2020年7月14日更新

医療機関のための"三位一体改革"最新動向第01回 三位一体改革とは何か?

社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
よこすか地域包括ケア推進センター長
武藤 正樹 氏

三位一体(トリニティ)はもともと宗教用語だ。キリスト教では父、子、精霊の三位一体を指し、仏教では仏、法、僧の三位一体を指している。医学でも病気の3つの症状のセットを3兆候(トリアス)と呼んでよく用いている。ここで言う三位一体改革とは「地域医療構想」、「働き方改革」、「医師偏在対策」の3つの政策セットのことだ。

医療における三位一体改革は、高齢化人口がピークを迎え、そして少子化による人口減が進む2040年へ向けての医療の構造改革のセットプランを指す。この三位一体改革の最近の動向について3回の連載でお伝えしていこう。

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1. 三位一体改革が必要なワケ

2019年5月の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(座長:尾形裕也 九州大学名誉教授)において、厚生労働省は「地域医療構想」、「医師の働き方改革」と「医師偏在対策」は相互に関連があるため3施策を「総合的に進めていく必要がある」ことを提案した。

というのも2014年の医療介護総合確保法以来、地域医療構想が、最近、公立・公的病院の地域再編を軸として進捗しつつある。こうした医療機関の地域再編等の方針を、2019年に登場してきた医師の働き方改革や医師の偏在対策との間で整合性をとる必要が出てきたからだ。

たとえば地域に救急病院が複数あり、それぞれの病院で救急応需体制をとると、1病院あたりの救急医の数が分散して手薄になる。このため病院では救急医の長時間労働が起きて、医師の働き方改革における時間外労働の上限規定を守ることが難しくなる。このため地域医療構想で、地域の1病院に救急医と救急機能を集約化しなければ、医師の「働き方改革」は実現できない。また地域や診療科における医師偏在も同時に地域医療構想や働き方改革と密接に関連がある。こうしたことから三位一体改革を同時並行で行うことの必要性を厚生労働省が指摘したものだ。

今回は「地域医療構想」「医師の働き方改革」「医師偏在対策」のそれぞれの最新の動向について振り返ると同時に、その相互の関係、そして三位一体改革の課題や解決策について振り返ってみよう。

ここから先の内容については資料をダウンロードしていただき、お読みください。

- 続きの解説の項目 -

  • 2. 地域医療構想とは何か?
  • 3. 医師の働き方改革とは何か?
  • 4. 医師偏在対策

医療機関のための"三位一体改革"最新動向
第01回 三位一体改革とは何か?

著者プロフィール

社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役
よこすか地域包括ケア推進センター長

武藤 正樹(むとう・まさき) 氏

<略歴>
1974年 新潟大学医学部卒業
1978年 新潟大学大学院医科研究科修了後、国立横浜病院にて外科医師として勤務
1986年~1988年 厚生省からニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学
1990年 国立療養所村松病院副院長
1994年 国立医療・病院管理研究所 医療政策研究部長
1995年 国立長野病院副院長
2006年 国際医療福祉大学三田病院副院長・同大学大学院 医療経営福祉専攻教授
2018年 同大学院医学研究科 公衆衛生学分野教授
2020年7月より社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役・よこすか地域包括ケア推進センター長

<政府委員>
・医療計画見直し等検討会座長(厚労省2010年~2011年)
・中医協入院医療等の調査評価分科会会長(厚労省2012年~2018年)
・規制改革推進会議医療・介護ワーキンググループ専門委員(内閣府2019年~2020年)

<著作>
・「2025年へのカウントダウン~地域医療構想と地域包括ケアはこうなる~」(医学通信社 2015年)
・「2040年医療介護のデッドライン」(医学通信社 2019年)
など多数

武藤 正樹(むとう・まさき) 氏

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