2020年10月19日更新
医療機関のための"三位一体改革"最新動向第04回 新型コロナと三位一体改革
社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
よこすか地域包括ケア推進センター長
武藤 正樹 氏
新型コロナ感染拡大とその長期化は、三位一体改革の先行きにも影響を及ぼし始めている。三位一体改革とは「働き方改革」「地域医療構想」「医師偏在対策」の医療構造改革の3つの政策セットのことだ。連載最後の今回は、新型コロナ感染拡大と三位一体改革の行方について見ていこう。
1. 新型コロナによる医師の働き方への影響
一般企業では新型コロナにより働き方が大きく変わった。在宅勤務やリモートワーク、オンライン会議や週休3日を採用した企業も現れた。また、派遣切りや倒産拡大により働く場そのものを失う人も増えている。
新型コロナによる働き方への影響は、医療業界ではどうだろうか?まず新型コロナが医療機関に与えた最大の影響は、感染を恐れて患者の受診が減ったこと、さらには感染者を受け入れた病院では医療従事者の負担が急増したことが挙げられる。まず新型コロナの医療機関への患者の受診控えの現状から見ていこう。
新型コロナによる患者の受診控えの傾向は、5月末に緊急事態宣言が解除されたのち、6月からは少しずつ回復しているが、まだ元の水準には戻っていない。とくに診療所の外来の落ち込みが激しい。小児科、耳鼻科などは外来患者が激減したところもある。病院外来も同じで、不急の患者の外来受診が落ち込み、人間ドッグ・健診センターはキャンセルが相次いだ。また入院の場合、新型コロナ患者を受け入れる病院では、新型コロナ患者のための空床確保や院内感染防止のために予定手術の延期や入院を抑制したため、入院患者が減った。
日本病院会などが全国約1,200の病院を調査したデータからみると、4月の平均患者数は外来で前年同月に比べて2割減、入院も1割減だった。問題は緊急事態宣言が解除された6月以後も患者数の回復が鈍いことで、医療情報サービスのメディカル・データ・ビジョンの調査によると、全国124の病院のうち77病院で患者数が元に戻っていない。
一方、新型コロナを受け入れた感染症病棟では患者増とともに医療従事者の日夜を問わない長時間労働によりその疲弊が目立っている。
次に医師の業務実態をアンケート調査から見てみよう。医師転職研究所(株式会社メディウェル)が行った2020年5月17日~5月28日にかけて実施した医師2,408名へのアンケート調査では、大学病院や病院、クリニックに勤務する医師に業務実態を聞いている。
それによると、コロナ禍でも「通常通り営業」が51%と最も多く、次に「一部の診療や業務に制限がかかっている」が43%となった。「勤務時間を短縮している」(4%)、「全面的に休業中」(2%)はむしろ少ない結果だ。これを医師の勤務先別で比較すると図表1となる。
(図表1)
大学病院では「一部の診療や業務に制限」(67.3%)が最も多い状況となっている。これは、大学病院ではコロナ患者の受け入れ先になっていることが多く、通常の外来診療や予定手術などへの影響も大きいことが要因として考えられる。また病院と比較すると、クリニックでは勤務時間の短縮や全面的に休業をしている割合が高くなっている。次に患者数について聞くと、患者が少なくなったという回答が81%と最も多かった。
ここから先の内容については資料をダウンロードしていただき、お読みください。
- 続きの解説の項目 -
- 2. 減る外来患者数と「働き方改革」
- 3. 新型コロナと地域医療構想
- 4. 新型コロナと医師偏在対策
医療機関のための"三位一体改革"最新動向
第04回 新型コロナと三位一体改革
- 医療機関のための"三位一体改革"最新動向【連載記事】
著者プロフィール
社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
よこすか地域包括ケア推進センター長
武藤 正樹(むとう・まさき) 氏
<略歴>
1974年 新潟大学医学部卒業
1978年 新潟大学大学院医科研究科修了後、国立横浜病院にて外科医師として勤務
1986年~1988年 厚生省からニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学
1990年 国立療養所村松病院副院長
1994年 国立医療・病院管理研究所 医療政策研究部長
1995年 国立長野病院副院長
2006年 国際医療福祉大学三田病院副院長・同大学大学院 医療経営福祉専攻教授
2018年 同大学院医学研究科 公衆衛生学分野教授
2020年7月より社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役・よこすか地域包括ケア推進センター長
<政府委員>
・医療計画見直し等検討会座長(厚労省2010年~2011年)
・中医協入院医療等の調査評価分科会会長(厚労省2012年~2018年)
・規制改革推進会議医療・介護ワーキンググループ専門委員(内閣府2019年~2020年)
<著作>
・「2025年へのカウントダウン~地域医療構想と地域包括ケアはこうなる~」(医学通信社 2015年)
・「2040年医療介護のデッドライン」(医学通信社 2019年)
など多数
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