2020年9月14日更新

医療機関のための"三位一体改革"最新動向第03回 三位一体改革と地域医療連携推進法人

社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
よこすか地域包括ケア推進センター長
武藤 正樹 氏

三位一体改革とは「地域医療構想」「働き方改革」「医師偏在対策」の3つの政策セットのことだ。この政策セットの解決策として「地域医療連携推進法人」が今注目されている。これまでに全国で18の地域医療連携推進法人が徐々に立ち上がっている。特に高齢化や人口減に悩む地方を中心としてその設立が進んでいる。
もはや人口減の地方では病院が単独で成り立つのは困難だ。地域を一つの病院とみなして経営主体の異なる複数の病院や診療所、介護福祉施設を統合的に運営する地域医療連携推進法人が、三位一体改革のソリューションの一つとして注目されている。

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1. 地域の現状とホールディングカンパニー

さて、わが国では地域の中に同じような機能をもつ経営主体の異なる大小さまざまの病院が乱立している。このため貴重な医療専門人材の分散や、医療機器等の重複投資が起きていて、結果として病院間の連携どころか患者の奪い合いとなり、非効率が極まっている。特に昨今のように地方で人口減少が著しくなると、このまま放っておけばお互い共倒れになりかねない状況だ。

こうしたことから、先の連載第2回の(2)でみたように、まず自治体病院を中心とした公立病院において地域医療構想に基づく地域再編の試みが始まっている。たとえば救急医療では、地域に散在した救急医を1病院に集約することで、救急医の人数が増えて、救急医療の質も上がる。また救急医のシフト制を組むことができるようになり、救急医の過重労働を防ぐ医師の働き方改革にもなる。また医師不足に悩む地方の中小の公立・公的病院が再編され大規模化することで規模のメリットを生かし、医師過剰地域から医師過少地域に医師を呼び寄せることも可能となる。これは医師の地域偏在対策にも役立つことになるだろう。

しかし我が国では公立・公的病院よりも圧倒的に民間の医療法人が多いことが課題である。民間の医療法人を地域の中で再編するのは極めて困難だ。たとえば地域の中で、医療法人が他の医療法人を買収し合併による経営統合し大規模化をすることはできるが、それには莫大な資金力と時間が必要だ。

その点、株式会社の場合、「持ち株会社」のような形で法人をグループ化することができる。いわゆるホールディングカンパニーの仕組みだ。ホールディングカンパニーは、複数の企業群を企業グループとして統制していくために設立されたグループの核となる親会社のことをいう。しかし医療法人は、株式会社の持株会社のような形で法人をグループ化する手段がない。このため医療法人のような非営利組織にもホールディングカンパニーのような仕組みを導入できないかという議論がなされてきた。

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- 続きの解説の項目 -

  • 2. 地域医療連携推進法人
  • 3. 地域医療連携推進法人のポイント
  • 4. 急増する地域医療連携推進法人
  • 5. 地域医療連携推進法人の事例

医療機関のための"三位一体改革"最新動向
第03回 三位一体改革と地域医療連携推進法人

著者プロフィール

社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
よこすか地域包括ケア推進センター長

武藤 正樹(むとう・まさき) 氏

<略歴>
1974年 新潟大学医学部卒業
1978年 新潟大学大学院医科研究科修了後、国立横浜病院にて外科医師として勤務
1986年~1988年 厚生省からニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学
1990年 国立療養所村松病院副院長
1994年 国立医療・病院管理研究所 医療政策研究部長
1995年 国立長野病院副院長
2006年 国際医療福祉大学三田病院副院長・同大学大学院 医療経営福祉専攻教授
2018年 同大学院医学研究科 公衆衛生学分野教授
2020年7月より社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役・よこすか地域包括ケア推進センター長

<政府委員>
・医療計画見直し等検討会座長(厚労省2010年~2011年)
・中医協入院医療等の調査評価分科会会長(厚労省2012年~2018年)
・規制改革推進会議医療・介護ワーキンググループ専門委員(内閣府2019年~2020年)

<著作>
・「2025年へのカウントダウン~地域医療構想と地域包括ケアはこうなる~」(医学通信社 2015年)
・「2040年医療介護のデッドライン」(医学通信社 2019年)
など多数

武藤 正樹(むとう・まさき) 氏

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