療に関する評価ということもあり、「初診から6か月を経過した医学管理(特定疾患療養管理料など)を実施している再診患者」と、かなり利用シーンが限定されたものとなった。また、施設基準についても、(1) 厚生労働省の定める情報通信機器を用いた診療に係る指針等に沿って診療を行う体制を有する保険医療機関であること。(2) 緊急時に概ね30 分以内に当該保険医療機関において診察可能な体制を有していること。(3) 当該保険医療機関において、一月あたりの再診料等(電話等による再診は除く)及びオンライン診療料の算定回数に占めるオンライン診療料の割合が1割以下であること、とされている。
2020年に予定される次期改定では、さらにオンライン診療の利用範囲の拡大が検討されており、さらなるオンライン診療の普及のために制限の緩和が進むことが期待されている。

電話再診の再定義

一方、オンライン診療料の新設前に利用されてきた「電話等再診(72点)」については、「定期的な医学管理を前提として行われる場合は算定できない」と付則が追加され、オンライン診療料と電話再診の棲み分けが明確化されている。

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在宅患者持続陽圧呼吸療法、在宅酸素療法指導管理料の遠隔モニタリング加算の新設

情報通信機器を用いた遠隔モニタリングの評価として「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」について、治療機器の装着状況等を遠隔でモニタリングする等により指導管理を行った場合の評価として、「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料 遠隔モニタリング加算(150点)」が新設された。
同じく遠隔モニタリングの評価として、「在宅酸素療法指導管理料」についても、頻回の外来受診が困難な患者に対する情報通信機器等を併用した指導管理について「在宅酸素療法指導管理料 遠隔モニタリング加算(150点)」が新設された。

ICTを活用した関係機関連携の推進

地域での医療連携や医療と介護の連携を推進するために、医療従事者間の効率的な情報共有・連携を促進する観点から、「感染防止対策加算」や「退院時共同指導料」等について、連携会議や情報共有等にICTを活用することができるよう要件が緩和された。
従来、対面で直接集まってカンファレンスを行うことが条件だったが、各項目で求めている内容や地理的条件等を考慮し、一定の条件の下でICTを用いたカンファレンス等を組み合わせて開催できるように要件が見直されたのである。
この要件緩和により、忙しい医師が患者宅やクリニックから病院などを出向いてカンファレンスに参加しなくても、TV(Web)会議システムでの参加が可能となるため、移動時間の削減になり業務効率が向上されることだろう。

医療のICT化の活用は始まったばかり、今後の変化への準備が必要

ICTの活用は、物理的な移動にかかる「距離」並びに「時間」の短縮に効果があることは明確である。医療機関がICTの活用を進めることで、効率的な医療サービスの提供が行え、医療費の適正配分につながると政府は考え、ICT化の評価が行われているのだ。
しかしながら、今回のオンライン診療をはじめとするICT化に関する評価は、始まったばかりということもあり、大変慎重な限定的なものとなった。そのため、多くの医療機関が導入を見送っているが、実際に使用している医療機関では、様々な事例を積み上げていっている。電子カルテとオンライン診療を組み合わせた仕組みの開発や、IoTやWeb問診との組み合わせによるモニタリングなど、新たな付加価値が生み出さそうとしている。
2020年の次期改定では、オンライン服薬指導の議論が行われており、またオンライン診療についても該当範囲の拡大が議論されている。このように、2年に1回の改定のたびに、ICTを活用した診療スタイルは、徐々に広がっていくと考えられるため、今回の点数や算定の仕組みについて一喜一憂するのではなく、今後の医療ICT分野の拡大が新たな診療スタイルを生み出すという事実に目を向けた準備が必要と認識が大切である。

オンライン診療、オンラインカンファレンス、オンライン服薬指導

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著者プロフィール

MICTコンサルティング株式会社 代表取締役

大西 大輔 氏

過去3,000件を超える医療機関へのシステム導入の実績に基づき、診療所・病院・医療IT企業のコンサルティングおよび講演活動、執筆活動を行う。

経歴
2001年 一橋大学大学院MBAコース修了
2001年 医療系コンサルティングファーム「日本経営グループ」入社
2002年 医療IT総合展示場「メディプラザ」設立 (~2016閉館)
2016年 コンサルタントとして独立し、「MICTコンサルティング」を設立

大西 大輔 氏

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